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第一章 転生

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「んー、これどうしよ。ちょっと恥ずかしいから捨てちゃいたいんだけど勿体ない?」

 気が済むまで涙を流し、気持ちの整理がついたのか落ち着きを取り戻したナギサは少し目元を赤らめてそう言った。

 これは『精霊王の涙』。その名の通り精霊王の涙なんだけど、精霊王が泣くとその涙が宝石となるんだよねー。そしてこれは最高級といえるほどに高価で希少価値が高いもの。両手の平に山盛りになるほどできてしまった。床に落ちた分を拾ったんだけどこれどうしよう?こんな高いもの売ったら出所を疑われるよねー?

 誰彼構わず精霊王だって言うつもりはないしね。取りあえず置き場所に困ったのでこの宮の宝物庫に持っていくことにした。文字通り宝と言えるけどそれが自分の涙ってなんか恥ずかしいんだよねぇ……

 ◇

「さてと。久しぶりに地上に出てみようかなー?」

 一応お金はある。人間に混ざって遊ぶこともあるからね、精霊は。案外精霊だってバレないものだよ?人間には違いが分からないと思うしね。

 宮はもう開放して精霊たちが入れるようにし、結界も元のものに戻してる。『一緒に街に遊びに行く人ー』と声をかけて何人かは一緒に行くことになった。

 みんな下位精霊なので妖精のような見た目。精霊と一緒にいてもたぶん祝福を受けているのか、精霊に好かれやすいのかと思われるだけだよね? まあ精霊王たる俺を嫌う精霊は中々いないから好かれやすいのは当然なんだけど。

「んー? あれが食べてみたいの? いいよ、買いに行こ」

 街に出ると様々な出店や店があった。たくさんの人がいて、この世界にきてからこんなにたくさんの人を見たのは初めてだと言うことに気付いた。

 よく思い出してみれば人間はまだ助けた三人以外会ってないんだよねー。エルフとか魔族とかは一人も会ってない。まあ半年間も宮で眠り続けていればそうなるよね。

 いま一緒にいる精霊はみんな話すことができないので身振り手振りで読み取るしか出来ないんだけど、同じ精霊だからか意外と伝えたいことは分かる。話せなくても俺が言ってることは理解してくれるし。小さい体で必死に伝えようとする姿はそれはもう可愛い。可愛くて仕方ないんだよ。

「おいしい?」

 アイスのようなものを欲しがったので、買って食べさせてあげると喜んでクルっと一周回った。にっこり微笑んでくれてかわいい。

 こんなに可愛い精霊たちの親のような存在というのは得だったなーって思う。お礼と言わんばかりにキラキラと祝福をしてくれたので頭を撫でてあげるとさらに嬉しそうにしてくれる。祝福をしてくれても俺相手では何も起こらないのはお互いに承知してるんだけど、それでも嬉しいよね。
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