上 下
3 / 234
第一章 転生

3

しおりを挟む
「はい、これでもう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます! 本当にありがとうございます。この御恩は決して忘れません」
「気にしなくていいよー。君たちの名前は?」

 多分ファーストネームしか名乗ってくれないと思うけど一応聞いておくことにする。

「申し遅れました。私はジェソン、妻はアンネ、息子はアルフォンスと申します。あなた様のお名前もお聞かせ願えますか?」
「俺はナギサ。さっきも言ったけど精霊王だよー。俺は堅苦しいのは嫌いだし、そんなに畏まらなくていいよ。それよりジェソンさん、少し耳を貸してくれる?」
「はい」

 律儀に返事をしてこちらに近寄ってきてくれた。『まだ絶対とは言えないし気のせいだったら良いんだけどねー? この子……アルフォンスくんは多分呪われてたよ。俺は治癒魔法じゃなくて浄化魔法を使った。黒い靄みたいなのが首に巻き付いてたんだよ』と言うと、驚愕に目を見開いて俺の方を凝視してきた。

 信じ難いよね、呪いだなんて。まだ絶対とは言えないんだけどねー。呪いは精霊を殺すことでその属性の力が対象に巻き付く。精霊殺しなんて常人にはできない。精霊はどの種族よりも強い力を持つからね。余程弱っていたなら話は別だけど。

 信じられないけど、もし精霊殺しによる呪いだったなら……俺は絶対にそいつを許さない。精霊王というのは全ての精霊の親でもある。同じ精霊である俺だからこそ呪いだと気付けたのかもしれないけど……それなら水の精霊たちが出て行かなかったのも分かる。精霊殺しは容易にできるものではないけど代わりにそれを可能とし、呪いへと変化させたなら少なくとも中位精霊以上でないと対応できない。

 もちろん殺されたすべての精霊が呪いとなるわけではないんだよー? それを望まない限り世界の一部へと戻るだけ。だけど大体は呪いになるかな。

「それは……本当ですか?」
「うん。絶対そうとは断言できないけどほぼ間違いないと思ってる。君たち高貴そうだから今後も気を付けた方が良い。精霊が関わっている可能性が高い以上、俺も出来るだけのことはするから。それと、まだ完治はしてないからね。とりあえず悪化することはないと思うけど、完治させるのは結構大変だから詳しいことが分かったらまた対応するよ」

 と言っても、また同じようなことがない限り今のところは行動に移すつもりはないけどね。でもちょっと彼らが心配。一時的な呪いの浄化は本当は良くない。可能なら一気に浄化しきるのが理想的なんだよ。だけど今の状況じゃこれくらいしかできないんだよねぇ……完璧に呪いを浄化させるには調べないといけないこともあるし、俺も相当力を使わなきゃいけない。転生したばかりの俺ではそれはちょっと厳しいかな。体は魔法を使うことに慣れてるんだけど脳の処理が追い付かないから。

「ありがとう、ございます……なにかあれば直ぐにご報告しますので、その時はよろしくお願い致します」
「うん。普通に病気の可能性もあるから体に気を付けてねー」
「はい」

 笑顔で手を振ってそのまま海に戻っていった俺だけど、転生初日から大変なことに巻き込まれたねー? 俺は人間の世に詳しくないからちょっと調べてみても良いかもしれないね。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

異世界転生~目指せ!内乱を防いで、みんな幸せ♪

紅子
ファンタジー
いつの間にかこの国の王子に転生していた俺。物語の世界にいるなんて、想定外だ。このままでは、この国は近い未来に内乱の末、乗っ取られてしまう。俺、まだ4歳。誰がこんな途方もない話を信じてくれるだろうか?既に物語と差異が発生しちゃってるし。俺自身もバグり始めてる。 4歳から始まる俺の奮闘記?物語に逆らって、みんな幸せを目指してみよう♪ 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
 大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。  うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。  まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。  真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる! 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう ※2022/05/13  第10回ネット小説大賞、一次選考通過 ※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...