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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく
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「───うん。優先順位は家の仕事が一番高いから。そっちは断っておいて」
兄さん、食事中くらい仕事の話をやめたら良いのに、そうすることも出来ないくらい忙しいんだよね……兄さんはマネージャーを付けてないから芸能の仕事まで旭がスケジュール管理してる。そのため、兄さんへの仕事のオファーで旭のスマホには常に通知がついているらしい。兄さんって丈夫なようで意外に体を壊しやすいから普通に心配。
父さんですら食事中は仕事の話なんてしないのに。でもおれに兄さんを止める権利はないんだよね。兄さんが自分の人生を歩めるのは実質成人までの十八年間だけだからいつでも全力なのは分かる。
自由が少ないからこそ、兄さんを本気にさせるものがたくさんあったと言う点では良かったのかもしれない。本気になれるものがなければ兄さんは壊れていた気がするから。
「兄さん、おれは食べ終わったから時間まで今日分の仕事してくる」
「頑張って」
おれも兄さんに追いつきたい。これだけは誰にも負けたくないと思えるものが出来たから頑張らないとね。家の仕事、勉強、習い事、ダンスレッスン、歌のレッスン、ボイトレ、演技の練習。おれもやらないといけないことはたくさんある。
一般的には十分忙しいと言えるのだろうけど、身内に忙しい人しかいないからな……
「おれは兄さんのスペアだから兄さんと同じだけのことを出来るようにならないとなんだよね………」
「兄さーん。そろそろ時間じゃない?」
仕事が終わってリビング(?)に戻ると、面倒そうな顔でパソコンを操作する兄さんの姿があった。後ろから覗き込んで何かあったのかと問うと大きすぎる溜め息が返された。
「見て、これ」
「……これって」
「炎上してる。佐倉凪の顔に傷を付けた人間がいる、と」
この前の打ち合わせの日にあった事件だね。あの場で兄さんは胸に秘めておいてほしい、つまり遠回しに「無駄に騒ぎ立てるな。広めるな」と言った。納得されたようだったけど、どうやらそのことをネットに晒した人間がいるらしい。誰がやったことかまでは晒されていないけど知られるのは時間の問題かもしれない。当然のことながら兄さんの顔に傷を付けた人間を批判する言葉ばかりだけど、一部ではモデルとしての自覚が足りないのではないかなどと兄さんを批判する声も挙がっている様子。
兄さんの話を聞き、おれが自分の携帯で確認した数秒後にはそれだけのことが把握できた。あり得ない程の大炎上になってるみたい。
兄さん、食事中くらい仕事の話をやめたら良いのに、そうすることも出来ないくらい忙しいんだよね……兄さんはマネージャーを付けてないから芸能の仕事まで旭がスケジュール管理してる。そのため、兄さんへの仕事のオファーで旭のスマホには常に通知がついているらしい。兄さんって丈夫なようで意外に体を壊しやすいから普通に心配。
父さんですら食事中は仕事の話なんてしないのに。でもおれに兄さんを止める権利はないんだよね。兄さんが自分の人生を歩めるのは実質成人までの十八年間だけだからいつでも全力なのは分かる。
自由が少ないからこそ、兄さんを本気にさせるものがたくさんあったと言う点では良かったのかもしれない。本気になれるものがなければ兄さんは壊れていた気がするから。
「兄さん、おれは食べ終わったから時間まで今日分の仕事してくる」
「頑張って」
おれも兄さんに追いつきたい。これだけは誰にも負けたくないと思えるものが出来たから頑張らないとね。家の仕事、勉強、習い事、ダンスレッスン、歌のレッスン、ボイトレ、演技の練習。おれもやらないといけないことはたくさんある。
一般的には十分忙しいと言えるのだろうけど、身内に忙しい人しかいないからな……
「おれは兄さんのスペアだから兄さんと同じだけのことを出来るようにならないとなんだよね………」
「兄さーん。そろそろ時間じゃない?」
仕事が終わってリビング(?)に戻ると、面倒そうな顔でパソコンを操作する兄さんの姿があった。後ろから覗き込んで何かあったのかと問うと大きすぎる溜め息が返された。
「見て、これ」
「……これって」
「炎上してる。佐倉凪の顔に傷を付けた人間がいる、と」
この前の打ち合わせの日にあった事件だね。あの場で兄さんは胸に秘めておいてほしい、つまり遠回しに「無駄に騒ぎ立てるな。広めるな」と言った。納得されたようだったけど、どうやらそのことをネットに晒した人間がいるらしい。誰がやったことかまでは晒されていないけど知られるのは時間の問題かもしれない。当然のことながら兄さんの顔に傷を付けた人間を批判する言葉ばかりだけど、一部ではモデルとしての自覚が足りないのではないかなどと兄さんを批判する声も挙がっている様子。
兄さんの話を聞き、おれが自分の携帯で確認した数秒後にはそれだけのことが把握できた。あり得ない程の大炎上になってるみたい。
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