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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく

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 ◇

「───はい、大丈夫です。皆さんお疲れさまでした。明日からもありますのでしっかり休んでくださいね」

 約七時間の撮影を終え、今日は各自解散となった。

 初めての兄さんとの仕事。緊張したし失敗しそうで怖かったけどまさかの一発合格で、兄さんにも褒めてもらえた。演技は初めてだと言っていたレオンも緊張は感じられたものの、初めてには見えないくらい上手な演技だったね。兄さんはこのまま次の仕事に行くと連絡が来たのでおれだけ先にホテルに戻ることにし、迎えが来るまでレオンと話しながら待つことになった。

「レオンは演技初めてだったんだよね。どうだった?」
「うーん……やっぱり緊張したかな。思っていたより上手く演じられたし楽しかったけどね」
「そっか。おれも皆すごかったから少し気圧されたよ。重要な役だから霞んでないと良いんだけど……」
「それは大丈夫じゃない?正直悔しいくらいに完璧だったから」

 それなら良いんだけど……おれの完璧と兄さんの完璧では次元が違うからなあ。まだプロと言えるほどじゃないおれが兄さんと比べるのもどうかと思うけど、今回は準主役だからどうしても比べてしまう。

「ナオくんはどこのホテルに泊まるの?僕はこの近くのビジネスホテルなんだけど、ほとんどの人がそこに泊まるって聞いたよ。君のことは見かけなかったんだけど別の所?」
「おれは……内緒」

 ホテルの名前知らないし調べても良いけど兄さんと一緒だとバレたら大変だからね。

「えぇー……まあ良いけどね。佐倉さんはこの後も仕事のようだし、大変だね」
「うん。さすが芸能界の王。でも高校生であれだけの忙しさだったら心配になる」
「あ、佐倉さんって高校生なんだ?学生って言うのは聞いてたけど大学生くらいかと……なにせあの容姿だから」

 あーうん、そうだね。身長高いし立ち居振る舞いが完璧だから。でも兄さんの場合は歳を取ってもずっと若々しくキラキラしていそうじゃない?父さんや母さんだっておれ達の兄弟と間違われることが多いくらいなのに、兄さんが今の父さん達と同じくらいの年齢になったら一体どうなっているのか……もはや恐ろしいまである。

「佐倉さんって身長何センチなの?僕はあの人に憧れてるけどファンとは少し違うからあまり詳しくないんだよね」
「おれは普通にファンだけどそんなに詳しいことは知らないよ?」

 知ってるけどむやみに話してたら怪しまれそうだから言えないっていうのが正しいんだけどね。

「これ以上ないくらいモデル体型なのは分かるんだけど。僕も一応モデルだからスタイルには自信あるけどあの人と比べたらちょっと……」
「まあそれはそうだろうね。身長……180はありそうだけど……」

 どうなんだろ。そういえば身長を聞いたことはなかったかもしれない。時間がある時に聞いてみようかな。
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