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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく
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「俺、嫉妬は別に悪いことじゃないと思ってる」
「でも、嫉妬してる暇があるなら努力するべきだと思わないの?」
おれはいつも自分に対してそう思うけど。
「別に努力しなくたって結果を出せる人は出せる。天才って言うのは実在するからね。俺は天才じゃなくてどこまで行っても平凡だから努力してる」
「じゃあ努力の天才?」
「それはあるかも。誰でも嫉妬ってするものなんじゃない?少なくとも俺はしたことあるよ。と言うか現在進行形で嫉妬してる」
「……誰に?」
兄さんが嫉妬……?兄さんほど嫉妬って言葉が似合わない人はいないと思う。何に対して、誰に対して嫉妬するの?兄さんが嫉妬するところってないと思うんだけど……
「直人くんだよ」
「おれ!?」
「嫌な思いをしたらごめん。先に謝っておくよ。……期待されるって嬉しいけどその反面、プレッシャーでもある。俺は興味を持ったことを極めただけで、天才ってわけじゃない。どちらかと言うと初めてやることは人より劣っている自覚がある。それなのに天才だから努力しなくても何でも出来るんだろうって言われる。俺はさ、人の期待が重く感じるんだよ。好きなことを好きなようにしたいだけなのにね。だから一般的にはかなり優秀なのに俺に比べたら劣るからって、俺ほどは期待されない直人くんが羨ましい。なんで俺だけこんな思いをしないといけないんだよ」
どいつもこいつも上を見すぎ、と言う兄さんは話している内容に反して楽しそうに踊っていた。こういう姿を見ていると興味を持ったことを極めるのが本当に好きなんだなって思う。
「俺は期待されない苦しみも悲しみも知らないけど、期待されることへのプレッシャーは誰よりも分かっているつもり。まあそれで、俺は直人くんに嫉妬してるって言ったわけだよー。直人くんは俺が何をやっても完璧な人間だと思ってない?」
「……料理の腕に関してはまったく思ってないけど、大体そうだね」
「料理は良いのー。別に料理が好きなわけではなくて、悔しかったから練習してただけ。それと、俺は画力も普通だよ。俺の場合、大抵のことは人並み以上に上達するけどその分ダメなことは本当にダメだから」
「うん。料理をするところ見てたら分かる。壊滅的だから。見ててハラハラする」
それは言わなくて良いんですー、と拗ねたように言う。兄さんは努力家だけど、もしかしたらそれ以上に負けず嫌いなのかも知れない。
「どういう種類の嫉妬かにもよるけど、直人くんは俺を利用したらいいんじゃない?俺には負けないって目標にするとか。これだけは負けたくないってことを極めるのも良いかもねぇ」
「おれが兄さんに勝つなんて無理……」
「ほーら。最初から無理だと決めつけるから無理なんだよ。自分は出来る、頑張れるって無理矢理にでも思い込んでおけば意外と限界まで力を出せたりするよ?」
「じゃあ……ダンスと歌だけは。どっちも好きでやってるから」
練習生とはいえアイドルだし。自信なさげだっただろうけど、良いんじゃない?って言ってもらえた。俺も直人くんに目標にしてもらえるように頑張らないといけないね、とも。
「でも、嫉妬してる暇があるなら努力するべきだと思わないの?」
おれはいつも自分に対してそう思うけど。
「別に努力しなくたって結果を出せる人は出せる。天才って言うのは実在するからね。俺は天才じゃなくてどこまで行っても平凡だから努力してる」
「じゃあ努力の天才?」
「それはあるかも。誰でも嫉妬ってするものなんじゃない?少なくとも俺はしたことあるよ。と言うか現在進行形で嫉妬してる」
「……誰に?」
兄さんが嫉妬……?兄さんほど嫉妬って言葉が似合わない人はいないと思う。何に対して、誰に対して嫉妬するの?兄さんが嫉妬するところってないと思うんだけど……
「直人くんだよ」
「おれ!?」
「嫌な思いをしたらごめん。先に謝っておくよ。……期待されるって嬉しいけどその反面、プレッシャーでもある。俺は興味を持ったことを極めただけで、天才ってわけじゃない。どちらかと言うと初めてやることは人より劣っている自覚がある。それなのに天才だから努力しなくても何でも出来るんだろうって言われる。俺はさ、人の期待が重く感じるんだよ。好きなことを好きなようにしたいだけなのにね。だから一般的にはかなり優秀なのに俺に比べたら劣るからって、俺ほどは期待されない直人くんが羨ましい。なんで俺だけこんな思いをしないといけないんだよ」
どいつもこいつも上を見すぎ、と言う兄さんは話している内容に反して楽しそうに踊っていた。こういう姿を見ていると興味を持ったことを極めるのが本当に好きなんだなって思う。
「俺は期待されない苦しみも悲しみも知らないけど、期待されることへのプレッシャーは誰よりも分かっているつもり。まあそれで、俺は直人くんに嫉妬してるって言ったわけだよー。直人くんは俺が何をやっても完璧な人間だと思ってない?」
「……料理の腕に関してはまったく思ってないけど、大体そうだね」
「料理は良いのー。別に料理が好きなわけではなくて、悔しかったから練習してただけ。それと、俺は画力も普通だよ。俺の場合、大抵のことは人並み以上に上達するけどその分ダメなことは本当にダメだから」
「うん。料理をするところ見てたら分かる。壊滅的だから。見ててハラハラする」
それは言わなくて良いんですー、と拗ねたように言う。兄さんは努力家だけど、もしかしたらそれ以上に負けず嫌いなのかも知れない。
「どういう種類の嫉妬かにもよるけど、直人くんは俺を利用したらいいんじゃない?俺には負けないって目標にするとか。これだけは負けたくないってことを極めるのも良いかもねぇ」
「おれが兄さんに勝つなんて無理……」
「ほーら。最初から無理だと決めつけるから無理なんだよ。自分は出来る、頑張れるって無理矢理にでも思い込んでおけば意外と限界まで力を出せたりするよ?」
「じゃあ……ダンスと歌だけは。どっちも好きでやってるから」
練習生とはいえアイドルだし。自信なさげだっただろうけど、良いんじゃない?って言ってもらえた。俺も直人くんに目標にしてもらえるように頑張らないといけないね、とも。
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