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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく

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「さ、桜大紋!?」

信号で止まってるところを呼び止められたんだけど、そろそろ信号変わるよ?でも警察の人、桜大紋を知ってるってことはうちの車について聞いてたんだね。じゃあ確認不足か。

「もう良いですか?おれはこれから学校なんだよね」
「申し訳ございません!大変失礼致しました…!」

ようやく解放された。信号が変わるまでのほんの数分の出来事だったけどさらに疲れた気がするよ……

朝からこんなことに巻き込まれるなんて今日は厄日かな?ついてないね。

「陽太、今回の件は父さんたちに報告しないでね。騒ぎにするほどのことではないし、こんなことで父さんたちの手を煩わせたくないから」
「はいはーい」

渚兄さんから指示が来たらしく、学院の裏手に回ると学院長が待ち構えていた。俺だけ下ろしてもらって車はそのまま家に帰るように命じると音を立てずに去って行った。

「おはようございます、学院長。お手を煩わせてしまいまして、申し訳ございません」
「おはようございます。いえ、本来なら車での通学が認められているのですからお気になさらず。すでに兄君からもお礼と謝罪を頂いてしまいましたしね」

おれの通う学院の学院長や理事長もそれなりに名家の出の方。だから他の人の目がない時は学校でもこんな感じ。そもそも二人きりになるようなことはほとんどないけど、それでも自分が通う学校の先生に敬語を使われるのは微妙な感情になるね。

「では授業があるのでこれで失礼しますね」
「はい」

急いで教室に向かうと意外と時間に余裕があって、普通に仲が良い人同士で集まったりしてにぎやかだった。間に合って良かった……

「あ!おはよう、桜井くん!」
「おはよう」
「お、直人。今日は遅かったな。休みかと思って心配したぞー」
「ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃったんだよね」

お金がある人たちやすごく頭の良い人たちばかりの学校だけど、全然ドロドロしたのとかはなくてすごい学校ってところ以外は普通なんだよね。
学校内の治安と言うか、いじめとかそういうことも他の学校より少ない。たぶん両家の子息令嬢ほど家への影響をよく考えているんだろうね。ドロドロしたものはなくても足元をすくわれる可能性はゼロじゃないから。

「ねえねえ知ってる?今日は二十二時から佐倉凪が配信するんだって!重大発表って書いてあった!」
「知ってる!佐倉くんってほんっとうにかっこいいよねー!どうやったらあんなに綺麗になれるのかな!?」

わぁ。今日も兄さん人気がすごいね。毎日どこかしらで兄さんの話題を聞くんだけど。ちなみにその世界的にも人気がある佐倉凪がこの学校の高等部にいるとはみんな知らないからね。兄さんが佐倉凪だってバレたら絶対大騒ぎだよ。

「お前のお兄さん、相変わらずの人気っぷりだな。芸能人としてに限らずここの生徒としても絶大な人気があるだろ?」
「そうだよね。でもおれ、今夜兄さんが配信するとか聞いてないんだけど」
「そりゃ、いちいち弟に言わないだろ」
「それもそうか」
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