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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく

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 どうしよう……こんな風に悩むくらいなら受けない方が良いのかな……

「直人様、何の話だったんすか?」
「渚兄さんが主役として出てる映画の代役をやってくれないかって。やるなら準主人公になるらしい」
「受けないんすか?」
「受けたいけど準主人公だよ?主役の次に目立たないといけないのに兄さんの隣で輝ける自信がないんだよね。だからどうしようか悩んでる」

 そう答えると陽太は少し悩むそぶりを見せる。やがて口を開いたかと思えばこんなことを言うのだ。

「あくまでも俺の意見ですけど……やってみたら良いんじゃないすか?最初から悩んで挑戦しないより失敗しても良いから挑戦しようと思うことが大切だと思いますけど。俺なんかの言葉じゃ軽く聞こえるかもしれないっすけどね。でも渚様があれだけ完璧なのって努力だけじゃないと思いますよ?いくら努力しても経験とか挑戦とか、その辺が足りないなら思うようにはいかないんじゃないすかね」
「……………」
「それに直人様に代役を頼んできたのって直人様になら任せられると思っての事でしょうし。役者としての経験が他の人よりかは足りないかもしれませんが、それでも見込みがあるから任せようと思ったんじゃないすか?なにより前に言ってたじゃないすか」
「なにを」
「『───いつか、渚兄さんと一緒に演技をしてみたい。兄さんと同じ景色を見てみたい』って。これを聞いた時俺はさっすがブラコン!って思いましたけど、夢を叶えるチャンスなんじゃないっすか?さっき俺が言った経験や挑戦も出来ると思いますよ」

 何て言うか、陽太に励まされるって癪だね。でもその通りではあるかな。

 前に兄さんが言っていたことと似ている。兄さんも「何をするにしても大事なのは努力と経験、挑戦。その過程を見る人なんていないんだから、自分の夢や目標があるなら醜く足掻けば良いんだよ。結局は結果がすべてなんだからねぇ」って。そんな風に言ってたことがあった。


「一言余計だよ」
「偉そうなこと言いましたけど、やるもやらないも直人様が決めることですし忘れていいですよ。どうするか決まりました?」
「兄さんにも聞いてみる」
「そう、ですか」

 忘れて良いと言った割に落ち込んでいるように見えるのはなんでだろうね?人の話は最後まで聞かないと。特に自分の主人の言葉くらい最後まで聞いてくれないかなぁ……

「おれに演技の稽古をつけてもらえないか、兄さんに聞いてみるよ」
「え!?と、言うことは」
「おれも頑張らなきゃいけないね。兄さんより目立つ気でいかないと」

 二ッと笑って見せると途端に陽太の表情が明るくなった。なに、結局陽太もおれに受けてほしかったの?

 まあそうだろうね。だっておれ、知ってるし。陽太がおれのファンだってこと。まだ一応アイドルとしてはデビューしてないんだけどね。

「よっし!」
「ちょっ、うるさい!大声出さないでよ」
「すみませ~ん!」

 これは絶対悪いと思ってないね。謝罪が軽い、軽すぎるよ……
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