11 / 58
第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく
10
しおりを挟む
どうしよう……こんな風に悩むくらいなら受けない方が良いのかな……
「直人様、何の話だったんすか?」
「渚兄さんが主役として出てる映画の代役をやってくれないかって。やるなら準主人公になるらしい」
「受けないんすか?」
「受けたいけど準主人公だよ?主役の次に目立たないといけないのに兄さんの隣で輝ける自信がないんだよね。だからどうしようか悩んでる」
そう答えると陽太は少し悩むそぶりを見せる。やがて口を開いたかと思えばこんなことを言うのだ。
「あくまでも俺の意見ですけど……やってみたら良いんじゃないすか?最初から悩んで挑戦しないより失敗しても良いから挑戦しようと思うことが大切だと思いますけど。俺なんかの言葉じゃ軽く聞こえるかもしれないっすけどね。でも渚様があれだけ完璧なのって努力だけじゃないと思いますよ?いくら努力しても経験とか挑戦とか、その辺が足りないなら思うようにはいかないんじゃないすかね」
「……………」
「それに直人様に代役を頼んできたのって直人様になら任せられると思っての事でしょうし。役者としての経験が他の人よりかは足りないかもしれませんが、それでも見込みがあるから任せようと思ったんじゃないすか?なにより前に言ってたじゃないすか」
「なにを」
「『───いつか、渚兄さんと一緒に演技をしてみたい。兄さんと同じ景色を見てみたい』って。これを聞いた時俺はさっすがブラコン!って思いましたけど、夢を叶えるチャンスなんじゃないっすか?さっき俺が言った経験や挑戦も出来ると思いますよ」
何て言うか、陽太に励まされるって癪だね。でもその通りではあるかな。
前に兄さんが言っていたことと似ている。兄さんも「何をするにしても大事なのは努力と経験、挑戦。その過程を見る人なんていないんだから、自分の夢や目標があるなら醜く足掻けば良いんだよ。結局は結果がすべてなんだからねぇ」って。そんな風に言ってたことがあった。
「一言余計だよ」
「偉そうなこと言いましたけど、やるもやらないも直人様が決めることですし忘れていいですよ。どうするか決まりました?」
「兄さんにも聞いてみる」
「そう、ですか」
忘れて良いと言った割に落ち込んでいるように見えるのはなんでだろうね?人の話は最後まで聞かないと。特に自分の主人の言葉くらい最後まで聞いてくれないかなぁ……
「おれに演技の稽古をつけてもらえないか、兄さんに聞いてみるよ」
「え!?と、言うことは」
「おれも頑張らなきゃいけないね。兄さんより目立つ気でいかないと」
二ッと笑って見せると途端に陽太の表情が明るくなった。なに、結局陽太もおれに受けてほしかったの?
まあそうだろうね。だっておれ、知ってるし。陽太がおれのファンだってこと。まだ一応アイドルとしてはデビューしてないんだけどね。
「よっし!」
「ちょっ、うるさい!大声出さないでよ」
「すみませ~ん!」
これは絶対悪いと思ってないね。謝罪が軽い、軽すぎるよ……
「直人様、何の話だったんすか?」
「渚兄さんが主役として出てる映画の代役をやってくれないかって。やるなら準主人公になるらしい」
「受けないんすか?」
「受けたいけど準主人公だよ?主役の次に目立たないといけないのに兄さんの隣で輝ける自信がないんだよね。だからどうしようか悩んでる」
そう答えると陽太は少し悩むそぶりを見せる。やがて口を開いたかと思えばこんなことを言うのだ。
「あくまでも俺の意見ですけど……やってみたら良いんじゃないすか?最初から悩んで挑戦しないより失敗しても良いから挑戦しようと思うことが大切だと思いますけど。俺なんかの言葉じゃ軽く聞こえるかもしれないっすけどね。でも渚様があれだけ完璧なのって努力だけじゃないと思いますよ?いくら努力しても経験とか挑戦とか、その辺が足りないなら思うようにはいかないんじゃないすかね」
「……………」
「それに直人様に代役を頼んできたのって直人様になら任せられると思っての事でしょうし。役者としての経験が他の人よりかは足りないかもしれませんが、それでも見込みがあるから任せようと思ったんじゃないすか?なにより前に言ってたじゃないすか」
「なにを」
「『───いつか、渚兄さんと一緒に演技をしてみたい。兄さんと同じ景色を見てみたい』って。これを聞いた時俺はさっすがブラコン!って思いましたけど、夢を叶えるチャンスなんじゃないっすか?さっき俺が言った経験や挑戦も出来ると思いますよ」
何て言うか、陽太に励まされるって癪だね。でもその通りではあるかな。
前に兄さんが言っていたことと似ている。兄さんも「何をするにしても大事なのは努力と経験、挑戦。その過程を見る人なんていないんだから、自分の夢や目標があるなら醜く足掻けば良いんだよ。結局は結果がすべてなんだからねぇ」って。そんな風に言ってたことがあった。
「一言余計だよ」
「偉そうなこと言いましたけど、やるもやらないも直人様が決めることですし忘れていいですよ。どうするか決まりました?」
「兄さんにも聞いてみる」
「そう、ですか」
忘れて良いと言った割に落ち込んでいるように見えるのはなんでだろうね?人の話は最後まで聞かないと。特に自分の主人の言葉くらい最後まで聞いてくれないかなぁ……
「おれに演技の稽古をつけてもらえないか、兄さんに聞いてみるよ」
「え!?と、言うことは」
「おれも頑張らなきゃいけないね。兄さんより目立つ気でいかないと」
二ッと笑って見せると途端に陽太の表情が明るくなった。なに、結局陽太もおれに受けてほしかったの?
まあそうだろうね。だっておれ、知ってるし。陽太がおれのファンだってこと。まだ一応アイドルとしてはデビューしてないんだけどね。
「よっし!」
「ちょっ、うるさい!大声出さないでよ」
「すみませ~ん!」
これは絶対悪いと思ってないね。謝罪が軽い、軽すぎるよ……
10
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
FLORAL-敏腕社長が可愛がるのは路地裏の花屋の店主-
さとう涼
恋愛
恋愛を封印し、花屋の店主として一心不乱に仕事に打ち込んでいた咲都。そんなある日、ひとりの男性(社長)が花を買いにくる──。出会いは偶然。だけど咲都を気に入った彼はなにかにつけて咲都と接点を持とうとしてくる。
「お昼ごはんを一緒に食べてくれるだけでいいんだよ。なにも難しいことなんてないだろう?」
「でも……」
「もしつき合ってくれたら、今回の仕事を長期プランに変更してあげるよ」
「はい?」
「とりあえず一年契約でどう?」
穏やかでやさしそうな雰囲気なのに意外に策士。最初は身分差にとまどっていた咲都だが、気づいたらすっかり彼のペースに巻き込まれていた。
☆第14回恋愛小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございました。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる