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第一章 幸せが壊れるのはあまりにも呆気なく

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 一括りに誕生日プレゼントと言っても当然もらうものは色々ある。お菓子類、アクセサリー類、食器、ブランドハンカチ、文房具類、花束などなど。
 まずお菓子類は桜井家専属の医師兼薬師に異物や毒物などの混入がないか確認してもらう。問題なければ使用人へ配られる。何の問題もないものだったとしても他人から貰ったものを簡単に食べるわけにはいかない。

 次にアクセサリー類やハンカチ、食器やその他も害がないことを確認してもらう。それらは問題なければ使用する。

 花は屋敷内に飾ってもらう。特に気に入ったものだけ普段暮らしている方の家に持っていく。おれももちろん害がないことを確認したうえで。

 結局、何をもらったとしても念入りなチェックは入るんだよね。桜井家は有名だけど同じくらい危険も多いから。だから学校でもおれたちのことを知っている人はゼロに等しい。隠しているからね。

 三年ほど前、兄さんの命が狙われた。中学の学食で最初は気付くかどうかというくらい、段々エスカレートして一目で分かるような異物を混入されるようになったらしい。でも兄さんは父さんたちに言わなかった。手を煩わせたくなかったらしい。そしてある日、ついに毒を盛られた。遅効性の毒を一度に何種類も。神経毒に出血毒など明らかに兄さんを殺す気で盛られた。

 当然それだけの毒が盛られたら普通は死ぬ。だけど兄さんは少し毒耐性があったからすぐに死ぬことはなかった。生死を彷徨い続け、ようやく目を覚ましても精神がやられていた。肉体的にも身体的にも弱っていたから目は覚ましたけどいつ死んでもおかしくないって、そう言われた。水分も食事を取ろうともしない。起きてからも毒が体に残っていて苦しんでいたのは間違いないのに一度も泣いてすらなかった。いや、泣けなかったのかもしれないね。誰が話しかけてもぼんやりしていて耳に入っていない様子だった。

 そんな状況だったにも関わらず兄さんはほぼ完全に回復した。今ではあんな感じだしね。記憶は曖昧みたいだけど本能的な恐怖が残っているのか身内以外の人が作ったものは何も口に入れられなくなった。それは今でも変わらなくて、記憶が曖昧なのは思い出したくないからだろうって。それだけ兄さんの心に深い傷を残した。

 もちろん、その件に関与した人な例外なくおれを含めた一族が始末したけどね。

 そんなことがあったから桜井家は警備や毒物などをより警戒するようになった。気付いているのか分からないけど兄さんの護衛はあれから倍以上になったらしいし。
 そんなわけで、誕生日プレゼントといえど桜井家では念入りなチェックが入るようになったんだよ。
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