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「───カティア・ローデント公爵令嬢! 心優しい彼女をいじめ抜き、先日は階段から突き落としたそうだな! 俺はそんな悪役令嬢と結婚するつもりはない! お前との婚約を破棄し、ここにいる男爵令嬢アリアとの婚約を宣言する!」
卒業パーティーと言う大事な場での婚約破棄。彼は生まれた時から決められていた私の婚約者です。私の両親は嫌だったそうですが、王家が決めた婚約なので断ることはできなかったのだとか。何代も前からローデント公爵家と彼の生まれ育ったレモーネ公爵家は敵対していました。私達の婚約は、関係を少しでも改善させるために仕組まれたものです。
ですが花嫁教育としてレモーネ家に通っても当然嫌われ者、婚約者に大切にされた覚えはなく、学園に入学してからはそちらのご令嬢と浮気。
……私を何だと思っているのでしょうか? 今までどんなに嫌がらせをされても悪口を言われても、ずっと黙っていました。でもそれは家に迷惑をかけないため。決してあなたに好き勝手されるためではありませんよ。浮気のことだって一応は隠していたつもりのようですが、この私が気付かないわけがありません。
「おい、なんとか言ったらどうだ!」
「そうですね……そちらのご令嬢は?」
「惚けるつもりか!? お前がいじめていた相手、アリア・ルー男爵令嬢だ!」
ルー、ですか……知ってはいますが関わった覚えのない家名ですね。彼の言葉はすべて心当たりがありませんけれど、そこの勝ち誇った顔をしているあなた、良かったら詳しく説明していただけません?
「ではアリア嬢にお聞きします。私があなたをいじめていた証拠はあるのですか?」
「ひ……ひどいです、カティア様! 証拠なんてなくても、あなたが私をいじめていたのに変わりはないでしょう? 私がレイモンド様と仲が良かったから嫉妬していたのだと分かっています。でも私、謝っていただけたらそれで許しますから……!」
「もしかして私を馬鹿にしています? 証拠がないのに謝罪することはできません。それから、私を名前で呼ぶ許可を出した覚えはなくてよ」
彼女に質問しましたが、もしかしなくても馬鹿にしているのでしょうね。卒業パーティーという大事な場での婚約破棄、身分が上の者に対する無礼、許可なく名前呼び。いじめや階段から突き落としたというのは冤罪ですし、この場にいらっしゃる皆様は迷惑そうにしておられますけど、お二人はお気付きではないのかしら。
何より、私は彼のことを好きではありません。むしろ嫌いです。嫌いな相手と別の女性が親しくしているのを見ても嫉妬なんてするはずがないでしょう。
それにこの場には国王陛下や王妃殿下、隣国の王族だっていらっしゃいます。この婚約破棄、皆様の様子を見るに王族の皆様に許可を取っての行動ではなさそうですね。国王陛下は何もおっしゃいませんけれど、普通に牢獄に入れられますよ? それともそれがお望み? 変わった方々ですこと。
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