公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~

山咲莉亜

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第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──

61 悲しんでとまでは言いません。だから……

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「リーシャ殿。初めまして、アーサー・ロード・フェルリアです。こっちは妻のジュリア」
「あら……?申し遅れました、リーシャです。旦那様のご両親でお間違いありませんか?」
「ええ、アルヴィンの両親です。ずっと機会を逃してしまっていたのですが、実はリーシャ殿にお会いしたいと思っていたのです」

 旦那様のお父君にしては失礼ですがすごく常識的な方に見えますね?こうして見ると旦那様はお父君ににているようです。お義母様も濃いピンクの髪にエメラルドの瞳を持ったどちらかと言うと可愛い感じの方ですけど……旦那様が匂わせていた嫁姑問題に発展しそうにないですね……?人は見かけによりませんし、その具体例がわたしの隣に立つ見目麗しい旦那様ですから注意はしますが……

「わたしのことはリーシャとお呼びください。敬語もなしでお願いします。それから、何故わたしに会いたいとお思いで…?」
「ではリーシャさんと呼ばせて頂きますね。敬語なしはお断りします」
「そ、そうですか」

 常識的な方だけど、割と押しが強め……なのかな?よく分からないけど。

「お会いしたいと思っていた理由ですが、私はエミリアさんと交流がありまして。リーシャさんの血筋の仕事も知っています。私はエミリアさんに命を救って頂いたことがあったのですが、訳あってお礼を言うことが出来なかったのですよ。ですからエミリアさんに変わってリーシャさんにお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。彼女のおかげで私はこうして生きています」

 ……その話、少しですがわたし知ってます。助けた人がいたけど仕事中だったのもあって最後まで安全を確保してあげることは出来なかったから心配だと。ほぼ間違いなくこの方ですね。お礼が言えなかった「訳」と言うのはその話を聞いてすぐにお母様は亡くなったからだと思う。

「詳しいことは知りませんが、その話をお母様に聞いたことがあります。最後まで安全を確保出来なかったから心配だと言っていましたがご無事だったようで何よりです。お母様にはわたしからお伝え致しますね。こちらこそ、お母様のことを覚えていてくださってありがとうございます」

 亡くなった人のことをいつまでも覚えている人はほとんどいない。身内なら覚えているかもしれないけど、他人は所詮他人ですから。悲しんでいても大抵数年で記憶から消える。

 だからお母様の話を他の人の口から聞いたのは本当に久し振りなんですよね。忘れてほしくない。かつてこの国のために戦い続けていた人を。ロードの仕事は皇族優先ではあるけど、大きく見ると国のために働いていることになる。自分たちのために命をかけて戦ってくれていた人がいるってこと、忘れてほしくなかった。まあ無理を言ってる自覚はありますけどね?だってロードが誰なのかは知れていませんし、ロードはロードでも戦闘系の仕事とも限らないですから。

「……安心してください。エミリアさんが生きていたことも誰のためにその人生を掛けていたのかも、そしてどれだけの命を救ったのかと言うことも、実際に助けて頂いた私が忘れることはありません。他の誰が忘れても、私だけは絶対に覚えていますよ」
「ありがとう、ございます」

 結構詳しいことを知っていそうだね。それだけ危ない所をお母様に助けられたのでしょう。

 少し憂鬱だった旦那様のご両親との対面、悪いことどころか嬉しいことしかありませんでしたね。旦那様のお父君の言葉、本心にしてもそうじゃなかったとしても、お母様のことを思い出しては泣いていた昔のわたしが本当に救われた気がする。
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