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第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──
57 継承式……と、まさかのトラブル発生
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わたしは現在、皇城の客室にて待機中です。旦那様が屋敷を出られて少し経ち、わたしもちゃんとしたドレスに着替えて屋敷を出た。さすがにね?今日は走ったりせずちゃんと馬車で移動しましたよ?どの家の当主でも皇族でも皇帝陛下でもなく、わたしが最後に入場することになっている。一応主役はわたしだからね。
そろそろ玉座の間に向かう頃合い。精神統一を兼ねて瞳の色を変えていると部屋の扉がノックされた。すぐに瞳の色を戻し、立ち上がる。あ、ちなみに能力は使っていなくても瞳の色を変えられるんですよ。わたしはなんとなく、精神統一するときによく変えます。能力を使う時は勝手に色が変わってしまうんですけどね。
「フェルリア公爵夫人、入場のお時間です。ご案内致します」
「よろしくお願いします」
宰相様直々に呼びに来てくださった。今日、継承式があることを知っているのはロードのことを知っている人のみ。もちろん宰相様も知っているはずですよ。
「それでは、私はこれで失礼致します」
「ありがとうございます」
「はい」
宰相様に短剣を渡すと彼は下がっていった。玉座の間に集まる人たちが何をしているのか良く視える。わたしが到着したことを聞いた陛下が玉座に座ったままひとつ頷く。同時に重々しい音を立てて扉が開き、部屋の中にいた皇族を除く全員が軽く頭を下げた。わたしは瞳の色を本来のオッドアイに戻し、足を踏み入れる。
「───公爵夫人、リーシャ·ロード·フェルリア」
「はっ」
赤い絨毯の上を優雅に歩き、玉座の前で膝を折ったまま皇帝の祝辞を聞いていたリーシャは立ち上がり、淑やかでありながらも堂々とした所作で壇上に上がった。
「まずは先代当主、エミリアの多大なる功績に敬意を示そう。生涯をかけて私たちウェルロード家を支え続けてきたこと、彼女に変わって礼を受け取ってくれ」
「ありがたき幸せに存じます」
「これからはそなたが代わってウェルロードを支えてほしい」
「御意。白銀の龍『忠誠』に誓って信義を尽くし、崇敬を捧げます」
「忠誠に誓う」とは一見おかしな言葉だけどロードにとって自分の家紋ほど裏切れないものはない。だって家紋を裏切ると言うことは皇家を裏切ると言うことだから。ロードの家紋には必ず皇家の家紋も入っている、と言うのはそういうことだ。
「では最後にこの短剣を我が物にせよ」
さっき宰相様に預けた短剣を手渡される。ガラスのように透明な宝石が埋め込まれているのにはちゃんと理由があった。継承式の際、新当主は必ず自らの能力の元となっている力を宝石に注ぐ。そうすることで直系であることの再確認をする。力を注げば宝石の色は変化するようになっていて、わたしの血筋の場合は紫になるね。力の持ち主が亡くなると再び透明になるという、よく分からないけどすごい物。
「……あっ」
「……ふむ。これはリーシャの力の大きさに石が耐えられなかったと言うことか?」
ああぁ、ごめんなさいお母様。わたしのご先祖様。代々受け継がれてきた大切な家宝を壊してしまいました……!えっとですね、わたしもどうしてこんなことになったのか分からないのでどうかお許しくださいね!?
………わたしに堅苦しいのは似合わないと家宝が教えてくれたのかもしれないです(?)。そうだったら良いな。…そう、ならないかな……
そろそろ玉座の間に向かう頃合い。精神統一を兼ねて瞳の色を変えていると部屋の扉がノックされた。すぐに瞳の色を戻し、立ち上がる。あ、ちなみに能力は使っていなくても瞳の色を変えられるんですよ。わたしはなんとなく、精神統一するときによく変えます。能力を使う時は勝手に色が変わってしまうんですけどね。
「フェルリア公爵夫人、入場のお時間です。ご案内致します」
「よろしくお願いします」
宰相様直々に呼びに来てくださった。今日、継承式があることを知っているのはロードのことを知っている人のみ。もちろん宰相様も知っているはずですよ。
「それでは、私はこれで失礼致します」
「ありがとうございます」
「はい」
宰相様に短剣を渡すと彼は下がっていった。玉座の間に集まる人たちが何をしているのか良く視える。わたしが到着したことを聞いた陛下が玉座に座ったままひとつ頷く。同時に重々しい音を立てて扉が開き、部屋の中にいた皇族を除く全員が軽く頭を下げた。わたしは瞳の色を本来のオッドアイに戻し、足を踏み入れる。
「───公爵夫人、リーシャ·ロード·フェルリア」
「はっ」
赤い絨毯の上を優雅に歩き、玉座の前で膝を折ったまま皇帝の祝辞を聞いていたリーシャは立ち上がり、淑やかでありながらも堂々とした所作で壇上に上がった。
「まずは先代当主、エミリアの多大なる功績に敬意を示そう。生涯をかけて私たちウェルロード家を支え続けてきたこと、彼女に変わって礼を受け取ってくれ」
「ありがたき幸せに存じます」
「これからはそなたが代わってウェルロードを支えてほしい」
「御意。白銀の龍『忠誠』に誓って信義を尽くし、崇敬を捧げます」
「忠誠に誓う」とは一見おかしな言葉だけどロードにとって自分の家紋ほど裏切れないものはない。だって家紋を裏切ると言うことは皇家を裏切ると言うことだから。ロードの家紋には必ず皇家の家紋も入っている、と言うのはそういうことだ。
「では最後にこの短剣を我が物にせよ」
さっき宰相様に預けた短剣を手渡される。ガラスのように透明な宝石が埋め込まれているのにはちゃんと理由があった。継承式の際、新当主は必ず自らの能力の元となっている力を宝石に注ぐ。そうすることで直系であることの再確認をする。力を注げば宝石の色は変化するようになっていて、わたしの血筋の場合は紫になるね。力の持ち主が亡くなると再び透明になるという、よく分からないけどすごい物。
「……あっ」
「……ふむ。これはリーシャの力の大きさに石が耐えられなかったと言うことか?」
ああぁ、ごめんなさいお母様。わたしのご先祖様。代々受け継がれてきた大切な家宝を壊してしまいました……!えっとですね、わたしもどうしてこんなことになったのか分からないのでどうかお許しくださいね!?
………わたしに堅苦しいのは似合わないと家宝が教えてくれたのかもしれないです(?)。そうだったら良いな。…そう、ならないかな……
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