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第一章

51 例の変わった人

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「そういえばリジー、あの人からの返事は来た?」

 とても長く感じられた一日の終わり、わたしが書類整理をしている間に就寝準備をしてくれているリジーに聞いてみた。
 あの人と言うのは、旦那様との使用人入れ替えの話で言っていた雇われ暗殺者みたいな人のこと。さらっと話した程度だったが、お互いに連絡できる手段は得られていたのであの後すぐに連絡を入れたのだ。

 性格に難アリというか、いろんな意味で変わった人だけど腕が立つのは雰囲気だけで分かっていたからね。

「はい、ちょうど先ほどお返事が返ってきましたよ」
「あ、そうなんだ。ありがとう」

 寝台の準備をする手を止めて、返事の手紙とペーパーナイフを持ってきてくれたので早速読んでみると……うん、やっぱりねって感じの返事だった。

「……読んでみて」
「?はい」
「ある意味好きなタイプだけど…それでも癖が強すぎるわ」
「これはまた……なんと言うか、あの方らしいと言いますか」

 まあ結論から言うと了承しましたって内容。わたしに雇われてくれるらしい。ただ特別おかしなことを書いているわけではないのに文章から伝わってくる変人具合……?なんて言えば良いんでしょうね。旦那様にはああ言いましたけど、正確に難アリと言うのも少し違いますし。変人でもないんだけどね、本当に何て言ったら良いのか分からない。ただ一つ言えることは、本当にいろんな意味で変わった人だってこと。変人とは違う気がする。

「そうね、夜会が終わった頃には来れるかな?その辺りはリジーが話し合っておいて。わたしはいつでも構わないから」
「かしこまりました。ではそのようにお伝えしておきます。素性は調べ上げなくてよろしいのですか?色々と隠し事がありそうでしたが……」
「それは教えてくれそうなら本人に聞くわ。無理に聞き出すつもりはないし、向こうの隠していることを教えてくれたらわたしもロードだって言うことにする」

 調べようと思えばすぐにでも調べられるけど、仕事に支障が出るわけでもないならそんなことをする必要はない。もしわたしの仕事に影響するような人物なら最初から雇おうだなんて思わないし、それが判断できるくらいには調べ上げてるから問題なしです。

 ◇

「……と言うことで、何の情報も得られませんでした」
「そうか。まあ分かりきっていたことだ。結果が分かっていたから試しに調べてみただけなのだからそこまで重く受け止めなくても大丈夫だろう」

 フェルリア公爵家の女主人こと、リーシャ様とその姉君のお茶会があった日の夜。私室兼執務室で書類決済しながら報告に耳を傾けていたアルヴィン様は、私の報告にあっさり返答した。てっきり嫌味と皮肉の嵐が来るかと身構えていたのに拍子抜けだ。

「アルヴィン様ご自身でも調べられたのですよね?いくらロードとは言え、フェルリアの情報力に勝るとは思えませんでしたが……」
「ん?言ってなかったか?リーシャの血筋はロードの中でも序列一位だぞ。フェルリアは二位だが天地ほどの差があると私は認識している。ロードは平等であると公表され、実際に序列の差でなにかあるわけでもないが私と彼女の実力差は明白だ」

 ……あのアルヴィン様がここまでおっしゃるのなら本当なんでしょう。特に能力を使うところを見たことがあるわけではないと聞きましたが、それでも明白なのですね。
 あの様子ですと、リーシャ様は……と言うより序列一位らしい彼女の家系は順位へのこだわりはなさそうです。二位との差でも明白と言われるのですから驚きますけど……

「たしかに大変優秀でいらっしゃるのは分かりました。リーシャ様の家系で最後のロードと言うことは、情報管理もすべておひとりでされているはずですよね。誰でも知っているくらいの情報しか出てこなかったのですから、悔しいですけど私程度の力では至らなかったのでしょう」
「そうだな。私が本気で調べても、他のロードが調べても結果は同じだっただろう」
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