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第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──

49 繊細な旦那様

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「旦那様、ひとつお聞きしたいのですけどロードの仕事ってあまりないんですか?答えられないのなら答えなくても構いませんけど……」

 いきなりだけどね。だって旦那様、ずっと屋敷内に気配がありますし。結婚前の一週間に仕事に行っていたなら話は別ですけど、そんな雰囲気ないんですよね。わたしが調べようと思えば旦那様に限らず他のロードも、それぞれの役割も分かるでしょうけど今のところそんなことするメリットがありませんし。

「そうだな。他のロードの役割は分からないが、たしかに少ない方だと思う。役割は予想できる人もいるが、君の家系に関しては全く予想もつかないな」
「そうなんですね。わたしの家系の役割については知られてはいけませんし、徹底して隠していますから知らなくて当然ですよ」

 皇族の影だなんて知られるわけにはいかない。諜報や影からの護衛だけならまだしも、暗殺だってするからね。むしろそれが主ですし。

「君はどうなんだ?君の方こそずっと屋敷にいる気がするが」
「わたしですか?そうですねえ……わたしは朝早くや夜遅くのようにあまり人目がない時間に行動してるから気付いていないんじゃないですか?別に人目がない時間に動かないといけないわけではありませんけど、楽ですからね」
「話して良いのか?」
「これくらいは構いませんよ」

 減るものではないでしょうし。それにこの程度の情報で悟られるほどわたしの情報管理は下手じゃないと思っていますよ。
 この結婚、契約結婚にはなるけど契約内容が意外と大雑把なんですよねえ……相手の本業を探るのは禁止ってなってますけど自分から話す分には構わないわけですし、お互いの仕事に支障が出ないように一応契約内容に入れたってだけですからね。

 お互いの利害の一致による結婚ほど楽な関係もなさそう。気を使う必要もないし、そう言う意味では良い相手と結婚したのかもね?そう言う意味では、だけど。

「君が皇太子殿下たちと話しているのを見て思ったが、君は皇族と仲が良すぎないか?」
「まあ長い付き合いですし。皇太子妃殿下に至ってはご結婚前から親しかったので」
「そんな感じはしたな。気後れしないのか?」
「いえ、まったく。敬愛はしていますけど、気後れはしないですね。逆に旦那様はするのですか?旦那様はそんな感情など持ち合わせていないと思っていますけど」
「そんなことはないと思うぞ」

 嘘でしょう。わざとらしいんですよ、その表情。気後れとか、そんな繊細な心を持っているかのような顔をしましたけど旦那様ほど繊細と言う言葉が似合わない人、わたしは知りませんね。
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