公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~

山咲莉亜

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第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──

43 珍しい旦那様の姿

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「リジー」
「はい」
「少しだけで良いから……一人にして」
「かしこまりました」

 リジーが部屋から出て行くのを確認し、ドレスのままではあるけど着替える気分にはなれずそのままベッドに倒れ込む。思い出せば思い出すほど涙が込み上げてきそうになる。
 わたしの言葉はお姉様に響かなかった。結局お姉様は本心を話せるほどわたしを信じていないんだろうね……と言うより本心を話すほどの相手ではないのかも。

 ずっと好きだった。いつかまたお姉様と笑い合える日が来たら良いのにと、ずっと思い続けてきた。そんな日が来ることを夢見ては諦めて……

 悔しいし悲しい。寂しい。焦り過ぎたのかもしれないね。まだあの家を出て一週間と少ししか経っていないのに、そんな早く心を開いてくれるはずがない。

「お母様ならなんて言うかな……考えがまとまらないなら訓練でもしたら、とか……?」

 そんなわけないよね。お母様はそんなに脳筋じゃないし。

「……ノックくらいして頂けます?」
「リジーに君の話を聞いてあげてほしいと言われて来たんだが、ノックしても返事はないし気配もなかったからな」
「すみません、気付きませんでした」

 リジー……また旦那様に報告したのね。わたしと旦那様、どっちの主人か分からなくなるんですけど。旦那様が良いように使われているのか、それともリジーが良いように使われているのか……

「何かあったのか?」

 ベッドから起き上がってテーブルの方に移動する。旦那様にも正面に座るよう促した。

「いえ、聞いて頂くほどの話ではないですよ」
「それならリジーは私に頼んできたりしない。無理に話せとは言わないが人に話した方が楽になることもある」
「ただ……お姉様と喧嘩?をしたので落ち込んでいるだけです。別にお姉様が悪いわけではないんですよ?わたしが勝手に寂しくなっただけですから」

 軽い感じで言ったのに旦那様は珍しく真面目に話を聞いてくれる。こういう時こそいつものようにしていてほしいんだけどね。調子が狂うから。

「無理に軽く言うことはないと思うぞ。そんな顔をして苦しむくらいなら涙が出なくなるまで泣いた方が良いんじゃないか?」
「…………」
「どうした?」
「どこかで聞いたことがあるような…言葉だと思いまして。泣いたりしませんよ。わたし、泣いたら少し幼く見えるって言われるんです」

 それに冷静ではいられなくなるからね。わたしは常に冷静でいないと。

 でも何となく安心する言葉だった。どこに安心する要素があるのか分からないけど聞き覚えがあるからかな?気のせいかもしれないけど……
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