公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~

山咲莉亜

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第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──

42 さようなら、とは言えませんけど……

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「…………」

 わたしの言葉を聞いたお姉様は、安心したようなショックを受けたような複雑そうな顔をした。

「それで、結局お姉様はわたしのことをどう思っているのですか?」
「嫌いだと言って、」
「わたしは本心を話しました。お姉様はまだ、本当の気持ちを話してくださらないのですか?」

 これだけ言っても嫌いとしか言わないならもう諦めます。言葉にしてくださらなくても、わたしのことを想ってくださっていたことは分かりましたから。……本当に、痛いほど分かりましたから。

「……ごめんなさい」
「そう、ですか。……わたし、もう行きますね。今日はお越しいただきありがとうございました」
「ち、違う! 待って、リーシャ!」
「離してください。何が違うのですか。お姉様はわたしが本当に教えてほしいことには答えてくださらないのでしょう?」

 やっぱりわたしの言葉はお姉様に響かなかったのね、と。そう思い、もう部屋に戻ろうと立ち上がった。これ以上お姉様と一緒にいられる気がしなかったから。だけどお姉様はわたしを拒んだくせに腕を掴んで引き留めてきた。

 せっかく……せっかく、誰にも邪魔されることなくお姉様とお話しできると思っていたのに。お父様やお継母様がいないこの場所なら、本当の気持ちを話してくださるかもしれないと期待していたんですけどね。急激に感情が冷めていくこの感覚。随分と久しぶりではありませんか。

「リーシャ、違うの! そうじゃなくて……!」
「ごめんなさい。今日はもう一緒にいたくないです。お姉様と、お話ししたくないです。これ以上は冷静でいられる自信がありませんから。何か言いたいことがあるのでしたらまた後日、手紙でも送ってください」

 振り向かずに手を振り払い、お姉様の顔を見ることなくそのまま屋敷の中に入った。旦那様はこの場にいないので、相変わらず使用人達の嘲笑する声が聞こえてくる……かと思ったけど、わたしの様子がおかしかったのか、戸惑っているみたいだった。
 当然使用人の戸惑いなんてわたしからするとどうでも良いのでそのまま私室へと戻る。

 いつの間にか帰ってきていたリジーは、黙ってわたしの傍にいてくれている。椅子に座ってぼーっとしていると、皇家の伝書鳩がやってきて窓をノックされた。

「……皇帝陛下から? ありがとう」

 伝書鳩に預けられていた手紙には、リジーに伝言を頼んだことへの返事が書いてあった。結論から言うと『了承』らしい。

 これでわたしの仕事は一つ減ったね。お父様達の隠居についてもお話ししておくように言ったから、近い内にお父様達には命令が下ると思う。場所の指定もしてある。

 あなた方のお望み通り、領主の仕事をする必要のない環境を用意してあげたのですから喜んでくださいね、お父様。文句は聞きたくないのでどうかそれで満足してください。心配しなくても衣食住は保証されます。領主の仕事を放棄しただけでなく、何度も法律で定められた以上の税を取ろうとしたんです。いつまでも黙ってはいませんよ。お父様もお継母様も立派な犯罪者です。衣食住は基本的に保証されますが、働かないと与えられませんからご注意ください。

 お母様に対しての不誠実な態度の復讐。あえていきなり犯罪者にして差し上げました。そうそう、ロードは明かされていなくとも皇族に匹敵する権力者です。お母様やわたしに対する不敬罪も含まれますから無期懲役。労働刑ですね。因果応報ってやつです。大丈夫、お母様を裏切るほどの愛の力があるのだから、きっと牢の中でも幸せになれますよ。
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