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第一章
42 さようなら、とは言えませんけど……
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「…………」
わたしの言葉を聞いたお姉様は、安心したようなショックを受けたような複雑そうな顔をした。
「それで、結局お姉様はわたしのことをどう思っているのですか?」
「嫌いだと言って…」
「わたしは本心を話しました。お姉様はまだ、本当の気持ちを話してくださらないのですか?」
これだけ言っても嫌いとしか言ってくれないならもう諦めます。言葉にしてくれなくてもわたしのことを想ってくれていたことは分かりましたから。痛いほど分かりましたから。
「……ごめんなさい」
「そう、ですか。……わたし、もう行きますね。今日はお越しいただきありがとうございました」
「ち、違う!待って、リーシャ!」
「離してください。何が違うのですか。お姉様はわたしが本当に聞きたいことは教えて下さらないのでしょう?」
やっぱりわたしの言葉はお姉様に響かなかったのね、と。そう思ってもう屋敷の中に入ろうと立ち上がった。これ以上お姉様と一緒にいられる気がしなかったから。なのにお姉様はわたしを拒んだくせに腕を掴んで引き留めてきた。
せっかく、せっかく誰にも邪魔されることなくお姉様とお話しできると思っていたのに。お父様やお継母様がいないこの場所なら本当の気持ちを話してくれるかもしれないと期待していたんですけどね。
「リーシャ、違うの!そうじゃなくて……!」
「ごめんなさい。今日はもう一緒にいたくないです。お姉様と、お話ししたくないです。これ以上は冷静でいられる自信がありませんから。何か言いたいことがあるのでしたらまた後日、手紙でも送ってください」
振り向かずに手を振り払い、お姉様の顔を見ることなくそのまま屋敷の中に入った。旦那様がこの場にいないからか、相変わらず使用人たちの嘲笑する声が聞こえてくる。………と、思ったけどわたしの様子がおかしかったのか、戸惑っているみたいだった。
当然、使用人の戸惑いなんてわたしにとってはどうでも良いからそのまま私室へと戻る。
リジーは傍で黙ってくれているので椅子に座ってボーッとしていると、皇家の伝書鳩がやってきて窓をノックしてきた。
「……皇帝陛下から?ありがとう」
伝書鳩に預けられていた手紙には、リジーに伝言を頼んだことへの返事が書いてあった。結論から言うと「了承」らしい。
これでわたしの仕事は一つ減ったね。お父様たちの隠居についてもお話ししておくように言ったから、近いうちにお父様たちには命令が下ると思う。場所の指定もしてる。
望みどおり仕事をする必要のない環境を用意してあげたんだから喜んでくださいね、お父様。文句は聞きたくないですのでどうかそれで満足してください。心配しなくても衣食住は保証されます。領主の仕事を放棄しただけでなく、何度も法律で決められた以上の税を取ろうとしたんです。いつまでも黙ってはいませんよ。お父様もお継母様も立派な犯罪者です。衣食住は基本的に保証されますが、働かないと与えられないですからご注意ください。
お母様に対しての不誠実な態度の復讐。あえていきなり犯罪者にして差し上げました。そうそう、ロードは明かされていなくとも皇族に匹敵する権力者です。不敬罪も含まれますから無期懲役。労働刑ですね。因果応報ってやつです。
わたしの言葉を聞いたお姉様は、安心したようなショックを受けたような複雑そうな顔をした。
「それで、結局お姉様はわたしのことをどう思っているのですか?」
「嫌いだと言って…」
「わたしは本心を話しました。お姉様はまだ、本当の気持ちを話してくださらないのですか?」
これだけ言っても嫌いとしか言ってくれないならもう諦めます。言葉にしてくれなくてもわたしのことを想ってくれていたことは分かりましたから。痛いほど分かりましたから。
「……ごめんなさい」
「そう、ですか。……わたし、もう行きますね。今日はお越しいただきありがとうございました」
「ち、違う!待って、リーシャ!」
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やっぱりわたしの言葉はお姉様に響かなかったのね、と。そう思ってもう屋敷の中に入ろうと立ち上がった。これ以上お姉様と一緒にいられる気がしなかったから。なのにお姉様はわたしを拒んだくせに腕を掴んで引き留めてきた。
せっかく、せっかく誰にも邪魔されることなくお姉様とお話しできると思っていたのに。お父様やお継母様がいないこの場所なら本当の気持ちを話してくれるかもしれないと期待していたんですけどね。
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振り向かずに手を振り払い、お姉様の顔を見ることなくそのまま屋敷の中に入った。旦那様がこの場にいないからか、相変わらず使用人たちの嘲笑する声が聞こえてくる。………と、思ったけどわたしの様子がおかしかったのか、戸惑っているみたいだった。
当然、使用人の戸惑いなんてわたしにとってはどうでも良いからそのまま私室へと戻る。
リジーは傍で黙ってくれているので椅子に座ってボーッとしていると、皇家の伝書鳩がやってきて窓をノックしてきた。
「……皇帝陛下から?ありがとう」
伝書鳩に預けられていた手紙には、リジーに伝言を頼んだことへの返事が書いてあった。結論から言うと「了承」らしい。
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