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第一章

41 無駄な努力

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「姉妹なら必ずお互いのことを想っているとは限らないのではなくて?」
「そうですね。わたしとお父様は血が繋がっていますけどあの人のことは大嫌いですし。ですがそれで言うなら、不仲に見えるからと言ってお互いのことを想っていない、とも限らないでしょう?……少なくともわたしはお姉様のこと、ずっと大好きですよ」

 お姉様には確信していると言ったけど……勘違いだったと言う可能性が全くないわけではない。それにわたしのことを庇ってくれていたのはわたしがロードかもしれないと思っていたからで、姉としての愛はもうないのかもしれない。

 ほんの少しでも良いからお姉様もわたしのことを好きでいてくれたら……と思ってお姉様の方を見ると、お姉様はとても悲しそうな顔をしていた。

「お姉様……?」
「……なんであなたが泣きそうなのよ。泣きたいのはこっちだわ。バレていないと思っていたのに……お父様もお母様もリーシャのことを悪く言わないでほしい、嫌がらせなんてしないでほしいと言っても聞いてくださらなかったわ。それなら私が嫌われても良いから出来る限りあなたを守ろうと思ったのよ。表立って庇っても無駄だと分かっていたから。散々酷いことを言ったし、酷いことをしたわ。継承権だって奪ってしまった。嫌われるのは仕方ない、当たり前だと思っていたのに………」

 なんで大好きなんて言うのよ、と今にも泣きだしそうになりながら睨んでくる。

 ずっと不思議だったんだよね。お姉様は姉としての愛情があるように見えるのに何故それを隠すのか。相当思い詰めていたんだと思う。まるで嫌いと言ってほしかったとでも思っていそうな眼差し。

「ごめんなさいお姉様」
「何に対しての…謝罪?」
「お姉様なりに頑張っていたのは分かりました。でも残念ながらわたし、お姉様の言動で傷付いたこともショックだったこともないんですよね。だからお姉様の努力を無駄にしてごめんなさいって言ってるんですよ」

 最後はわざとそっぽを向いて謝る。だってこんな努力はしてほしくなかった。いくらわたしが何とも思っていなかったとはいえ、お姉様は違う。お姉様は思い詰めていたようだから。お姉様が悲しむくらいならわたしのことなんか放っておけば良かったのに。

 どうせわたしはお姉様どころか、お父様やお継母様の言動にだって傷付いていないんだし。罵倒や嫌がらせくらいで悲しむようなメンタルしてないんだよね。世の中には死ぬより恐ろしいことが山ほどある。それを幼少期から散々受けてきたわたしがあれくらいのことで傷付けるはずがない。
 言っとくけど、わたしが初めて拷問を受けたのは十歳にも満たない年齢だからね?
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