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第一章

39 フランクス伯爵家の新当主

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「そ、それならお父様たちはどうするの?」
「隠居して頂きますよ。今までは黙っていましたけど、領主一家でありながら領地どころか領民のことさえ考えず、自分たちは好き放題していたのです。いつまでも爵位を持っていられる分際ではありません」
「……好き放題と言うなら私も同じだと思うわよ」

 本当にそうなら自分で言ったりしません。お父様やお継母様のように贅沢して暮らすのが当たり前だと考えるでしょうから。

「わたし、人を見る目はあるつもりです。お姉様は贅沢しているように見せかけてしっかり節約していました。お金を使うのは社交くらい。それも自由に使っているように見せていただけで必要最低限しか使っていませんでした。領地についての勉強もしていました」

 そこまで話して一度お茶を一口飲み、知らないふりを貫くお姉様に続けて話す。

「わたしが気付いていないと思っているのか分かりませんけど、領民の生活を少しでも楽にするために何度も手伝いに来てくれたのだと聞きましたよ。みんなお姉様に感謝していました」
「リーシャほどではないわ」
「そうだとしても、お姉様なら当主に相応しいと思ったのです。嫌なら考え直しますけどどうしますか?」
「……もう報告に行ってしまったのだし、私がやるしかないでしょう」
「お姉様ならそう言ってくださると思っていました。ありがとうございます」

 これで一つ話が終わった。まだまだ話したいことはあるけど……お姉様とこんなに話したのはいつぶりかな?領地のことしか話していないけど、それでもわたしはお姉様の事ことが好きだから嬉しい。

 昔のように仲良くいられたら良かったんだけどね………

「しばらくはわたしの管理下で領地を運営していただく形で大丈夫ですか?もちろんわたしも出来る限りお手伝いします」
「ええ」
「では次に、今年は不作の噂が流れているでしょう?フランクス領はどんな感じですか?」

 さっきお姉様はわたしほどではないと言っていたけど、お姉様はわたしと同じくらい領地の視察に行っていた。それはわたしがいなくなっても同じだろうから聞いてみることにした。

 フェルリア公爵家に来る前、しばらく忙しくしていてあまり視察に行けてなかった。言ってもざっとしか見れなかったから、もしかするとお姉様の方が詳しいかもしれない。

「まだ分からないけれど、今のところは大丈夫そうよ。フランクスが大丈夫なのだから他の領地も無事でしょうね。噂はあくまでも噂だもの。経過報告はするけれどもう少し様子見ね」
「そうですか。ではわたしが話したいことは以上です。お姉様も何か言いたいこと、あるいは聞きたいことがあるのではありませんか?」
「そうね」
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