公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~

山咲莉亜

文字の大きさ
上 下
34 / 104
第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──

33 家族と言う名の───

しおりを挟む
「ふふっ!それでリサちゃん、戦場って言ったのね」
「ある意味戦場な気がしていましたけど、予想通りだったわ」
「まあ貴女ほどの美貌だと職人は張り切るでしょうしね」

 皇城での戦争───継承式用のドレスを仕立てるためのデザイン決めと採寸が終わり、わたしはタイミング良く登場したレタお姉様とお茶をしていた。継承式用の衣装は正装で大体のデザインは決まっているけど細かいところは自分で決めないといけない。

 ロードが当主となる際、当主のみが特別な衣装を仕立てる。普通の正装と違うところは各家の家紋が入っているということ。わたしの家系の家紋は神秘的な銀色の鱗を持った龍。それが皇家の家紋を守るようにして巻き付いている。ロードの家紋にはすべて皇家の家紋も入っていて、それは皇族を守る五家だと言うことを表す。家紋が入っているだけではなく、デザインも家紋を示唆するようなものばかりで自分で決めるのはドレスの型や本当に細かいところくらい。

 だからそんなに大変ではないんだけど、大変だったのは採寸。スタイルが良いだとか肌が白いだとか言われた。それがすごく恥ずかしかったんだよね。わたし程度のスタイル、いくらでもいると思う。肌の白さは家系の影響でもあるし。

「継承式、楽しみにしているわ!リサちゃんの晴れ舞台だものね」
「晴れ舞台と言っても内々に行われるけどね」
「そんなこと言わないの。翌日には国民にも公表されるのだからやっぱり晴れ舞台でしょう。でも忘れないでね」
「何をですか?」
「リーシャ、あなたは正式に私たち皇族の配下になるけれど、それ以上に私たちがあなたを家族だと思っているってこと。正式に継いだからと言ってよそよそしくなったら怒るから!」

 家族……皇族はみんなロードに同じようなことを言ってきたとお母様に聞いたことがある。自分たちの命を預ける相手であり、いざとなったら命をかけて守らせざるを得ないからとか何とか。だから、本当に忠実に自分たちのことを守ろうとするから、命を棒に振ることのないよう家族のようなものだと言い続けているのかも知れないって。

 もちろんそれだけじゃなくて本気で思っているんだろうけどね。

 でもわたしたちは素直に頷ける立場じゃない。家族だと言われても、結局は自分の命をかける相手なんだから。素直に頷いて悲しませてはいけない。何があっても絶対の味方であるわたしたちのせいで主人が心を痛めるようなことがあってはいけない。

「もちろんですよ」

 だからわたしたちは嘘を吐く。同じように家族だと認識しても良いけど守るべき相手だということは何があっても忘れてはいけない。特に、わたしは。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

処理中です...