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第1章 白銀の龍と漆黒の剣──交わる二色の光──
33 家族と言う名の───
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「ふふっ!それでリサちゃん、戦場って言ったのね」
「ある意味戦場な気がしていましたけど、予想通りだったわ」
「まあ貴女ほどの美貌だと職人は張り切るでしょうしね」
皇城での戦争───継承式用のドレスを仕立てるためのデザイン決めと採寸が終わり、わたしはタイミング良く登場したレタお姉様とお茶をしていた。継承式用の衣装は正装で大体のデザインは決まっているけど細かいところは自分で決めないといけない。
ロードが当主となる際、当主のみが特別な衣装を仕立てる。普通の正装と違うところは各家の家紋が入っているということ。わたしの家系の家紋は神秘的な銀色の鱗を持った龍。それが皇家の家紋を守るようにして巻き付いている。ロードの家紋にはすべて皇家の家紋も入っていて、それは皇族を守る五家だと言うことを表す。家紋が入っているだけではなく、デザインも家紋を示唆するようなものばかりで自分で決めるのはドレスの型や本当に細かいところくらい。
だからそんなに大変ではないんだけど、大変だったのは採寸。スタイルが良いだとか肌が白いだとか言われた。それがすごく恥ずかしかったんだよね。わたし程度のスタイル、いくらでもいると思う。肌の白さは家系の影響でもあるし。
「継承式、楽しみにしているわ!リサちゃんの晴れ舞台だものね」
「晴れ舞台と言っても内々に行われるけどね」
「そんなこと言わないの。翌日には国民にも公表されるのだからやっぱり晴れ舞台でしょう。でも忘れないでね」
「何をですか?」
「リーシャ、あなたは正式に私たち皇族の配下になるけれど、それ以上に私たちがあなたを家族だと思っているってこと。正式に継いだからと言ってよそよそしくなったら怒るから!」
家族……皇族はみんなロードに同じようなことを言ってきたとお母様に聞いたことがある。自分たちの命を預ける相手であり、いざとなったら命をかけて守らせざるを得ないからとか何とか。だから、本当に忠実に自分たちのことを守ろうとするから、命を棒に振ることのないよう家族のようなものだと言い続けているのかも知れないって。
もちろんそれだけじゃなくて本気で思っているんだろうけどね。
でもわたしたちは素直に頷ける立場じゃない。家族だと言われても、結局は自分の命をかける相手なんだから。素直に頷いて悲しませてはいけない。何があっても絶対の味方であるわたしたちのせいで主人が心を痛めるようなことがあってはいけない。
「もちろんですよ」
だからわたしたちは嘘を吐く。同じように家族だと認識しても良いけど守るべき相手だということは何があっても忘れてはいけない。特に、わたしは。
「ある意味戦場な気がしていましたけど、予想通りだったわ」
「まあ貴女ほどの美貌だと職人は張り切るでしょうしね」
皇城での戦争───継承式用のドレスを仕立てるためのデザイン決めと採寸が終わり、わたしはタイミング良く登場したレタお姉様とお茶をしていた。継承式用の衣装は正装で大体のデザインは決まっているけど細かいところは自分で決めないといけない。
ロードが当主となる際、当主のみが特別な衣装を仕立てる。普通の正装と違うところは各家の家紋が入っているということ。わたしの家系の家紋は神秘的な銀色の鱗を持った龍。それが皇家の家紋を守るようにして巻き付いている。ロードの家紋にはすべて皇家の家紋も入っていて、それは皇族を守る五家だと言うことを表す。家紋が入っているだけではなく、デザインも家紋を示唆するようなものばかりで自分で決めるのはドレスの型や本当に細かいところくらい。
だからそんなに大変ではないんだけど、大変だったのは採寸。スタイルが良いだとか肌が白いだとか言われた。それがすごく恥ずかしかったんだよね。わたし程度のスタイル、いくらでもいると思う。肌の白さは家系の影響でもあるし。
「継承式、楽しみにしているわ!リサちゃんの晴れ舞台だものね」
「晴れ舞台と言っても内々に行われるけどね」
「そんなこと言わないの。翌日には国民にも公表されるのだからやっぱり晴れ舞台でしょう。でも忘れないでね」
「何をですか?」
「リーシャ、あなたは正式に私たち皇族の配下になるけれど、それ以上に私たちがあなたを家族だと思っているってこと。正式に継いだからと言ってよそよそしくなったら怒るから!」
家族……皇族はみんなロードに同じようなことを言ってきたとお母様に聞いたことがある。自分たちの命を預ける相手であり、いざとなったら命をかけて守らせざるを得ないからとか何とか。だから、本当に忠実に自分たちのことを守ろうとするから、命を棒に振ることのないよう家族のようなものだと言い続けているのかも知れないって。
もちろんそれだけじゃなくて本気で思っているんだろうけどね。
でもわたしたちは素直に頷ける立場じゃない。家族だと言われても、結局は自分の命をかける相手なんだから。素直に頷いて悲しませてはいけない。何があっても絶対の味方であるわたしたちのせいで主人が心を痛めるようなことがあってはいけない。
「もちろんですよ」
だからわたしたちは嘘を吐く。同じように家族だと認識しても良いけど守るべき相手だということは何があっても忘れてはいけない。特に、わたしは。
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