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第一章

25 旦那様

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「君がそう言うのならこれ以上は言わないでおくが、君はもっと自分に自信を持つべきだと思うぞ?それと、ずっと気になっていて言わなかったが結婚したのに公爵呼びをするつもりなのか?いくらなんでも他人行儀すぎると思うのだが」
「ではなんとお呼びすればよろしいので?」
「そうだな……やはり名前だろう」
「却下で。旦那様、で良いのでは?」

 と言うか、これ以外の呼び方をするつもりはない。名前で呼ぶほどわたしたちは親しい間柄ではないですよ!旦那様がダメなら公爵様に戻す。
 旦那様呼びはあまりいなくて、どちらかと言うと夫婦なら名前で呼ぶ方が普通。でもわたしたちは結婚の理由や婚約期間からして普通じゃないですし、今更普通じゃないことがひとつやふたつ増えたところで大した差ではないですよ。

それで良いとしよう。君にそれ以上を求めたところで聞いてくれないのが目に浮かぶ」
「あら、よく分かっていらっしゃるではありませんか。この話はもう終わりですね。おやすみなさいませ」

 公爵様改め、旦那様のお部屋から出て行こうとした所でもう一つ、話しておくように皇帝陛下から頼まれたことがあったことを思いだした。

 万が一誰かに聞かれては困るので旦那様の方まで戻って、椅子に腰を掛ける旦那様に顔を近づける。

「───皇帝陛下より伝言です。一週間後、皇城にてロードの継承式があります。その日はわたしと旦那様は別々で皇城に行くことになります。何があっても予定を開けておくようにとのことでした」
「君の継承式か」
「ええ。まあ現時点ですでに継いでいるようなものですから大きく変わることはないでしょうけど」
「ロードの一人、それも序列一位がいなくなって約七年。どれだけ他のロードや国民が君を待ち望んでいたか知らないのか?」

 ロードは皇家のために存在する。そしてその皇家は主に国民のためにロードを使うから国民にとってロードの存在は必要不可欠。表向きは平和で何事もないように過ごしているけど国民が不安に思っていることくらいはわたしも知ってる。でもロードは当主であろうとなかろうと皇家の命令で働くから当主がいないと国が亡びるってことはないんだよね。

 それもあってわたしはまだ継いでいなかったのですけど。

「そんなことはないですけど、わたしからすると少し動きやすくなる程度ですし。それに序列もほとんどないようなものでしょう」
「……そうか。継承式の件は了解した」
「はい。では今度こそおやすみなさい」
「ああ」
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