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第一章

22 お飾りの妻にはなりますけど、愛し合っているふりは面倒です

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 なにが「せっかく可愛いのだから、綺麗にしていないと勿体ないでしょう」よ。本当に可愛いのはお姉様の方でしょうに。なんて、今はそんなこと分かりきっていることを考えている暇はない。

 挨拶回りはまだ終わっていないのだからと急いで公爵様の所へ戻った。

「もう良いのか?」
「はい。近いうちに話があるからお茶会でもしましょうと言っておいたので」
「……君も中々鬼畜だな、リーシャ」

 鬼畜とは何のことですかね。誰のことを言っているのです?それを言うなら公爵様ご自身のことだとわたしは思います!
 だって普通は族令嬢に契約結婚なんて持ち掛けます?それも三年限定の、ですよ?わたしは条件が合っていたから喜んで受けたけど、それは置いといて……
 とにかく、普通に考えたら鬼畜なのはどっちですかって話です。そもそもわたしは鬼畜とか言われるようなことをした覚えはないんだけど。

「あら。やっと戻ってきたのね、リサちゃん。改めて結婚おめでとう!とっても綺麗だわ!」
「ありがとうございます。レタお姉様」

 レタお姉様ことヴィオレッタ第一皇女殿下は幼いころに知り合って以来、わたしのことを本当の妹のように接してくれる。リサちゃんと言うのはわたしの愛称らしいね。わたしのお姉様呼びは必死にお願いされて断ったけど、キラキラした目に負けた結果。

「随分と仲がよろしいのですね?」
「フェルリア公爵。知らなかったの?」
「ええ、知りませんでした。皇女殿下がリーシャを愛称で呼んでいることは」

 そこですか。普通は、なんでわたしが皇女殿下をレタお姉様と呼んでいるのかって言及すると思いますよ。それとお二人とも含みある笑顔ですけど、仲が悪いのかな?
 それから公爵様、わたしの腰を引き寄せないでください!と言うか触らないでくれます!?愛し合っている恋人風に見せるところじゃないですよ!

 レタお姉様に見せつけたところで何も良いことは起こりませんから、取り敢えず離れてくださいません?

「男の嫉妬は醜いらしいわよ?」
「嫉妬なんてしていませんよ」
「…………」

 でしょうね。何でも良いので離れてほしいんですけど?人前で無理矢理引きはがすわけにはいかないから無言で腰に添えられている手を外すと愉快そうに笑われた。本当に性格悪くないですか?この人、絶対わたしが困ってるのとか嫌がっているのを見て面白がっているよね。そんなに人を揶揄うのが楽しいのでしょうか。お偉いさんの考えることは分かりませんね。
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