上 下
5 / 60
第一章

5 それを証明するのは

しおりを挟む
 目の前に座る公爵の両目に一筋の金色の光が走った。次の瞬間には黒髪黒眼の美貌の公爵は黒髪に右目が金、左目が赤のオッドアイへと変化していた。それは、その人がロードであることを指し示す。

・ロードの爵位は建前上のものであって特に意味はなく、どの家も平等な権力を持つ。

・その家の直系と皇族、他の家のロードは当主にしかロードだということは分からず、普段は建前の爵位を使用(知っている者は他にもいるが、決して他言してはいけない)。

・ロードは直系のみオッドアイを持つが普段は色を変えている(ロードしか瞳の色を変えることはできないので偽りは不可能)。

・ロード同士で敵対することは王命により禁じられているが、そもそも当人たちは皇家の忠臣なだけあって敵対することに興味はない。

・ロードは各家で違うが、それぞれの役割に合わせて初代皇帝が作った特殊な能力を使うことができる。

・ロードの家系でも、直系ではない限りそれはロードとは言われない。

・皇族にとって、ロードは身内のようなもの。

 これが世間が知るロードだ。そしてこれはすべて真実。

 余計なことを知ってしまったわ…知りたくなかった事実だよね!

「どうだ?」
「ええ、綺麗なオッドアイですね。まさか公爵様がロードだとは思いませんでした」

 君も見せろと視線で促されたので同じく本来の瞳の色を晒す。普段は銀髪に紫の瞳だけど、本来の色は銀髪に右が紫で左が金のオッドアイ。

 いつもは色を変えているからなんだか落ち着かないんだけど…それにしてもこの方の赤い方の瞳、すごく綺麗だわ。やっぱりなんか癪に障る人ですねあなた!

 右の金はわたしと同じ色だけど赤はわたしにはない色。黒髪に赤い瞳というのは鋭さも感じられてとても美しいと思う。美しいとは思うけど、やっぱり性格最悪だし瞳の色以外好みじゃない。

「……」
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。それより婚姻の儀は一週間後になる。明日には屋敷に来てもらう。迎えに来るから準備しておいてほしい」
「明日!?」

 いくらなんでも早すぎない?準備しておいてほしい、ではないんだけど。しかも式が一週間後って…ロードの式には陛下たちも来られるはずなのにその辺の配慮はいらないの?皆様よろこんで予定を合わせてくださりそうだけど!

「なにか問題でもあるか?」

 心底不思議という顔をしているが目は笑っている。確信犯だ。公爵は普通に笑えないのか何なのか知らないけど、その意地の悪い笑みはやめた方が良いと思うのです。いくら顔が良くても一度は引かれますよ。ひとつ私からの助言です。助言と言いながら声に出してないですけどね。

「問題と言いますか、準備が良すぎませんか?」
「別に早くから準備していたわけではないぞ。ただ権力にものを言わせただけのことだ」
「そうですか。では明日までに荷物をまとめておけばよろしいのですね?」
「そうだ」

 建前のものとはいえ公爵だ。そういうことも可能だろう。ロードの家系の爵位は建前だが、それでも領地を守る義務はあるのでその領地が管理できなくなればそれなりの罰が待っているのだと思う。わたしがこんな好きになれなさそうな人と結婚してまで領地を守ろうとしているのは領主一族だからであり、ある人を安心させたいからでもある。あるいは解放してあげたいともいえるだろう。

 不器用ながらも影からわたしを守り続けてくれていた人を。まあ好きになれなさそうな人って言っても、顔は良いから(わたしは好きじゃないけど!)生理的な嫌悪感はないだけマシなのかな?

「分かりました。あ、それと前公爵様と公爵夫人はどちらに?嫁姑問題は遠慮願いたいですよ」
「領地の屋敷にいる。私たちが暮らすのは王都にある屋敷だからそこは気にしなくていい。婚姻の儀には急だから来ないはずだ。いずれ顔を合わせる時が来ると思うがその時はその時だと思ってくれ」
「嫁姑問題は?」

 肝心のそこは何も聞いていないのですが?ちょっとそこ!目を逸らさないでくださいよ!まさか…本当にそういう系のお母様だったりしないよね!?もうやだな、この人。良い関係を築けるのか今からすっごく不安なんですけど。

「冗談だ。大丈夫なはず…たぶんな?」
「断言してくださいよそこは!」
「遠慮がなくなったな。早くないか?」

 誰のせいですか誰の!あなたですよね!?社交界であなたの噂を広めましょうか?もちろん悪い方の。……そんなことしたら噂になるのはわたしの方だと思うけどね!

「それはさておき。実害はないと思う。さすがに実害があるようなら何とかするが嫌味くらいなら自分で何とかしろ。ロードならそういうのはお得意だろう?」
「どうでしょうね」

 ロードならって、わたしの役割知らないですよね?それを言うなら貴族なら、だと思うんだけどな。まあ良いけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

処理中です...