5 / 10
五(立花視点)
しおりを挟む
「あ、そうか口がふさがってたんだったね」
目を覚ますと給食室にいた。 体は縛り付けられ、 まな板の上に置かれていたのだ。 まな板は 何枚か重ねられていた。
「ここはあまり寝心地が良いとは言えないね」
「へーそんなこと言う余裕あるの」
板前は 感心した素振りで言った。
「注文はどれだけ来てる?」
彼女は奥へ声をかけた。
「大分きてるじゃないか」
それはつまり私を食べる 人間の量だろう。
「麻酔をかけてくれないの?」
「それだとまずくなっちまう」
彼女は それが当然だというように呟いた。巨大な刀を振り上げた。 そうして私へ 振り下ろした。 世界は暗転した。
「 停電かい?」
彼女の声が耳に入る。 地獄でも彼女と一緒にいなければならないのだろうか。
「 全く。 シャリが冷めるじゃないか」
彼女は文句を言いながら私の方から遠ざかっていった。 どうやら一流の寿司職人である彼女は私を殺すより、 米の温度の方が重要らしい。 私は今週の力を込めて身をおこし、 口で縄を切った。 幸いにも停電が起きていたため、 彼女には気づかれていないようだ。 私は縄を抜けて、 そろそろと出口に向かって歩いていった。 彼女はまた何やら文句を言いながら 炊飯器の様子を見ている。 廊下へ 出ようとドアを開けたところで、 ドアがあかないことに気づいた。 私は気づくべきだった先ほど彼女は誰かに話しかけていた。 もう一人部屋にいるのだ。
「 おーい、大丈夫ですかぁ?」
廊下から間の抜けた声が響いてきた。 副校長だ。 私は声を上げようとしたが、 もうひとりの何者かに 突き飛ばされた。 2人が慌てて部屋を出て行く物音がした。
「 ここです」
私は突き飛ばされて 床に打ち付けられた 衝撃に耐えながら、 声を出した。
「 ああよかった。 急に停電になったんで、 大丈夫かなと思いまして」
副校長は、懐中電灯で私を照らしてくれた。 彼に手を借りて、私は身を起こした。
「 さっき誰から電話があったんですか?」
「近隣の住民です。 小学校の 地価が浸水しているようだ。 だから様子を見に行ってくれって」
「 本当にこの事件を解決したいと思ってたら、私の言うことを直ちにやってください」
副校長は驚いて目を挙げた。 普段は穏やかな暮らしをしているのだろう。このようなものに慣れていないみたいだった。 しかし私は不愉快だった。 誰かに命を弄ばれ、 今まさに喰道楽たちの口に運ばれようとしていたのだ。
目を覚ますと給食室にいた。 体は縛り付けられ、 まな板の上に置かれていたのだ。 まな板は 何枚か重ねられていた。
「ここはあまり寝心地が良いとは言えないね」
「へーそんなこと言う余裕あるの」
板前は 感心した素振りで言った。
「注文はどれだけ来てる?」
彼女は奥へ声をかけた。
「大分きてるじゃないか」
それはつまり私を食べる 人間の量だろう。
「麻酔をかけてくれないの?」
「それだとまずくなっちまう」
彼女は それが当然だというように呟いた。巨大な刀を振り上げた。 そうして私へ 振り下ろした。 世界は暗転した。
「 停電かい?」
彼女の声が耳に入る。 地獄でも彼女と一緒にいなければならないのだろうか。
「 全く。 シャリが冷めるじゃないか」
彼女は文句を言いながら私の方から遠ざかっていった。 どうやら一流の寿司職人である彼女は私を殺すより、 米の温度の方が重要らしい。 私は今週の力を込めて身をおこし、 口で縄を切った。 幸いにも停電が起きていたため、 彼女には気づかれていないようだ。 私は縄を抜けて、 そろそろと出口に向かって歩いていった。 彼女はまた何やら文句を言いながら 炊飯器の様子を見ている。 廊下へ 出ようとドアを開けたところで、 ドアがあかないことに気づいた。 私は気づくべきだった先ほど彼女は誰かに話しかけていた。 もう一人部屋にいるのだ。
「 おーい、大丈夫ですかぁ?」
廊下から間の抜けた声が響いてきた。 副校長だ。 私は声を上げようとしたが、 もうひとりの何者かに 突き飛ばされた。 2人が慌てて部屋を出て行く物音がした。
「 ここです」
私は突き飛ばされて 床に打ち付けられた 衝撃に耐えながら、 声を出した。
「 ああよかった。 急に停電になったんで、 大丈夫かなと思いまして」
副校長は、懐中電灯で私を照らしてくれた。 彼に手を借りて、私は身を起こした。
「 さっき誰から電話があったんですか?」
「近隣の住民です。 小学校の 地価が浸水しているようだ。 だから様子を見に行ってくれって」
「 本当にこの事件を解決したいと思ってたら、私の言うことを直ちにやってください」
副校長は驚いて目を挙げた。 普段は穏やかな暮らしをしているのだろう。このようなものに慣れていないみたいだった。 しかし私は不愉快だった。 誰かに命を弄ばれ、 今まさに喰道楽たちの口に運ばれようとしていたのだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
箱庭アリス
二ノ宮明季
キャラ文芸
目を覚ますと、とても可愛らしい部屋に閉じ込められていた。
私には記憶がなく、目の前で私を「アリス」と語る男が何者なのかもわからない。
全てがわからないまま始まる日常は、思いもよらない方向へと進んでいく。
※グロテスクな表現があります。ご注意下さい。
全9話を予定しております。
『監禁アンソロジーpain 錯』に寄稿した作品を改稿したものです。
表紙イラストも私が描いております。
灰色彩度
黄永るり
キャラ文芸
中学生の深水紺乃は、ある日視界から一切の彩度を失ってしまう。
紺乃は自分の将来を憂いながらも、灰色の世界を惑い歩く。
「色染師」の喫茶ラムピリカ店主・深水紺乃の中学生時代の物語。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~
新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。
佐倉 かなた
長女の影響でエロゲを始める。
エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。
口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM
美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな
橋本 紗耶香
ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。
橋本 遥
ど天然。シャイ
ピュアピュア
高円寺希望
お嬢様
クール
桑畑 英梨
好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク
高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才
佐倉 ひより
かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。
仮面探偵は謎解きを好まない
結城絡繰
キャラ文芸
就活に失敗した藤波杏子は、探偵事務所の助手のアルバイトを見つける。
軽い気持ちで面接に赴いた彼女を待っていたのは、麻袋を被った異様なビジュアルの探偵だった。
なんだかんだで助手となった杏子は、傍若無人な仮面探偵に振り回されながらも事件解決を目指して奔走する――。
新米助手と奇人探偵がお送りする、連作中編ライトミステリー。
夢接ぎ少女は鳳凰帝の夢を守る
遠野まさみ
キャラ文芸
夢を見ることが出来なかった人に、その人が見る筈だった夢を見せることが出来る異能を持った千早は、夢を見れなくなった後宮の女御たちの夢を見させてみろと、帝に命令される。
無事、女御たちに夢を見せることが出来ると、帝は千早に夢に関する自らの秘密を話し・・・!?
死華は鳥籠の月を射堕す 〜ヤンデレに拾われた私は、偏愛の檻に閉じ込められる〜
鶴森はり
キャラ文芸
〈毎週水曜日、21時頃更新!〉
――裏社会が支配する羽無町。
退廃した町で何者かに狙われた陽野月音は、町を牛耳る二大組織の一つ「月花」の当主であり、名前に恥じぬ美しさを持った月花泰華により九死に一生を得る。
溺愛しつつも思惑を悟らせない泰華に不信感を抱きながらも「匿ってあげよう。その命、必ず俺が守る」という提案と甘美な優しさに絆されて、生き延びるため共に過ごすことになる。
だが、やがて徐々に明らかになる自分自身の問題と、二つの組織に亀裂を入れる悪が月音と町を飲み込でいく。
何故月音は命を狙われるのか、泰華は月音に執着して囲うのか。様々な謎は、ある一つの事件――とある「当主殺人未遂事件」へと繋がっていく。
「私は、生きなきゃいけない。死んでも殺しても生きる」
月音の矛盾した決意と泰華の美しくも歪んだ愛、バランスを崩し始めた町の行く末は破滅か、それとも――。
偏愛✕隠れヤンデレに囲われる、死と隣り合わせな危険すぎる同棲生活。
ほんのりミステリー風味のダークストーリー。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
反倫理的、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※カクヨムさま、小説家になろうさま、エブリスタさまにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる