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乙女ゲームの世界に転生しました
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目を覚ました。
見慣れた部屋、豪勢な自室だ。
ベッドから起き上がって、窓の外を見た。
そこには、美しい庭園と豪華な屋敷が広がっていた。
この世界に住んで、もう随分経つ。
でも、今でも時々不思議な感覚に襲われる。
それも当然だ。
私は元々、別の世界の人間だったからだ。
☆
私は生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた。
名前はレイナ・ベルモント。富豪の一人娘。
しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。
そんな運命を回避するために、王子達と遭遇しないように工夫していた。
イベントをスキップして、自分の家に引きこもっていた。
せっかくの金髪も青い目も白い肌も、深紅のドレスも、メイドにしか見られない。
そんな私にも、一つだけ希望があった。
向かいに住むモブだった。
☆
彼は私と同じくらいの年齢だった。
ゲームではほとんど登場しなかったが、前世でも彼のことが気になっていた。
濡れたような黒髪、大きな漆黒の瞳。彼はとてもかっこいい。
周りの人と話している様子から、優しくて、面白くて、魅力的なことが分かる。
私は時々、窓から覗いてみることがあった。
彼が気づいてくれるかもしれないと思って。
「おはようございます、お嬢様」
突然、声が聞こえた。
振り返ってみると、メイドのアンナが笑顔で立っていた。
「おはようございます、アンナ」
「今日もお元気そうで何よりです」
「今日は何か予定がありますか?」
「ええと……」
私は考え込んだ。特に予定はなかった。
「それなら、お散歩でもいかがですか?向かいのお屋敷に住む若様がお庭でお花を摘んでいますよ」
アンナは言って、窓を指さした。
窓から見てみると、本当にモブが庭で花を摘んでいた。
彼は白いシャツに黒いズボンというシンプルな服装だったが、
それが彼の色白な肌と黒髪を引き立てていた。
彼は花を一つ一つ丁寧に摘んで、バスケットに入れていた。
彼は時々顔を上げて、周りを見回していた。
その時、彼の目が私の方に向いた。
「あ……」
私は思わず声を漏らした。
彼も私に気づいて、目を見開いた。そして、彼は微笑んで手を振った。
「こんにちは」と彼は口パクで言った。
「こんにちは」と私も口パクで返した。
私達はしばらく窓越しに見つめ合った。
アンナが心配そうに言った。
「お嬢様、どうされましたか?お顔が赤いですよ」
「あ、いえ、何でもありません」
私は慌てて言った。
「それならよかったです。では、お散歩に行きましょうか」
アンナが私にコートを持ってきた。
全身を覆うコート。私だと王子達にバレないように。
「あー、外に出るの面倒だなー」
「だめです。せっかくの美しさも、日光に浴びなくては維持できませんよ」
私はアンナに押されて、玄関に向かった。
扉を開けようとすると、「号外だよ!」と外から声が聞こえた。
☆
「王子達が婚約した!しかも5人、全員だ!」
私は驚きと同時に、安堵した。
そしてコートを脱ぎ捨てた。
「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」
私は家を出て、全速力でモブに会いに行った。
モブの名前はローランという。
彼と仲良くなるのに、時間は必要なかった。
☆
数ヵ月が経過した。
私たちは互いの家を行き来しつつ、新たな人生を歩み始めていた。
ローランは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。
前世でもなかったほど、愛情に包まれた温かさと幸福感で満ち溢れていた。
ある日、私はアンナの部屋に入った。
野良猫が迷い込んでしまったのだ。
「え、日誌?しかもベッドの下?」
ベッドの下から、猫が日誌を加えて出て来た。
「ちょっと読んでみようかな……何々、え、アンナも転生してきたの!?」
彼女とは前世で親友だった、クラスメイト。
しかも、私を越える乙女ゲーム好きだった。
「あの子、ゲームの攻略本を書いてたけど、私には見せてくれなかったよねー」
出来心で、ベッドを覗く。
彼女によって書かれた、ゲームの攻略本があった。
「え、まじで?」
そこには、驚くべきことが書かれていた。
『当て馬の悪役令嬢レイナの向かいに住むモブは、最強の魔術師だった。ローランは王国の危機を救うべく、裏で暗躍していた。王子達の婚約者となったヒロインも、実は魔族のスパイだった。ヒロインは王子達を騙して魔族の手先にしようとしている。ローランは魔族と戦うべく、正体を隠して王国で過ごしている』
私は信じられなかった。
ローランが魔術師だなんて。モブだと思っていたのに。
「てか、裏ルートなんてあったの?」
じわじわと不安が襲う。
玄関のドアが開く音がして、私は慌てて部屋を出た。
☆
玄関で出迎えた私を、アンナは心配そうに見た。
「お嬢様、どうされましたか?お顔が青いですよ」
「な、何でもないわ」
「それならよかったです。では、お昼ご飯を用意しますね」
アンナは部屋へ入って行った。私は猫を撫でた。
ごろごろと喉を鳴らす音だけが、玄関に残された。
☆
何を食べたかも覚えていないまま、ローランの家へ向かった。
午後にお茶を飲む約束をしていたのだ。
「こんにちは。今日も綺麗だね」
テーブルに座ると、彼はネックレスを見せてくれた。
そして、嬉しそうに笑った。
「君のために作ったんだ。白い肌を引き立てるのに、似合うと思ってね」
「ありがとう。何てお礼を言えば良いのかしら」
「レイナの笑顔が見たくて、勝手にしたことだからね」
ローランは私の手を握った。
彼はいつも、私のことを愛してくれる。
「その割には、さみしそうな顔をしてるね?」
「……何か私に隠していることはない?」
完全な沈黙が、場を支配した。
彼は私の手を握って、優しく微笑んだ。
「ごめん、隠してるつもりはなかった。俺は魔術師なんだ」
彼はそう言って、私にキスをした。
「でも君のことを愛してる。これは嘘じゃない」」
私は彼に抱きついた。
彼は優しく受け止めて、頭を優しく撫でてくれた。
☆
あの日から、ローランは魔法を使うようになった。
最強の魔法使いと呼ばれるだけあって、彼に不可能はない。
何でも願いを叶えてくれた。
もちろん私の溺愛に変わりはない。
しかし、平穏な日々は長く続かなかった。
王子達が押し寄せてきたのだ。
☆
「レイナは俺の婚約者だ!」
「いえ、貴女は僕の初恋です!」
「ははは。彼女は私の運命ですよ?」
王子達は私に執着して、もう何時間も食堂で口論している。
騒ぎを聞きつけたローランが、家にやってきた。
「何だい、これは?」
「どうやら彼らは私に惚れていたらしいわ」
困惑する私と反対に、ローランは冷静だった。
「レイナは俺のものだ」
ローランは私を強く抱きしめた。
王子達が凍り付く。剣を抜こうとしている者もいる。
見せつけるように、ローランは私を抱きかかえた。
いわゆる、お姫様抱っこだ。
私たちは宙へ舞い上がり、
窓から、大空へと逃げ出した。
☆
しばらくローランに抱きかかえられて空を飛んだあと、
森で休むことになった。
「どうしてこんなことになってるの?」
「ごめん。俺が悪いんだ」
「どういうこと?」
「実は……」
ローランは深呼吸して、話し始めた。
「王子達の婚約者達は、実は魔族のスパイなんだ。彼女たちは王子達を騙して、魔族の手先にしようとしている」
「うん、知ってる」
「知ってる!?」
「あ、いや。でも、どうしてローランのせいなの?」
「俺が魔法で王子達にレイナへの興味を失わせたんだ。俺はレイナのことが、ずっと好きだった」
それは知らなかった。
婚約破棄ルートを脱出する鍵は、ローラントの接触だったらしい。
しかし私には、まだ分からないことがあった。
「どうして王子達が、また私に執着してるの?」
「魔法が解けたからだろうね。その反動で、彼らは君に熱を上げているんだ」
彼は続けた。
「ごめん。でも、俺は君のことを本当に愛している。君を手放したくない。だから、どうか、俺を許してくれ」
ローランは私の目を見た。
吸い込まれそうな青い瞳からは、彼の気持ちが伝わって来た。
彼は心から私を溺愛している。
結果として、魔族の女たちが婚約者になったけど、
王子達の目をそらしてくれたおかげで、私は生きている。
「分かったわ。私もローランが好き。許すも何も無いしね」
「本当かい?ありがとう。君は優しいな」
彼は微笑んだ。
あたたかく、深い笑みだった。
「でも、これからどうする?王子達は私達を追ってくるわよね」
「大丈夫だよ。俺が君を守るから。俺と一緒に着いてきてくれるかい?」
ローランが言って、私の手を引いた。
「あなたと一緒なら、どこでも」
その直後、私たちは光に包まれた。
☆
あの日から、私の日常は一変した。
ローランと共に向かったのは、なんと魔界だった。
「まるで裏ルート探求の旅ね」
「何か言ったかい?」
「いや、何でもないわ」
私たちは魔界の隅々まで探索した。
ローランが魔術師としての腕前を存分に発揮したからだ。
忌まわしき過去の謎や、魔界に秘められた真実を解き明かすため、
私たちは危険と向き合いながらも前に進んでいった。
☆
そして、辿り着いた場所で私たちを待ち受けていたものは―――
伝説の秘宝、「世界地図」だった。
全てを思いのままにできる、魔法の地図。
その力は世界を変えてしまうことになる。
かつて魔族と人間の間で、
これを巡って争いが起きたともいわれている。
「君が好きにして良いよ」
「じゃあ、最も平和になる道を選ぶわ」
「良いのかい?」
「ええ。ローランがいれば幸せ。あなたに何でももらえるしね」
レイナ・ベルモントが一番欲しいもの。
前提として、ありのままで生きていけること。
そして愛する人からの、溺愛だった。
☆
その後、私たちは人間界に平和をもたらした。
王子達との関係は修復され、互いに尊重し合うようになった。
王国の皆に祝福されながら、私はローランとの結婚を果たした。
二人の愛は永遠に続いた。
……これがクソゲーの真の結末である。
私たちの物語は、乙女ゲームの枠を超え、
永遠のロマンスファンタジーとして刻まれることとなったのだ。
次のページには、愛と勇気に満ちた新たな物語が待っている。
私たちの冒険はまだ終わらない。
私たちの愛も、彼からの溺愛も、永遠に続くのだろう。
見慣れた部屋、豪勢な自室だ。
ベッドから起き上がって、窓の外を見た。
そこには、美しい庭園と豪華な屋敷が広がっていた。
この世界に住んで、もう随分経つ。
でも、今でも時々不思議な感覚に襲われる。
それも当然だ。
私は元々、別の世界の人間だったからだ。
☆
私は生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた。
名前はレイナ・ベルモント。富豪の一人娘。
しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。
そんな運命を回避するために、王子達と遭遇しないように工夫していた。
イベントをスキップして、自分の家に引きこもっていた。
せっかくの金髪も青い目も白い肌も、深紅のドレスも、メイドにしか見られない。
そんな私にも、一つだけ希望があった。
向かいに住むモブだった。
☆
彼は私と同じくらいの年齢だった。
ゲームではほとんど登場しなかったが、前世でも彼のことが気になっていた。
濡れたような黒髪、大きな漆黒の瞳。彼はとてもかっこいい。
周りの人と話している様子から、優しくて、面白くて、魅力的なことが分かる。
私は時々、窓から覗いてみることがあった。
彼が気づいてくれるかもしれないと思って。
「おはようございます、お嬢様」
突然、声が聞こえた。
振り返ってみると、メイドのアンナが笑顔で立っていた。
「おはようございます、アンナ」
「今日もお元気そうで何よりです」
「今日は何か予定がありますか?」
「ええと……」
私は考え込んだ。特に予定はなかった。
「それなら、お散歩でもいかがですか?向かいのお屋敷に住む若様がお庭でお花を摘んでいますよ」
アンナは言って、窓を指さした。
窓から見てみると、本当にモブが庭で花を摘んでいた。
彼は白いシャツに黒いズボンというシンプルな服装だったが、
それが彼の色白な肌と黒髪を引き立てていた。
彼は花を一つ一つ丁寧に摘んで、バスケットに入れていた。
彼は時々顔を上げて、周りを見回していた。
その時、彼の目が私の方に向いた。
「あ……」
私は思わず声を漏らした。
彼も私に気づいて、目を見開いた。そして、彼は微笑んで手を振った。
「こんにちは」と彼は口パクで言った。
「こんにちは」と私も口パクで返した。
私達はしばらく窓越しに見つめ合った。
アンナが心配そうに言った。
「お嬢様、どうされましたか?お顔が赤いですよ」
「あ、いえ、何でもありません」
私は慌てて言った。
「それならよかったです。では、お散歩に行きましょうか」
アンナが私にコートを持ってきた。
全身を覆うコート。私だと王子達にバレないように。
「あー、外に出るの面倒だなー」
「だめです。せっかくの美しさも、日光に浴びなくては維持できませんよ」
私はアンナに押されて、玄関に向かった。
扉を開けようとすると、「号外だよ!」と外から声が聞こえた。
☆
「王子達が婚約した!しかも5人、全員だ!」
私は驚きと同時に、安堵した。
そしてコートを脱ぎ捨てた。
「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」
私は家を出て、全速力でモブに会いに行った。
モブの名前はローランという。
彼と仲良くなるのに、時間は必要なかった。
☆
数ヵ月が経過した。
私たちは互いの家を行き来しつつ、新たな人生を歩み始めていた。
ローランは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。
前世でもなかったほど、愛情に包まれた温かさと幸福感で満ち溢れていた。
ある日、私はアンナの部屋に入った。
野良猫が迷い込んでしまったのだ。
「え、日誌?しかもベッドの下?」
ベッドの下から、猫が日誌を加えて出て来た。
「ちょっと読んでみようかな……何々、え、アンナも転生してきたの!?」
彼女とは前世で親友だった、クラスメイト。
しかも、私を越える乙女ゲーム好きだった。
「あの子、ゲームの攻略本を書いてたけど、私には見せてくれなかったよねー」
出来心で、ベッドを覗く。
彼女によって書かれた、ゲームの攻略本があった。
「え、まじで?」
そこには、驚くべきことが書かれていた。
『当て馬の悪役令嬢レイナの向かいに住むモブは、最強の魔術師だった。ローランは王国の危機を救うべく、裏で暗躍していた。王子達の婚約者となったヒロインも、実は魔族のスパイだった。ヒロインは王子達を騙して魔族の手先にしようとしている。ローランは魔族と戦うべく、正体を隠して王国で過ごしている』
私は信じられなかった。
ローランが魔術師だなんて。モブだと思っていたのに。
「てか、裏ルートなんてあったの?」
じわじわと不安が襲う。
玄関のドアが開く音がして、私は慌てて部屋を出た。
☆
玄関で出迎えた私を、アンナは心配そうに見た。
「お嬢様、どうされましたか?お顔が青いですよ」
「な、何でもないわ」
「それならよかったです。では、お昼ご飯を用意しますね」
アンナは部屋へ入って行った。私は猫を撫でた。
ごろごろと喉を鳴らす音だけが、玄関に残された。
☆
何を食べたかも覚えていないまま、ローランの家へ向かった。
午後にお茶を飲む約束をしていたのだ。
「こんにちは。今日も綺麗だね」
テーブルに座ると、彼はネックレスを見せてくれた。
そして、嬉しそうに笑った。
「君のために作ったんだ。白い肌を引き立てるのに、似合うと思ってね」
「ありがとう。何てお礼を言えば良いのかしら」
「レイナの笑顔が見たくて、勝手にしたことだからね」
ローランは私の手を握った。
彼はいつも、私のことを愛してくれる。
「その割には、さみしそうな顔をしてるね?」
「……何か私に隠していることはない?」
完全な沈黙が、場を支配した。
彼は私の手を握って、優しく微笑んだ。
「ごめん、隠してるつもりはなかった。俺は魔術師なんだ」
彼はそう言って、私にキスをした。
「でも君のことを愛してる。これは嘘じゃない」」
私は彼に抱きついた。
彼は優しく受け止めて、頭を優しく撫でてくれた。
☆
あの日から、ローランは魔法を使うようになった。
最強の魔法使いと呼ばれるだけあって、彼に不可能はない。
何でも願いを叶えてくれた。
もちろん私の溺愛に変わりはない。
しかし、平穏な日々は長く続かなかった。
王子達が押し寄せてきたのだ。
☆
「レイナは俺の婚約者だ!」
「いえ、貴女は僕の初恋です!」
「ははは。彼女は私の運命ですよ?」
王子達は私に執着して、もう何時間も食堂で口論している。
騒ぎを聞きつけたローランが、家にやってきた。
「何だい、これは?」
「どうやら彼らは私に惚れていたらしいわ」
困惑する私と反対に、ローランは冷静だった。
「レイナは俺のものだ」
ローランは私を強く抱きしめた。
王子達が凍り付く。剣を抜こうとしている者もいる。
見せつけるように、ローランは私を抱きかかえた。
いわゆる、お姫様抱っこだ。
私たちは宙へ舞い上がり、
窓から、大空へと逃げ出した。
☆
しばらくローランに抱きかかえられて空を飛んだあと、
森で休むことになった。
「どうしてこんなことになってるの?」
「ごめん。俺が悪いんだ」
「どういうこと?」
「実は……」
ローランは深呼吸して、話し始めた。
「王子達の婚約者達は、実は魔族のスパイなんだ。彼女たちは王子達を騙して、魔族の手先にしようとしている」
「うん、知ってる」
「知ってる!?」
「あ、いや。でも、どうしてローランのせいなの?」
「俺が魔法で王子達にレイナへの興味を失わせたんだ。俺はレイナのことが、ずっと好きだった」
それは知らなかった。
婚約破棄ルートを脱出する鍵は、ローラントの接触だったらしい。
しかし私には、まだ分からないことがあった。
「どうして王子達が、また私に執着してるの?」
「魔法が解けたからだろうね。その反動で、彼らは君に熱を上げているんだ」
彼は続けた。
「ごめん。でも、俺は君のことを本当に愛している。君を手放したくない。だから、どうか、俺を許してくれ」
ローランは私の目を見た。
吸い込まれそうな青い瞳からは、彼の気持ちが伝わって来た。
彼は心から私を溺愛している。
結果として、魔族の女たちが婚約者になったけど、
王子達の目をそらしてくれたおかげで、私は生きている。
「分かったわ。私もローランが好き。許すも何も無いしね」
「本当かい?ありがとう。君は優しいな」
彼は微笑んだ。
あたたかく、深い笑みだった。
「でも、これからどうする?王子達は私達を追ってくるわよね」
「大丈夫だよ。俺が君を守るから。俺と一緒に着いてきてくれるかい?」
ローランが言って、私の手を引いた。
「あなたと一緒なら、どこでも」
その直後、私たちは光に包まれた。
☆
あの日から、私の日常は一変した。
ローランと共に向かったのは、なんと魔界だった。
「まるで裏ルート探求の旅ね」
「何か言ったかい?」
「いや、何でもないわ」
私たちは魔界の隅々まで探索した。
ローランが魔術師としての腕前を存分に発揮したからだ。
忌まわしき過去の謎や、魔界に秘められた真実を解き明かすため、
私たちは危険と向き合いながらも前に進んでいった。
☆
そして、辿り着いた場所で私たちを待ち受けていたものは―――
伝説の秘宝、「世界地図」だった。
全てを思いのままにできる、魔法の地図。
その力は世界を変えてしまうことになる。
かつて魔族と人間の間で、
これを巡って争いが起きたともいわれている。
「君が好きにして良いよ」
「じゃあ、最も平和になる道を選ぶわ」
「良いのかい?」
「ええ。ローランがいれば幸せ。あなたに何でももらえるしね」
レイナ・ベルモントが一番欲しいもの。
前提として、ありのままで生きていけること。
そして愛する人からの、溺愛だった。
☆
その後、私たちは人間界に平和をもたらした。
王子達との関係は修復され、互いに尊重し合うようになった。
王国の皆に祝福されながら、私はローランとの結婚を果たした。
二人の愛は永遠に続いた。
……これがクソゲーの真の結末である。
私たちの物語は、乙女ゲームの枠を超え、
永遠のロマンスファンタジーとして刻まれることとなったのだ。
次のページには、愛と勇気に満ちた新たな物語が待っている。
私たちの冒険はまだ終わらない。
私たちの愛も、彼からの溺愛も、永遠に続くのだろう。
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