13 / 16
第二幕 惑星アルメラードにて
└11-1【アルフリードルート】2日目:自由行動
しおりを挟む
「俺はアルさんに付いて行くよ。岩の部族のことは俺も気になっていたし」
そう口にすると、アルフリードは渋い顔をして振り返った。
「やめとけ、足手纏いになるだけだ。大事な坊ちゃんに傷でも付けたら、親父さんに顔向けも出来ねえ」
「また子供扱いですか、アルさん。俺はキャップとしてここに来ているんです。俺が必要だと思うから行く。あなたはそれを補佐する義務があるはずだ」
「……減らず口ばっかり上手くなりやがって」
それでもレイレンを同行させることには反対するアルフリードだったが、レイレンにとっては思わぬところから援護射撃が届いた。
「アルフリード、観念なさい。我々のキャプテンはレイレンです」
「しかし、伽乱……そうは言ってもだな」
「馬鹿面下げてはいますがこれはこれで考えることは考えている生物ですから、連れて行ってまったくの無駄にはならないでしょう」
言い方に棘はあるが、言っていることはレイレンの意を汲んでいる。ぐう、と呻いた後、アルフリードは諦めたようにばりばりと頭を掻いて二人に背を向けた。
「解った解かった。その代わり、俺から絶対に離れるんじゃねえぞ。イイな、坊ちゃん?」
「了解、ありがとうアルさん!」
***
フォルニスの調査によると、岩の部族の縄張りは草原の部族の集落から北方に広がっている。集落間は距離にして100km程度しか離れていない。バギーならば安全運転で3時間もかからない距離だ。
しかし、豊かな緑が広がり開墾に適した平原に位置する草原の部族の領土と比べ、深い森と山河に囲まれた岩の部族の土地は、狩猟はともかく農耕に適しているとは言い難い。安定した食料の供給を求めて、彼等が平野の土地を欲しがるのは至極当然のことなのかもしれない。
それはともかくとして、岩の部族の拠点にあたる集落の立地条件は、忍び込む側にとってみればこれ以上無いほど面倒なものだった。手前には鬱蒼と生い茂る森、凶暴な獣の侵入を遮る為の数々の罠、裏手には絶壁の崖。まるで自然の要塞といっていい。
悩んだ末、レイレンとアルフリードは集落の裏手にある崖から侵入を試みることにした。
「坊ちゃん、そこは駄目だ。ほら、危ないからこっち来い」
「だ、大丈夫ですって! これくらい俺一人で……っと、うわっ……」
足を踏み外しかけて慌てるレイレンの腰を咄嗟にアルフリードが捕らえる。
「ちっ……ほら、言わんこっちゃねえ。楽しくハイキングに来てるわけじゃねえんだから、意地張らず人の忠告を聞くんだ」
「……わ、わかりました。ごめんなさい」
「足場に気をつけてな。そこは崩れ易くなってる、危ないと思ったら迷わず命綱を掴め。イイな?」
粗野ながらどことなく優しい言葉をかけられて、レイレンは素直に頷く。ここで彼に逆らってもいいことは何もない。谷底から吹き上がってくる冷たい風につい下を見て、ごくり、息を飲む。
「それにしてもすごい崖ですね。落ちたら痛そうだな」
「スーツのシールドと重力制御が効いてりゃ死ぬこたねえだろうけど、まあ痛いだろうな。とはいえ最悪、岩の部族の奴等に見付かったらここから身投げだ。覚悟はしとけよ」
「うっ……了解……」
あまりにぞっとしない想像にレイレンは祈るように十字を切る。イルジニアにいた頃はスポーツとしてボルダリングを楽しんだこともあるが、まさか自分がこんなスパイ染みたことをするとは想像だにしなかった。こんなことならもっとダブルオー映画を見ておくべきだったかもしれないと独り言ちる。
じりじりと進んだ先、ほぼ集落の最奥に当たる崖の裏手まで入り込むと、アルフリードはツールバッグからシューターを取り出すと崖上に向けてストリングを射出した。グイ、とそれを引いて強度を確認してからレイレンを振り返る。
「よし、俺は先に出て様子を見てくるから、ちょっと待ってな」
神妙に頷くレイレンに目配せを返して、彼はするするとストリングを辿り崖を登っていく。安全を確認した後、軽くストリングを引いてレイレンにも同じように登攀を促した。
落ちても大丈夫、落ちても大丈夫、と自分に言い聞かせながらレイレンはおっかなびっくり、彼を真似て崖を上がる。アルフリードの姿は野生の獣のようだったのに、自分のあまりのへっぴり腰が情けない。それでも漸う安全な広場に辿り着くと、レイレンはその場にへたりこんだ。
「……ふう」
「こらこら、何一息ついてんだ」
こっからが本番だろうが、と呆れ顔を見せつつアルフリードはレイレンの呼吸が整うのを待つ。その間に周辺のマップを手元のデジタルスクリーンに映し出すと、現在地を確認した。
「見たところ、そこのでかい建物が集会所になってるようだな。中にカメラを仕込んでくる。坊ちゃんはいい子でお留守番だ」
「わ、わかりました」
幼稚園児のような返事に彼は少し笑って、夕闇の濃い影に身を隠しながら大きな建物の方に歩き出した。
レイレンもデジタルスクリーンを開き、アルフリードの持つカメラにチャンネルを合わせる。ジジ、ジジジ、と鈍い音と砂嵐が続いた後、そこにはクリアな映像が映し出された。
そこでは初日に出会った虎面の男――ガーマが岩の玉座に不遜に座している。
『……では、使者はもう出たということだな。会合場所の周辺には手練を控えさせておけ。奴等も丸腰では来んだろうが、囲い込んでしまえばこちらのもの。後は煮るなり焼くなりだ。楽しみなことだな』
ガーマの周りには戦装束を纏った男達が並んでいた。その内、テナガザルのような風貌の男がにやにやと厭らしく笑いながら己の顎を撫でる。
『流石ですな、ガーマ様。あのリビオも年貢の納め時。そろそろ一泡吹いてもらいましょう』
『あの”仲間思い”の小童のこと、まさか自分の集落の中に俺の手のものが入り込んでるとは思うまいよ。密偵どもには、草原の部族の集落に火を掛けた後は、女子供は捕らえ老人は殺せと伝えておけ』
「……聞こえたか?」
いつの間にか戻っていたアルフリードが囁く。
「聞こえた」
「さて、我らが大将はどうするね?」
これを聞いてレイレンが黙っていられないことは百も承知の上、アルフリードは問いかけてきた。
――ここで草原の部族に肩入れしてしまえば、もう引き下がれない。他の部族との交渉の余地もなくなってしまう。今ここで自分がそれを決めてしまって、いいのか?本当にそれでいいのか?
レイレンは深呼吸ひとつ、はっきりと頷く。
「このことを草原の部族に伝えます」
「仕方ねえな、坊ちゃんのお節介は親父さん似だ。……だが、そういうところは嫌いじゃねえよ」
すぐに<アンビシオン>通信回線を開く。だが何が悪いのか、コールはすぐに繋がらなかった。ビープ音ばかりが続き、それを受信する気配がない。やがてそれにジジ、ジジ、と怪しい音が混ざるようになり、やがて通信は切断された。
予想しなかった挙動に、二人は顔を見合わせる。
「……なんだ?通信が妨害されてる?」
「まさか。この星にそんな技術はないよ」
「じゃなかったらこの辺りに電波を阻害する未確認の鉱石でもあるのかもしらん。参ったな……とにかく一旦バギーに戻ろう」
バギーを飛ばせば2時間もかからないだろう。回線の不具合には不安が残るが、少なくとも騎馬か徒歩進軍を基本とする岩の部族の動きには先んじることができる。
急いで戻ろうと踵を返す。それほど時間は経過していないというのに、薄暗さが増して足元が見辛い。大きなもの音を立てないよう慎重に進む。
だがその時、切り忘れていた通信機に届く声があった。先ほど仕掛けたカメラからの音声だ。
『ガーマ様!崖の方に侵入者の形跡があります!』
『何?あの崖から侵入者だと?馬鹿を言え、そんな無謀な真似をする奴がいるか?まぁいい……念の為、崖の方に警備兵を出せ。ちゃちなネズミなら崖下に追い落としてしまえ』
「ヤバいな。急げよ、坊ちゃん。奴等が来る。
「そう……急かされると、足元がっ……」
足場の悪い崖の上、慌てれば慌てるほど足が竦む。しかしぐずぐずとしていられる暇はなかった。
「おい、あそこに人がいるぞ!侵入者だ!」
警笛と共に荒々しい足音が近付いてくる。風を切った矢が、ひゅん、と近くに落ちた。
「見付かったッ……くそ、坊ちゃんシールド入れろ!重力制御もだ!崖に飛び込むぞ!」
「えっ……?っあ、うわああああああああああ!?」
腕を引かれ、容赦なく体が宙に踊る。スーツに搭載された重力制御装置のおかげで、それは斜面をパラシュートで緩やかに滑り落ちる程度のスピードで、シールドがあれば多少の衝撃には耐えられると解ってはいたものの、断崖絶壁を降下していくには多大な勇気を必要とした。
そんな中で不意にアルフリードの腕が伸ばされ、レイレンを守るように抱き締める。同時に二人の顔の真横を鋭い矢尻が通り過ぎた。上から射掛けられているのだと気付く。
しかしこんな原始的な武器、彼等にとっては恐れるものではない。何も問題はない、はずなのに――
「なっ、んで……血が出てるんだよ、アルさん……?なんで……!?」
「大丈夫だ、坊ちゃん。良い子だから黙ってろ」
腕を回した彼の背に触れる。そこには深々と刺さったシャフトがあった。アルフリードの腕は驚きと困惑に震えるレイレンを抑え込むように、抱き締めたまま離さない。
そして二人は、暗い川の濁流の中に飲み込まれていった。
そう口にすると、アルフリードは渋い顔をして振り返った。
「やめとけ、足手纏いになるだけだ。大事な坊ちゃんに傷でも付けたら、親父さんに顔向けも出来ねえ」
「また子供扱いですか、アルさん。俺はキャップとしてここに来ているんです。俺が必要だと思うから行く。あなたはそれを補佐する義務があるはずだ」
「……減らず口ばっかり上手くなりやがって」
それでもレイレンを同行させることには反対するアルフリードだったが、レイレンにとっては思わぬところから援護射撃が届いた。
「アルフリード、観念なさい。我々のキャプテンはレイレンです」
「しかし、伽乱……そうは言ってもだな」
「馬鹿面下げてはいますがこれはこれで考えることは考えている生物ですから、連れて行ってまったくの無駄にはならないでしょう」
言い方に棘はあるが、言っていることはレイレンの意を汲んでいる。ぐう、と呻いた後、アルフリードは諦めたようにばりばりと頭を掻いて二人に背を向けた。
「解った解かった。その代わり、俺から絶対に離れるんじゃねえぞ。イイな、坊ちゃん?」
「了解、ありがとうアルさん!」
***
フォルニスの調査によると、岩の部族の縄張りは草原の部族の集落から北方に広がっている。集落間は距離にして100km程度しか離れていない。バギーならば安全運転で3時間もかからない距離だ。
しかし、豊かな緑が広がり開墾に適した平原に位置する草原の部族の領土と比べ、深い森と山河に囲まれた岩の部族の土地は、狩猟はともかく農耕に適しているとは言い難い。安定した食料の供給を求めて、彼等が平野の土地を欲しがるのは至極当然のことなのかもしれない。
それはともかくとして、岩の部族の拠点にあたる集落の立地条件は、忍び込む側にとってみればこれ以上無いほど面倒なものだった。手前には鬱蒼と生い茂る森、凶暴な獣の侵入を遮る為の数々の罠、裏手には絶壁の崖。まるで自然の要塞といっていい。
悩んだ末、レイレンとアルフリードは集落の裏手にある崖から侵入を試みることにした。
「坊ちゃん、そこは駄目だ。ほら、危ないからこっち来い」
「だ、大丈夫ですって! これくらい俺一人で……っと、うわっ……」
足を踏み外しかけて慌てるレイレンの腰を咄嗟にアルフリードが捕らえる。
「ちっ……ほら、言わんこっちゃねえ。楽しくハイキングに来てるわけじゃねえんだから、意地張らず人の忠告を聞くんだ」
「……わ、わかりました。ごめんなさい」
「足場に気をつけてな。そこは崩れ易くなってる、危ないと思ったら迷わず命綱を掴め。イイな?」
粗野ながらどことなく優しい言葉をかけられて、レイレンは素直に頷く。ここで彼に逆らってもいいことは何もない。谷底から吹き上がってくる冷たい風につい下を見て、ごくり、息を飲む。
「それにしてもすごい崖ですね。落ちたら痛そうだな」
「スーツのシールドと重力制御が効いてりゃ死ぬこたねえだろうけど、まあ痛いだろうな。とはいえ最悪、岩の部族の奴等に見付かったらここから身投げだ。覚悟はしとけよ」
「うっ……了解……」
あまりにぞっとしない想像にレイレンは祈るように十字を切る。イルジニアにいた頃はスポーツとしてボルダリングを楽しんだこともあるが、まさか自分がこんなスパイ染みたことをするとは想像だにしなかった。こんなことならもっとダブルオー映画を見ておくべきだったかもしれないと独り言ちる。
じりじりと進んだ先、ほぼ集落の最奥に当たる崖の裏手まで入り込むと、アルフリードはツールバッグからシューターを取り出すと崖上に向けてストリングを射出した。グイ、とそれを引いて強度を確認してからレイレンを振り返る。
「よし、俺は先に出て様子を見てくるから、ちょっと待ってな」
神妙に頷くレイレンに目配せを返して、彼はするするとストリングを辿り崖を登っていく。安全を確認した後、軽くストリングを引いてレイレンにも同じように登攀を促した。
落ちても大丈夫、落ちても大丈夫、と自分に言い聞かせながらレイレンはおっかなびっくり、彼を真似て崖を上がる。アルフリードの姿は野生の獣のようだったのに、自分のあまりのへっぴり腰が情けない。それでも漸う安全な広場に辿り着くと、レイレンはその場にへたりこんだ。
「……ふう」
「こらこら、何一息ついてんだ」
こっからが本番だろうが、と呆れ顔を見せつつアルフリードはレイレンの呼吸が整うのを待つ。その間に周辺のマップを手元のデジタルスクリーンに映し出すと、現在地を確認した。
「見たところ、そこのでかい建物が集会所になってるようだな。中にカメラを仕込んでくる。坊ちゃんはいい子でお留守番だ」
「わ、わかりました」
幼稚園児のような返事に彼は少し笑って、夕闇の濃い影に身を隠しながら大きな建物の方に歩き出した。
レイレンもデジタルスクリーンを開き、アルフリードの持つカメラにチャンネルを合わせる。ジジ、ジジジ、と鈍い音と砂嵐が続いた後、そこにはクリアな映像が映し出された。
そこでは初日に出会った虎面の男――ガーマが岩の玉座に不遜に座している。
『……では、使者はもう出たということだな。会合場所の周辺には手練を控えさせておけ。奴等も丸腰では来んだろうが、囲い込んでしまえばこちらのもの。後は煮るなり焼くなりだ。楽しみなことだな』
ガーマの周りには戦装束を纏った男達が並んでいた。その内、テナガザルのような風貌の男がにやにやと厭らしく笑いながら己の顎を撫でる。
『流石ですな、ガーマ様。あのリビオも年貢の納め時。そろそろ一泡吹いてもらいましょう』
『あの”仲間思い”の小童のこと、まさか自分の集落の中に俺の手のものが入り込んでるとは思うまいよ。密偵どもには、草原の部族の集落に火を掛けた後は、女子供は捕らえ老人は殺せと伝えておけ』
「……聞こえたか?」
いつの間にか戻っていたアルフリードが囁く。
「聞こえた」
「さて、我らが大将はどうするね?」
これを聞いてレイレンが黙っていられないことは百も承知の上、アルフリードは問いかけてきた。
――ここで草原の部族に肩入れしてしまえば、もう引き下がれない。他の部族との交渉の余地もなくなってしまう。今ここで自分がそれを決めてしまって、いいのか?本当にそれでいいのか?
レイレンは深呼吸ひとつ、はっきりと頷く。
「このことを草原の部族に伝えます」
「仕方ねえな、坊ちゃんのお節介は親父さん似だ。……だが、そういうところは嫌いじゃねえよ」
すぐに<アンビシオン>通信回線を開く。だが何が悪いのか、コールはすぐに繋がらなかった。ビープ音ばかりが続き、それを受信する気配がない。やがてそれにジジ、ジジ、と怪しい音が混ざるようになり、やがて通信は切断された。
予想しなかった挙動に、二人は顔を見合わせる。
「……なんだ?通信が妨害されてる?」
「まさか。この星にそんな技術はないよ」
「じゃなかったらこの辺りに電波を阻害する未確認の鉱石でもあるのかもしらん。参ったな……とにかく一旦バギーに戻ろう」
バギーを飛ばせば2時間もかからないだろう。回線の不具合には不安が残るが、少なくとも騎馬か徒歩進軍を基本とする岩の部族の動きには先んじることができる。
急いで戻ろうと踵を返す。それほど時間は経過していないというのに、薄暗さが増して足元が見辛い。大きなもの音を立てないよう慎重に進む。
だがその時、切り忘れていた通信機に届く声があった。先ほど仕掛けたカメラからの音声だ。
『ガーマ様!崖の方に侵入者の形跡があります!』
『何?あの崖から侵入者だと?馬鹿を言え、そんな無謀な真似をする奴がいるか?まぁいい……念の為、崖の方に警備兵を出せ。ちゃちなネズミなら崖下に追い落としてしまえ』
「ヤバいな。急げよ、坊ちゃん。奴等が来る。
「そう……急かされると、足元がっ……」
足場の悪い崖の上、慌てれば慌てるほど足が竦む。しかしぐずぐずとしていられる暇はなかった。
「おい、あそこに人がいるぞ!侵入者だ!」
警笛と共に荒々しい足音が近付いてくる。風を切った矢が、ひゅん、と近くに落ちた。
「見付かったッ……くそ、坊ちゃんシールド入れろ!重力制御もだ!崖に飛び込むぞ!」
「えっ……?っあ、うわああああああああああ!?」
腕を引かれ、容赦なく体が宙に踊る。スーツに搭載された重力制御装置のおかげで、それは斜面をパラシュートで緩やかに滑り落ちる程度のスピードで、シールドがあれば多少の衝撃には耐えられると解ってはいたものの、断崖絶壁を降下していくには多大な勇気を必要とした。
そんな中で不意にアルフリードの腕が伸ばされ、レイレンを守るように抱き締める。同時に二人の顔の真横を鋭い矢尻が通り過ぎた。上から射掛けられているのだと気付く。
しかしこんな原始的な武器、彼等にとっては恐れるものではない。何も問題はない、はずなのに――
「なっ、んで……血が出てるんだよ、アルさん……?なんで……!?」
「大丈夫だ、坊ちゃん。良い子だから黙ってろ」
腕を回した彼の背に触れる。そこには深々と刺さったシャフトがあった。アルフリードの腕は驚きと困惑に震えるレイレンを抑え込むように、抱き締めたまま離さない。
そして二人は、暗い川の濁流の中に飲み込まれていった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
騎士団長、狼王の花嫁になるーー拾った子犬はワーウルフの王子でした
鳥海あおい
BL
騎士団長だったグレンは家族と故郷をなくし絶望したところに子犬を拾う。
ブルーと名付けた子犬を生きるよすがに田舎で再生活をはじめるが、ブルーは実は犬ではなかった。
ある日、ブルーを探して屈強な男達がやってくる。
ブルーはワーウルフの王の息子で、誘拐されたのだと告げられる。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる