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最終章 白雪姫
146話 再びお城へ
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次の日の朝、身支度を終えたグリムたちは昨日訪れたお城を目指した。
結果から告げるのならサンドリオンとローズと相まみえた。
彼女たちに会うまでグリム達はおおきな勘違いをしていたことを知ることになる。
◇◇
「いったいどうなっている」
空を見上げてグリムはそう言った。グリムの疑問はすぐに同行している二人に伝わった。彼らも空を見上げて眉をひそめた。
「明らかに灰色の雪の降る速度が速まっているな」
銀髪の騎士も同意する。
「下を見てみろ」
小人の言葉を聞いて今度は地面を見る。昨日までは灰色の雪は地面に落ちてもすぐに溶けるように消えていた、それが今日はすでに積もり始めていた。
「物語がさらに悪化しているとでもいうのか」
「急ごう……」
これ以上この世界の住人から被害を出すわけにはいかないと思ったグリムは先導を切って城を目指した。
◇
城につくと城門前に昨日までいたはずの兵士たちの姿はどこにもなかった。
「見張りがいないのはおかしい」
最初に口を開いたのは白色帽子の小人だった。どうやら白色帽子の小人は定期的にお城に訪れては城の整備にもかかわっていたらしく、これまで一日たりとも兵士が警備を怠っていた日はなかったそうだ。
「誰もいないならそのまま進ませてもらう」
グリム達は城門を越えて城の中に入る。しかし、城の中にも兵士以前に人が一人もいなかった。
「いったいどうなっている」
それはここに来る道中でもグリムが口にした言葉だった。門番だけでなくこの城の中に誰も人がいないという異常事態にグリムは困惑する。
「王様なら……」
グリムの呟きに合わせて3人は階段を駆け上がり玉座の間を目指す。王様のいる部屋の前にたどり着くまで結局誰ともすれ違うことはなかった。
考えるまもなくグリムは玉座の間の扉を開ける。そこには王様と王妃が座っているはずの椅子には誰も座っていなかった。
「王様達まで……」
「考えたくないが、灰色の雪の降る速度を考慮するなら……」
白色帽子の小人はそれ以上何も言わなかったが銀髪の騎士とグリムは彼が何を言いたいのか察知する。
この城にいたはずの人間は全員「焼失」してしまったのだ。
「いくらなんでも急過ぎる……」
「だが、それ以外に考えられるか」
小人はグリムに口論する。昨夜小人のうち一人が焼失してしまった。その事態からもあり得ない話ではなかった。
「……真実を教えてあげましょうか」
突然玉座の前に立ち尽くしていた3人の背後から声が聞こえてくる。振り返ると玉座の間の扉の場所に細柄の騎士が立っていた。
「ローズ!」
グリムは彼の名前を叫んだ。この城に訪れた目的である当の本人が姿を現すとは思っていなかった。
「あなたも来ていたのですか……まぁいいでしょう」
細柄な騎士はグリムと同行していた銀髪の騎士を見て一瞥すると再び口を開いた。
「城の庭園に繋がる東の回廊で待っていますよ」
「待て!」
グリムはローズを追いかけようと体制を変えて走り出そうとするが腹部が痛みその場にとどまってしまう。ローズはそれだけ言うとすぐにその場から姿を消した。
「無理をするな、お前は昨日のケガが治ってはいないんだ」
小人は片膝ついたグリムの肩をたたく。グリムは深く息を吐いて痛みを無視するように立ち上がって走り始めた。
「あいつがいった場所がどこか分かるのか」
「俺が生まれ育った世界に構造が似ているからな」
後から続く銀髪の騎士からの質問にグリムは即答する。案の定、城の中までつくりはグリムの記憶の中の白雪姫の世界と酷似していた。これなら迷うことはない、そう思った矢先だった。
「そっちじゃない」
白色帽子の小人が声を上げてグリムに話しかけてくる。
「その先はいきどまりだ……東の回廊に出るには一度西側から回らないとたどり着けない」
「そんなはずは……」
ないと言いかけたが小人の言った通り、グリムの記憶では階段のあったはずの場所には壁しかなかった。
これまで以前の白雪姫の世界とすべてが同じように思えたこの世界でも異なる場所があることをグリムはそこで初めて経験した。
「ついてこい」
一番後ろを走っていた小人を先頭にする形で走り続ける。いくら似ている世界といっても生まれ育った世界とこの場所は別物だと再認識させられる。
小人の後を追って数分後にようやくグリム達はローズが指定した場所にたどり着いた。
「来ましたか……」
ローズは外壁に腰を掛けて座っていたがグリム達を見るとゆっくりと立ち上がった。
「答えろ、この城の人々をどこへやった、なぜサンドリオンは俺を襲う、マロリーはどこにいる!」
「おやおや……随分と質問が多いですね」
その笑みは相手を嘲笑するように感じ取れた。
「一つ目の問いは……もうあなた方も想像がついているでしょう」
ローズは両手を天に仰ぎながらそう言った。グリム達が想像する最悪の形を示していた。
「二つ目の問いにも答えを示してあげましょうか……」
そういうとローズは横にずれる。彼がいたはずの背後にはいつのまにか黒髪の女性が立っていた。
それは見間違うはずもない、サンドリオンだった。
結果から告げるのならサンドリオンとローズと相まみえた。
彼女たちに会うまでグリム達はおおきな勘違いをしていたことを知ることになる。
◇◇
「いったいどうなっている」
空を見上げてグリムはそう言った。グリムの疑問はすぐに同行している二人に伝わった。彼らも空を見上げて眉をひそめた。
「明らかに灰色の雪の降る速度が速まっているな」
銀髪の騎士も同意する。
「下を見てみろ」
小人の言葉を聞いて今度は地面を見る。昨日までは灰色の雪は地面に落ちてもすぐに溶けるように消えていた、それが今日はすでに積もり始めていた。
「物語がさらに悪化しているとでもいうのか」
「急ごう……」
これ以上この世界の住人から被害を出すわけにはいかないと思ったグリムは先導を切って城を目指した。
◇
城につくと城門前に昨日までいたはずの兵士たちの姿はどこにもなかった。
「見張りがいないのはおかしい」
最初に口を開いたのは白色帽子の小人だった。どうやら白色帽子の小人は定期的にお城に訪れては城の整備にもかかわっていたらしく、これまで一日たりとも兵士が警備を怠っていた日はなかったそうだ。
「誰もいないならそのまま進ませてもらう」
グリム達は城門を越えて城の中に入る。しかし、城の中にも兵士以前に人が一人もいなかった。
「いったいどうなっている」
それはここに来る道中でもグリムが口にした言葉だった。門番だけでなくこの城の中に誰も人がいないという異常事態にグリムは困惑する。
「王様なら……」
グリムの呟きに合わせて3人は階段を駆け上がり玉座の間を目指す。王様のいる部屋の前にたどり着くまで結局誰ともすれ違うことはなかった。
考えるまもなくグリムは玉座の間の扉を開ける。そこには王様と王妃が座っているはずの椅子には誰も座っていなかった。
「王様達まで……」
「考えたくないが、灰色の雪の降る速度を考慮するなら……」
白色帽子の小人はそれ以上何も言わなかったが銀髪の騎士とグリムは彼が何を言いたいのか察知する。
この城にいたはずの人間は全員「焼失」してしまったのだ。
「いくらなんでも急過ぎる……」
「だが、それ以外に考えられるか」
小人はグリムに口論する。昨夜小人のうち一人が焼失してしまった。その事態からもあり得ない話ではなかった。
「……真実を教えてあげましょうか」
突然玉座の前に立ち尽くしていた3人の背後から声が聞こえてくる。振り返ると玉座の間の扉の場所に細柄の騎士が立っていた。
「ローズ!」
グリムは彼の名前を叫んだ。この城に訪れた目的である当の本人が姿を現すとは思っていなかった。
「あなたも来ていたのですか……まぁいいでしょう」
細柄な騎士はグリムと同行していた銀髪の騎士を見て一瞥すると再び口を開いた。
「城の庭園に繋がる東の回廊で待っていますよ」
「待て!」
グリムはローズを追いかけようと体制を変えて走り出そうとするが腹部が痛みその場にとどまってしまう。ローズはそれだけ言うとすぐにその場から姿を消した。
「無理をするな、お前は昨日のケガが治ってはいないんだ」
小人は片膝ついたグリムの肩をたたく。グリムは深く息を吐いて痛みを無視するように立ち上がって走り始めた。
「あいつがいった場所がどこか分かるのか」
「俺が生まれ育った世界に構造が似ているからな」
後から続く銀髪の騎士からの質問にグリムは即答する。案の定、城の中までつくりはグリムの記憶の中の白雪姫の世界と酷似していた。これなら迷うことはない、そう思った矢先だった。
「そっちじゃない」
白色帽子の小人が声を上げてグリムに話しかけてくる。
「その先はいきどまりだ……東の回廊に出るには一度西側から回らないとたどり着けない」
「そんなはずは……」
ないと言いかけたが小人の言った通り、グリムの記憶では階段のあったはずの場所には壁しかなかった。
これまで以前の白雪姫の世界とすべてが同じように思えたこの世界でも異なる場所があることをグリムはそこで初めて経験した。
「ついてこい」
一番後ろを走っていた小人を先頭にする形で走り続ける。いくら似ている世界といっても生まれ育った世界とこの場所は別物だと再認識させられる。
小人の後を追って数分後にようやくグリム達はローズが指定した場所にたどり着いた。
「来ましたか……」
ローズは外壁に腰を掛けて座っていたがグリム達を見るとゆっくりと立ち上がった。
「答えろ、この城の人々をどこへやった、なぜサンドリオンは俺を襲う、マロリーはどこにいる!」
「おやおや……随分と質問が多いですね」
その笑みは相手を嘲笑するように感じ取れた。
「一つ目の問いは……もうあなた方も想像がついているでしょう」
ローズは両手を天に仰ぎながらそう言った。グリム達が想像する最悪の形を示していた。
「二つ目の問いにも答えを示してあげましょうか……」
そういうとローズは横にずれる。彼がいたはずの背後にはいつのまにか黒髪の女性が立っていた。
それは見間違うはずもない、サンドリオンだった。
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