新お妃様は男の子

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第四話 貴妃

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第四話 貴妃

お茶会、それは妃という立場の人間であれば避けては通れない必須事項である。
基本的に呼んだ場合は自身の宮にて、呼ばれた場合は呼んだ妃の宮にて茶会が行われる。今回は親睦を深めるという理由で開かれたものの、その本質はである。
この後宮において、情報を制した者こそが勝者である。

(緊張するなぁ・・・。)

白然は腹の探り合いにおいては右に出る者がいないほどの弱さを誇っている。
基本的に茶会はお菓子やお茶をつまみながら、流行りの服や化粧などを話す。このなんでもない会話の水面化には、武漢ですら真っ青になるほどの熾烈な情報戦が繰り広げられるのだ。


そして白然にとって最初の茶会のお相手は大物も大物である。

相手は櫻草妃、白然と同じく上級妃〈五華妃〉である。
同じ階級の妃通しがお茶会を開くのはあまりないことであり、〈五華妃〉ともなれば尚更である。

今回白然はまだ新人であるため、招待された側として櫻草妃の住む翠玉宮へと出向いた。入口に名前に合った桜色の髪に、柔らかい緑の瞳、そして皇后最有力候補の一人として相応しい美しさを持つ櫻草妃は、天女を思わせる優雅な面持ちで白然と同じくらい少ない数の侍女を連れてこちらを出迎えてくれた。

「初めまして、白然妃。本日は招待に応じてくれてありがとう。」

「・・・・。」

「我が主人も招待をくれてた事を感謝しておいでです。」

軽く挨拶を終えたので、早速茶会の準備へと入った。2月はまだまだ寒い季節なので、応接間にて茶会が行われる。
宦官達に内装を全て新しいものへと取り替えさせて、侍女達が座るための椅子も用意させた。
櫻草妃の翠玉宮は、白然の真珠宮と違って赤や桃色を基調とした豪華な作りと、どこか家庭的な暖かさを感じられた真珠宮とは違う”美”がそこにあった。

櫻草妃の侍女が陶器の壺と器、お菓子を用意した。

「白然妃は、甘いものはお好きだったかしら。今日は冷え込むから、生姜や蜜柑の皮を使ったものが多いのだけれど。」

「・・・・」コクコク

「有難くいただくとの事です。」

器に口を付けて、溜飲した。蜜柑の皮の自然な甘さと生姜のピリッとした感じがあっていて、体を芯から温めて行って、喉の渇きを潤した。
白然の侍女達や警備役の里士の分まで用意してくれたらしく、みんな温まっていた。

「今日は白然妃とお話ししたくて開いたから、お互い気楽に行きましょ?」

「・・・・」コクコク

櫻草妃はつい先日難産で苦しんだばっかりなのに、その桜の女神のような美貌や可憐さを一切絶やさず笑いかけてきた。その美しさに白然は思わず見惚れてしまった。最も、衣で肌という肌を隠している為誰にもバレないが。
ちなみにそんな様子の白然も、その神秘と儚さを掛け合わせた美しさで人知れず見惚れさせていた。

「白然妃は、2月の園遊会には参加するのよね。」

「・・・・」コクコク

「今年は特に冷え込む様だから、防寒しっかりしないとね。」

「・・・・」コクコク

「そういえば最近帝から良い油をもらったの。それがね・・・。」

上級妃同士で行われているお茶会というより、仲の良い姉弟の様な微笑ましい空気感に、ピリピリしていた侍女達も緊張感が解けたように二人の見て癒されていた。
実際櫻草妃も白然も特に腹の探り合い無しで、会話を純粋に楽しんでいた。

「そういえば聞いた?最近、呉国との争いが終わって両者が不可侵協定を出したんですってよ。」

呉国、白然達が住んでいる盈国と敵対している国であり、年に2度ほど戦を行われているとの事だった。しかし、戦争に疲れていた今の盈国の皇帝である御陵帝は和平条約を持ち出し、呉国はそれを了承して、長きに渡った争いに終止符を打たれた。
しかし、最近呉国が怪しい動きをしているらしい。

「それと関係があるのか分かんないけど、妊娠が分かった私と露明妃に、毒が盛られたの。幸い、私たちは大丈夫だったけど、当時の毒見役だった子は」今も院で寝たきりになってしまったの。」

毒見薬が毒を喰らって今も寝たきりになっている。後宮においては珍しいわけでもないのだが、白然にとっては衝撃の事実であった。

「貴方も子供を持ったら、気をつけてね。」
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