新お妃様は男の子

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第二話 真珠宮

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第二話 真珠宮

後宮の妃、しかも最高位妃嬪ともなれば、待遇やらが今までとは桁違いであった。
龍丹と共に誰にも知られていない秘密の通路を使用して、これから白然が住むことになる建物〈真珠宮〉へとたどり着いた。後宮には宝石の名がついた4つの宮殿があり、それぞれに〈四華妃〉が住んでいる。
〈真珠宮〉は白然を妃として迎えるために最近建てられた宮殿である。自分の為だけにこんな立派な建物が建てられたのかと思うと胃が痛くなるのは、元々庶民であった白然からしたら必然であった。

〈真珠宮〉の中へと入ると、そこはまさに荘厳という言葉が似合う豪華な内装であった。
だが白を基調とした内装だからか質素で素朴な感じがするのは、これからここの主人となる白然にピッタリであった。すると階段の前にいる真っ白な衣の装いをしていた女性がこちらへとやってきて一礼した。

「お初お目にかかります、白然様。本日より白然様の侍女頭を務めさせて頂く、仁蓮ジリェンと申します。事情は龍丹様から聞かされておりますので、ご安心ください。以後よろしくお願い致します。」

他人からお辞儀をされ、しかも敬語で話しかけられたことがなかった白然は自分なんかにと申し訳なくなり、白然はお辞儀を返した。

「は・・白然といいます。こちらこそ、よろしくお願いします!」

普通であれば礼儀正しい少年だなと終わるこの行為だが、今の白然の位を考えたらあまりやってはいけない行為だったようで、仁蓮が驚いた顔をしていた。
どうやらこの後宮では〈四華妃〉は帝を除けば最も位が高いやんごとなき方。故に自分より下の者に頭を下げると位が下がるため、本来ならお叱りを受けられる行為だが、仁蓮も元々庶民とのことだったので、あまりお叱りは受けなかった。とはいえ、今後は控えるようにと言われた。

「それでは私はここで失礼致します。」

するとここで龍丹は一時離脱となった。
後の案内は仁蓮に任せられているようなので、仁蓮の案内に従ってついていった。
まずは白然の部屋を案内された。白然の部屋は二階の最奥にあり、上質な寝床に鳳仙の花が飾られている花瓶、そして木製の広い腰掛け、そして何よりも部屋の広さ。3人ぐらい入っても余裕がありそうだ。

次に向かったところは白然の部屋の隣にある応接間だ。お客様と会う時に使う部屋である。長くて広い机に同じく広い椅子があるというシンプルな部屋だが、高そうな壺や白色のまどかけが部屋の四方にあった。これだけでも白然にとっては目が眩むほどの絢爛だった。

次に向かったところは一階にあるちょっと離れたところにある台所だ。簡単な者であれば作ることができるらしい。だが白然に運ばれる食事はここでは作られず、宮廷の厨房から運ばれてくるらしい。

次に向かったところはまた二階に上がったところにある居間だ。基本的に侍女たちはここで暇を潰しているらしい。そして居間の紹介とともに、侍女たちの紹介に入った。

「お初お目にかかります!花蘭ピンランって言います!退屈な時はお任せください!お腹が壊れるほど笑わせて見せます!」

「お初お目にかかります。藍猫ランマオって言います。白然様のお仕立てを任せられています。よろしくお願いします!」

「お、お初お目にかかります。里士リシと申します。白然様の警備を務めさせていただきます。不埒な輩には指一本も触れさせません。」

「お初お目にかかります。流園ルエンと申します。毒見役を務めさせていただいております。この命にかけてでも、白然様を毒からお守りいたします。」

白然のお付きとなる侍女は3人の少女と一人の青年によって構成されていた。お付きの構成は龍丹から事情を聞かされて、それでも付き従うと誓った者のみとなっているらしい。さらにいきなり少女たちに囲まれるのは慣れないだろうから、去勢を受けていない武官の男である里士リシも特別に付けたとの事だった。
この徹底的なサービスには白然も思わず笑顔になった。

「改めて、今日から貴方たちの主人となる白然と言います。ここに来てくれたのは、僕が男だと知って、それでも僕の従属になることを選んでくれた人しかいないと聞きました。本当に、ありがとう。みんなに誇れるような妃になれるよう頑張ります。」

白然はさっき注意を受けたばっかりなのにまたお辞儀をしてしまった。しかしそれは従属たちからは好印象だったようだ。

(優しい方だなあ・・私、この人を選んでよかった!)

(す、すごい!私達のような低い身分のものにもこんなにも腰を低く・・・尊敬するなぁ。)

(なんて謙虚な方なんだ・・俺、絶対この人のこと守ろう。)

(やはり私の判断に狂いはなかった。このお方のためであれば、いくらでも命を差し出せれる。)

(もう、さっき私が注意したばっかりなのに・・でも、礼儀正しいお妃様っていうのも、いいかな。)

初日であるにも関わらず、ここまで配下の者たちの心を鷲掴みにした白然はのちに、慈妃と呼ばれるようになることは、まだ先のお話である。

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