この涙が、あの日見た海に沈むまで

まちまち。

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1章 〜私の話〜

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夜更かしは良くないのは明らかなことで、昨日の悠人とのやり取りのせいでなんとなくあたまがぼうっとする。

ここ1週間くらいで急に増えた付箋をめくりながら英単語を確認する。


「紗綾、今日もこの電車乗ったんだね」

「テスト期間は遅く行かないと睡眠時間削られちゃうでしょ」


悠人とはここ数日で急に距離が縮まった。
テスト3日目である今日もなんとなく一緒に登校するつもりだったのだが。

話し出すと集中できないことは分かっているので、リュックに単語帳をしまった。


「悠人じゃん、なんで紗綾ときてんの?」
「結菜に怒られるぞー」


いつもの赤色の電車に2人で乗り込んだ時、同じクラスの男子に声をかけられた。

隣を見ると悠人は気まずそうに私と男子たちを見ている。



「今日はそっちと行ったら?私は大丈夫だからさ」

「じゃあそうするわ、行ってきます」



悠人が1つ奥のドアの前に行ったのを見届け、リュックの右ポケットからイヤホンを出して、音楽を聴く。

そういえばさっき、あの男子が “結菜に怒られる” って言ってたけど、2人は別れたんじゃなかったのか。
もしかして別れた話は嘘なんじゃないか。だとしたらどうして私に嘘をつく必要があったのか___

止まらない思考に頭が占領されそうになった時、今日のテストのことを思い出して、慌ててリュックにしまった単語帳を広げた。















テスト期間に学校に行くのは憂鬱だ。

1回だけとった学年5位の称号が付きまとって、クラスメイトからの『紗綾は頭が良い』という共通認識が私を苦しめる。

贅沢な悩みかもしれないが、人は期待されると同時にプレッシャーも感じる生き物だ。
私も例外ではなく、テスト期間は毎回周りからのしかかるプレッシャーに負けないためだけに勉強していた。



「紗綾、また今回も点数いいんでしょ、羨ましいなぁ」

「良くないよ。この前も平均より全然下だったし。」

「でも5位とってたじゃん、地頭いいから大丈夫だよ」



私の地頭が良いと羨むくらいなら、いつも綺麗に髪を巻く時間を勉強に当てたらいいのに。
このクラスは私の苦手ないわゆる『陽キャラ』の集まりだ。

リュックによく分からないふわふわのキーホルダーをぶら下げて、いつもまつ毛をぱっちり上げているキラキラした彼女たちは眩しくて、少し苦手だ。


カバンの奥に閉まってあったペンケースを取り出して、お気に入りのシャーペンを出す。

今日の科目の英語は悠人の苦手科目だったよな、なんてことが頭をよぎった。
私はどうやら最近の関係に満更でもないらしい。

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