20 / 20
第16話【銃器開発Ⅱ】
しおりを挟むその後、僕はお姉さんたちと一緒に街へ帰りまして……。
買取所のマチさんのとこを訪れたり、お姉さんたちと料理店で夕食を楽しんだ後、修行先である【石工ギルド】の住み込み部屋に戻りました。親方や奥様にもちゃんと帰宅の挨拶をします。もちろん無断外泊はダメですよ?…こほん…。
さて、僕は自分の部屋に戻りますと――、
まずは楽しい【銃器】のお手入れタイムです。にふふ…。
僕は腰に装着していた拳銃帯を机の上に置くと、二丁ある【魔改造デリンジャー】を分解して部品を磨いたり…。回収した弾頭や空薬莢を【魔術工房】で再整形して、弾丸の備蓄を補充しました。えへへ…この時間が楽しいんですよねぇー。
およそ三十分後……。
ひと通り【銃器】のお手入れも終わりましたので……。
今度は新型銃器の構想を練っていきます。ワクワクしますねぇ~。
まず今回の課題は『銃の有効射程を伸ばす』こと――。
その最もカンタンな解決策は、銃の砲身を伸ばすことですね。
銃の砲身は、発射薬の燃焼ガス圧を拡散させずに弾丸に伝える役目を持ちます。
なので基本的には『銃の砲身が長いほど、銃身内部のガス圧で弾丸が加速される時間が伸びて、射程も伸びる』ことになるからです。
ただ、僕が構築する【魔術工房】錬成質量は、約二〇〇グラムが限界ですので…。
今回の銃身は、重量を抑えてシンプルな一本の丸筒型にしましょう。これなら銃身単体の長さが約八インチ(約二〇センチメートル)のモデルを製造できるはずです!
ちなみに『コイルバネ』の開発製造は継続中で、まだ道半ばですね……。
なので今回も【リボルバー銃】の開発製造は見送って、魔獣骨製の『板バネ』で再現できるシンプルな内部構造にしましょう。あとは、高価な【黒銀鋼】を節約できたら理想的ですね。そうすると……中世後期のマスケット銃みたいな。銃本身に木材を利用した単発式の単筒銃が良さそうですかねぇ……。
「よしっ決めました。銃器開発の第二弾は……【コンテンダー】にしましょう!」
というわけで。僕が今回の【銃器開発】で参考にするのは――、
レトロな見た目がカッコイイ狩猟用拳銃【トンプソン・コンテンダー】です!
近代拳銃では珍しい単発式の拳銃ですね。
単筒の銃身が『中折れ式』になっていて、銃身底部に一発だけ弾丸を装填します。
撃発機構は、手動で撃鉄を起こす『シングルアクション』を採用。
潔いほどシンプルな内部構造なので。部品数が少なく堅牢性もバッチリです。
そして最大の特徴は、銃身の取り換え機能でしょう。
木製の銃床を外すと銃身の換装が可能。拳銃弾でもライフル弾でも使用できます。
そのカスタム性能の高さから、レトロな見た目も相まって愛好家の多い拳銃です。
ラノベアニメ『Fate/Zero』の主人公・衛宮切嗣が、必殺の魔術礼装「起源弾」を撃つのに使用する愛銃として有名ですね。ううむ…かっこええ…。
さて、せっかく【コンテンダー】の開発を決意したわけですが……。
今夜は疲れたので…ねむねむです。もう寝ましょう…おやすみなさい…すやぁ…。
◆◇ ◆◇◆ ◇◆
そんなこんなで数日後……。
前回の反省も踏まえて、僕は丁寧に『設計図』を作成しました。自信作です!
ちょうどその頃、親方にお願いして追加発注した【黒銀鋼】も届きましたので…。
銃器開発から四日目、僕は【コンテンダー】の部品製造を始めました!
もちろん昼日中は丁稚奉公なので。夜の自由時間にコツコツと進める感じです。
あ…でもお休みの日には、趣味の【魔獣狩り】も欠かしませんよー。
お金を貯めるのと。それと…お姉さんたちに会うのも楽しみなので…えへへ…。
まあ【銃器開発】は趣味の領域でやってますので、のんびりいきましょー。
◆◇ ◆◇◆ ◇◆
――――――カタン。
「ふう…。ようやく最後の部品が出来ましたぁ……」
僕は構築していた【魔術工房】を解体すると、ぐでーんと机上に突っ伏しました。
づ…疲れまじたぁ…。でも…そのおかげで、いい感じに仕上がりましたねぇー。
僕は、机上で転がる『銃身部』を手に持つと、その筒穴を覗き込みました。
黒銀鋼で作られた艶消し黒色の銃身内側には、部屋の灯りに照らされて、うっすら螺旋状の溝が刻まれてます。これは弾丸を旋回運動させる『ライフリング加工』で、ジャイロ効果で弾道の直進性を高めます。この加工にすごく時間が掛かりました…。
じつは僕の製作した『遊戯盤の駒』が、春の社交界で好評だったようでして……。
社交界シーズンが終わる八月に向けて、領地に帰るお貴族様から『お土産需要』で発注をいただき、ここ最近は仕事が忙しかったのです。夜もすぐ寝ちゃいました…。まあ、おかげ様で工房長さんから特別報酬も貰えて、僕はホクホクですけどねー。
そんな事情もありまして、あれからひと月ほど経過しちゃいましたが……。
今夜、ようやく全ての【コンテンダー】の部品製造が完了しました!
えっと…本当はそろそろ寝る時間ですけど…。わくわく…。
組み立ては…明日の夜にした方がいいですけど…。わくわく…。
…………。
ひゃっはーそんなの我慢できませーん。
僕はウキウキしながら、机上に置いてある木箱の蓋を開けると――、
木箱の中に整然と並べられた【コンテンダー】の部品類を眺めます。にやにや…。
重質な艶消し黒色の部品と、優雅な紫檀木製の部品が調和して、綺麗ですねぇ…。
僕はフフンと鼻息を荒げると、組立用の『ネジ回し』を手に取りました。
「それでは早速、組み立ててみましょー!」
まずは『撃鉄』や『引き金』機関部に、魔獣骨製の『板バネ』を組み込んで――、
これらの撃発装置を『銃本体』に収納して、紫檀木製の『銃把』を取り付けます。
次に、銃身の開放装置となる『用心金』を、黒銀鋼製の銃本体に組み込み――、
銃身と銃本体を『蝶番ピン』で固定して、中折れ式に連結させると――、
最後に、連結部を覆うように紫檀木製の『銃床』を銃身下部に取り付ければ…――
「やった…ついに完成しましたー!」
銃器第二号【魔改造コンテンダー】の完成です――!!
このどこか気品のある優雅でレトロな色っぽさがタマりませんねぇ…にやにや…。
明るい木目調の胡桃木製を素材とした、参考元のトンプソン製と比較すると――、
僕の作った【魔改造コンテンダー】は、渋みが深い紫檀木製なので、さらに色調が優雅でレトロな感じです。気品のある流線形の銃本身や、僕の握り指に合わせて凹み彫りされた木製銃把には、優雅な装飾彫りもバッチリです。にふふ…かっこええ…。
その後、僕は動作確認としてカチン!カチン!と空撃ちさせたり――、
窓ガラスに映る自分の姿を見ながら【魔改造コンテンダー】を両腕でビシッと構えて、カッコイイポーズを取ったりしました。えへへ…すっごく楽しいです…。
「そうだっ、せっかくだから……弾丸の再装填をやってみましょう!」
やっぱり【コンテンダー】と言えば、これですよねぇー。
僕は、銃器類を保管している木箱から二つの弾丸を取り出すと――、
ひとつを【魔改造コンテンダー】に装填して、もうひとつを指先に持ち構えます。
僕は銃を握り、直立の姿勢になると…ゆっくりと呼吸を整えます。そして…――
次の瞬間、僕は【魔改造コンテンダー】の木製銃把を握る右手の指先を『用心金』に滑らせると、銃身の開放装置である『用心金』をグッと引き絞ります。刹那、黒色の銃身がカチャと折れ下がり、薬室が開放されます。僕は露出した薬莢のリムに指先を引っ掛けて、ピンッと外へ弾き出すと、返す手で薬室内に次弾を滑り込ませ、即座に銃身を跳ね上げて薬室を閉鎖します――!!
「……二秒ってところか」
あ、いえ…すみません。言ってみかっただけです。えへへ…。
実際の所要時間は……五秒弱でしょうか。少し練習が必要ですね。
えへへ…でもカッコイイなぁ…楽しいなぁ…。
そんな感じで……。
僕はニヤニヤ微笑みながら、何度も『再装填ごっこ』を楽しんでいたら……。
いきなり扉を開けて、顔を覗かせた親方の奥様に『あらあら…うふふっ、もう寝ましょうね?』と優しく注意されちゃいました……。み、見ちゃだめですよぉ~!
◆◇ ◆◇◆ ◇◆
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【稼ぎ】
△銀貨二十枚(四回分の狩猟リザルト/【拳闘蛙】単価:銅板五枚を四十体売却)
△銀貨五枚(月極お小遣い)
△銀貨十枚(臨時お小遣い)
【出費】
▲銀貨三十枚(黒銀鋼を購入。前回のほぼ半量)
▲銀貨五枚 (紫檀木材を購入)
▲銀貨二枚 (駆鳥&運搬具の貸出料/四日分)
▲銅板八枚 (Fランク魔石・八十個を購入。消費弾薬四十発分の補充)
【収支】
▲銀貨二枚、銅板八枚
【残金】
・銀貨四十枚、銅板二枚、銅貨二枚(日本円で四十万・二千・二百円)
【備品】
◆魔改造デリンジャー銃(二丁)
・魔獣骨 (バネ素材の余り)
・ネジ回し(一本)
◆弾丸 (三十発)
・試射台 (石製)
◆拳銃帯 (革製。拳銃鞘と弾薬盒二つ付属)
◆メリケンナイフ(黒銀鋼製)
・調理器具セット(黄道鋼製。平鍋と風防五徳と魔石焜炉の三点セット)
◆魔改造コンテンダー銃(一丁)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
225
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
……試射……。
新エリア……弾頭、弾薬開発……。
非戦闘、日用品開発……。
……と言いつつ爆弾的なやつ……。
とりあえず、単なる爆発ではなく方向指示付きの爆発とかも出来そうなので暴発(被害)は減らせそう。
文字通りの魔法銃とか、薬品やら魔術工房での治療、人体改造なんかも出来そうで期待しています。
……軽量素材なら大物も作れるのかな?
更新楽しみにしてますよ
実銃(アニメ等に使用)……。
多分検索すればメーカーサイトなんかにも行けるのでしょうね。
暇なときに回ってみます。
デリンジャー改(既出)のようにさらなる進化とか作成技術の向上とかが来るのかな。
……3Dプリントは延長出来ないのだろうか……。