異世界ガンスミス!

書記係K君

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第14話【お祝い】

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 その後、お姉さんたちの買取査定も無事に終わりまして――。
 獲物の換金完了後、借りていた【駆鳥】 カケドリ 荷車カートを【馬車ワゴンギルド】に返却してから、僕たちは一緒に『買取所』を後にしました。

 倉庫の外に出てみれば、すでに暗紫色の空が広がる、春の夕暮れ時……。
 にぎやかな街並みには、夕飯支度のいい匂いが漂い始めています。お腹へったー。


「ちょうど夕食時だねぇ~お腹空いちゃったよぉー♪」

「まずは中央広場の夕市場に立ち寄って、お酒と野菜を買わないとね?」

「ふふーん。今夜はコルトのお祝いだから、あたしが御馳走を作ってあげるわ!」

「わわっ、ちょっと待ってよ~ロアナ姉ちゃんっ」


 小さな胸をむんっと張りながらドヤ顔するロアナ姉ちゃんに、腕をぐいぐい引っ張られながら…。僕らは夕市場に向かうと、いろいろな夕飯の食材を買い物しました。お姉さんたちと一緒の買い物はとても楽しかったです。でも、あれ…僕はてっきり…どこかの食堂に蛙舌フロタンを持ち込んで、料理してもらうのかと…?


「それじゃ今夜はコルトくんを、ウチらの部屋にご招待だねぇー♪」

「え…ええっ!?」


 えっと、その…気づくと僕は…――
 お姉さんたちが暮らす部屋の中へと…ご招待されるのでした。ドキドキ…。


  ◆◇ ◆◇◆ ◇◆


 その後、僕はお姉さんたちに連行されるカタチで…――、
 街の中央広場から少し歩いた場所にある【住宅地区】に到着しました。

 この地区は治安や日当たりも良く、中流階層から人気のある住宅街エリアです。
 通りには木骨組みと漆喰壁のメルヘンな集合住宅アパルトメントが建ち並び、窓辺には色とりどりの花が飾られて…。まるでドイツのメルヘン街道ですね。どこか優雅さを感じます。


「はいっ到着ぅ~♪ ここがウチらの借りてる部屋だよぉー♪」


 そんな街中にある、赤い瓦屋根の小さな集合住宅アパルトメントの階段を軽快に上ると――、
 黒ギャルのベロベティさんが、ニコリと笑顔で玄関の扉を開けてくれました。
 はわわ…女の子の部屋に入るの…初めてですよぉ……。


「ふふっ…そんなに緊張しなくてもヘーキだよ?」

「ほらコルト、はやく部屋に入りなさいよぉー」


 白ギャルのフェラーラさんに耳元で囁かれ…――、
 幼馴染のロアナ姉ちゃんに背中を押されながら…――、
 お姉さんたちのお部屋に…お邪魔させていただきます…。ドキドキ…。

 わあ…どうやらこの部屋は、単婚家族向けの物件みたいですねぇ…。
 窓辺にある居間と寝室、奥には炊事場と手洗い。小ぢんまりした綺麗な部屋です。
 その…なんだか…お花みたいな…いい匂いがします…。


「あっ、ウチらの下着が部屋干しっぱなしだわぁー」

「ぶふぅ!?」

「あれぇ…コルト君は、もう女の子の下着に興味あるんだ?」

「ひゃい!?…いや…あの、その…っ」

「くすっ、なんなら記念に……お姉さんの下着一枚あげよっか?」
「にふふ…これなんてベロお姉さんのオキニだぞぉ~♪」

「ひゃあ!?…ちょ…だめ…だめですよぉ~!」

「ちょっとお姉たちぃ…ふざけてないで、お肉焼くんだから下着かたづけてよぉー」

「「はいはーい♪」」


 むむぅ…ひょっとして、僕をオモチャにして遊んでませんか…?
 その後も、ふたりのお姉さん ベロ&フェラさん は、わざと僕が見えるとこで部屋着に着替えたり…。
 半裸の状態になって、手足の埃汚れを濡れタオルで拭ったりと…。もう、悪ふざけばっかりしちゃダメですよぉー!


 そんなこんなもありましたが……。
 ちょいワルだけど、やっぱり心優しいお姉さんたちは、とても美味しそうな【初矢祝い】の蛙舌フロタン料理を、僕のために腕を振るって用意してくれました。きゅん…。


「それでは…コルト君の武運と、その狩猟に森の恵み多きことを祈って……乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」


 えへへ…ちょっと照れるけど…すごく嬉しいです…。
 ちなみに、こちらの異世界では十五歳で成人なので。未成年の僕とロアナ姉ちゃんは果実水レモネードですが、十七歳のふたりのお姉さん ベロ&フェラさん 麦酒エール葡萄酒 ワイン をぐびぐび飲んでます。


「それにしても、おもしろい魔道具だよねぇー?」

「たしかに…。私たちも野営用に【魔燧石】 マナ・ライター は持ってるけど、まさか『薪焜炉かまど』ごと持ち歩けるようにするなんてね…」

「これを使うと、食卓で焚火料理みたいなアツアツを食べれるのは良いわね!」


 そんな中、お姉さんたちに好評なのが――、
 現在、食卓の中央で料理を温めている、僕お手製の『調理器具キャンプギアセット』です。
 なんでも僕を【盗賊鳶】 ドロボウとんび から助けた際に見かけて、気になっていたらしく。せっかくなので今回使ってみたところ、お姉さんたちにすごく褒められました。えへへ…。


「よぉーし、まずは蛙舌フロタン料理の定番、厚切りタンステーキだよ~♪」

 そう言いながら、ベロベティさんが切り分けてくれたのは……。
 岩塩と粗挽き黒胡椒をぱらりと振った…厚切りのフロタンステーキです!
 ぷりぷり肉厚なのに柔らかい…アツアツ肉汁のタンテキを口に頬張れば……。
 はふぅ…美味しいですぅ…このワサビ醤油っぽい甘味ソースも絶品ですねぇ~。


「ふふっ…蛙舌フロタン料理なら、ぜひこれも食べてほしいな?」

 そう言いながら、フェラーラさんが炙り焼きしてくれたのは……。
 蛙舌フロタンの薄切り肉に…細かく刻んだ香味野菜を乗せて…岩塩をぱらり…。
 おぉ…これはネギタン塩…っ、やっぱり異世界にもあるんですねぇ~。
 むぐむぐ…んぅ~弾力のあるタン肉と…さっぱりネギ塩は相性抜群ですねぇー。


「ふふーん。たくさん作ってあげたんだから、いっぱい食べなさいよね!」

 そう言いながら、ロアナ姉ちゃんが小鍋の蓋を取ると……。
 わあ…ニンニクの香ばしい匂い…春野菜とタン肉の香草油煮アヒージョですね!
 タン肉の旨味を吸ったホクホクの春野菜と…タン肉の無限ループですぅ…。
 春野菜とタン肉の旨味たっぷり香草油オリーブに、黒麦パンを浸すのも忘れませんよぉ~。


「やっぱり蛙舌フロタン料理といえば…これでしょう~♪」

 そう言いながら、ふたりのお姉さん ベロ&フェラさん がコトコト煮込む小鍋の中身は……。
 ほおぉ…デミグラスと葡萄酒 ワイン で煮込んだ、春野菜たっぷりのタンシチューですね!
 はふはふ…むふぅ…やわらかトロトロのタン肉と…香り豊かなとろみスープの旨味が…口いっぱいに広がりますぅ…♪

 その夜は、お姉さんたちと美味しい食事をして…たくさんお祝いして貰いました。
 えへへ…何だか嬉しくて…心がポカポカしますねぇ……ひっく…。


「ちょっとベロ姉ぇ…このシチュー…」

「でへへ…葡萄酒 ワイン たっぷり入れちった♪」

「あれぇ…コルト君、頬が赤いなぁ…ふふっ」


 あれ…なんか言いま…した…かぁ…。
 にへへぇ…むにゅ…んぅ…。
 すやぁ…。





 ちゅん…ちゅんちゅん…――

 むにゅ?…んぅ…朝ですかぁ…。
 なんでしょう…この毛布…さらさらで…ぷにぷに肌触りが…気持ちいぃです…。
 んぅ…髪の毛も…いい匂いですねぇ……ん…あれ…?


「…………はわぁ!?」


 翌朝。窓辺にいる小鳥のさえずりで目を覚ますと――。
 爽やかな陽光に満たされた寝室で…。大きめなベッドに寝転がされて……。
 三人のお姉さんたちに、抱き枕にされてました。あわわ…。


  ◆◇ ◆◇◆ ◇◆


 なお、下宿先の【石工ギルド】に朝帰りした僕は…――
 親方や先輩職工さんに『朝帰りとはやるじゃねえか!』と揶揄われてしまい……。
 親方の奥様からは『コルト君にはまだ早いと思います!』とお説教されちゃいました。ご…誤解ですよぉ…。

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