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第7話【試し撃ち】
しおりを挟むお昼ごはん、美味しかったです。
それでは引き続き――【弾丸開発】をやっていきましょう!
午後の予定は、午前中に作った『試作弾丸』の【試し撃ち】になります。
街中では暴発事故がコワいので、街の外に出て【試し撃ち】したいと思います。
僕は、職場にある『石材運搬用の荷車』を親方から借りると――、
事前に準備しておいた、試射用の部材を積み込んで……いざ出発です!
ちなみに親方から『荷車を壊したら二年間タダ働きだからな!』と言われました。
これって魔獣素材の高級荷車ですからね。気をつけましょう……ぶるぶる…。
◆◇ ◆◇◆ ◇◆
「ふぅ…よいしょ…っと。この辺りで良いですかね?」
僕は両手で引っ張っていた荷車を停めると、額の汗をぐいっと腕で拭いました。
僕が今いるのは、街の城門から外に出て、城壁に沿って十分ほど歩いた場所です。
僕が暮らす街、レミントン辺境伯が統治する領都【レミントブルグ】は、その周囲を高さ三メートルほどの城壁で囲ませています。王国南方の国境防衛地ですからね。しかも街の周辺は平原なので、城壁沿いは見通しもバッチリです。
この場所であれば、周囲に通行人もいませんし。城壁の方向に向けて【試し撃ち】すれば、誰かに『流れ弾』が当たる心配もありません。ここを試射場にしましょー。
「それでは早速、試射場を設営しちゃいましょうか!」
まずは弓工房で購入した『的』……と言っても普通の『板』ですけど。それを荷車から降ろして、城壁近くの地面に突き立てます。貫通力も確認したいので、三枚ほど等間隔になるように縦列に並べました。設置よーし。
次に『的』から距離十メートルの場所に、僕が作った石製の『試射台』を置きます。この『試射台』には銃座の凹みが掘ってあり、当て布をすれば……はいピッタリ【魔改造デリンジャー】がハマります。シンデレラフィットです。設置よーし。
あとは【魔改造デリンジャー】を革紐で固定して…。離れた場所から『引き金』を引けるように、麻紐を『引き金』の爪部分に結び付ければ……はい、準備完了です!
それでは【試し撃ち】を始めましょう――!!
◆◇ ◆◇◆ ◇◆
「ふぅ…いよいよ【試し撃ち】ですね……うわぁドキドキします……」
すでに【魔改造デリンジャー】には、最初の『試作弾丸』を装弾済みです。
僕はゆっくりと撃鉄を起こすと、麻紐を片手に持ったまま、後方に下がり……念のために、荷車の陰に身を隠します。暴発事故コワいですからね……。
さて、今回の【試し撃ち】で確認したいのは、適切な【魔石火薬】の装薬量です。
装薬量は、多すぎて暴発しても、少なくて低威力になっても意味がありません。
弓工房の店員さん曰く、魔獣は防御力が高いので、せめて板一枚は貫通できないと、小型の魔獣すら狩れない――との事です。
今回用意した四発の『試作弾丸』の装薬量は――、
【Fランク魔石】を半個、一個、二個、三個、と少量ずつ変えてあります。
最初の『試作弾丸』は装薬量『半個』です。それでは…いきますよ……ぐいっ。
――――――ポン!
「…………あれ?」
なんか…シャンパンのコルクを開栓した時のような……かわいい音がしました。
僕は荷車から顔を出すと、まずは『試射台』に固定された【デリンジャー】を確認します。
ふむ。ちゃんと無事に発砲されてますね。
銃器類に異常は……特に無しです。
次に『的』の方を確認してみると……板一枚目の表面に小さな凹みがあって、近くの地面に弾頭が落ちていました。むむ…どうやら威力不足だったようですね……。
では気を取り直して、次いってみましょう!
僕は弾頭を回収しつつ、次弾を装填すると、再び荷車に身を隠しました。
次の『試作弾丸』は装薬量『一個』です。いきますよぉ……ぐいっ。
――――――パン!
おおっ。爆竹のような、少し軽めの発砲音ですね。
銃器類に異常は無し。『的』の方を確認してみると、板一枚目に弾頭がメリ込んでいました。魔石半個分の装薬量だけでも、かなり威力が増強されますね。だいぶいい感じです!
それでは、続きいってみましょう!
僕は『的』を交換して、次弾を装填すると、ウキウキと荷車に身を隠しました。
次の『試作弾丸』は装薬量『二個』です。いきますよぉ……ぐいっ。
――――――ダン!
「おおお…っ!!」
まさに拳銃って感じがする、今日一番の発砲音です!
銃器類に異常は無し。『的』の方を確認してみると……板一枚目を貫通し、板二枚目に弾頭がメリ込んでいました。この威力なら【魔獣狩り】で充分に使えそうです!
それでは、四発目いってみましょう!
僕は試射の準備を整えると、ドキドキしながら荷車に身を隠しました。
最後の『試作弾丸』は装薬量『三個』です。いきますよぉ……ぐいっ。
――――――パギャッ!!
「――わあぁ!?」
お腹に響く重低音と同時に、何やら嫌な感じの破裂音が聞こえました…ごくり…。
僕が荷車から顔を出すと――『試射台』に置かれた【デリンジャー】から硝煙が…うわぁ…。やっぱり…銃が暴発したようです……。
「うわぁ…固定したはずの『中折れ式・銃身』が跳ね上がっていますね……」
銃器類を確認したところ――。どうやら発砲時の衝撃に耐えきれず、銃本身と銃身を固定する『留め具』部分がハズれてしまったようです。設計を見直さないと……。
銃身に装填されたままの空薬莢を取り出してみます。……はい。こちらは問題なさそうです。発砲圧で少し膨張してますが、【魔術工房】で整形すれば再利用できそうです。薬莢素材も貴重ですからね。しっかり回収しましょう。
さて、次に弾頭の行方ですが……おおぉ…。
視線を『的』の方に向けると。板一枚目・二枚目の上半分が吹き飛んでました。
かなり上方に弾道が逸れたようです。城壁にメリ込んでいます。お…怒られる…。
とりあえず今回の【試し撃ち】の成果として――、
弾丸や薬莢の堅牢性は及第点。銃器は『留め具』部分を見直しですね。
そして【魔石火薬】の装薬量に関しては、当面は『二個』にしましょう。
よぉーし、次回の【試し撃ち】に向けて、また頑張りますよぉー!
ちなみに数分後……。
何とか【魔術工房】で城壁を修復して、弾頭も回収する事ができました。ほっ…。
◆◇ ◆◇◆ ◇◆
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【稼ぎ】
・なし
【出費】
▲銀貨一枚(試射用の木材)
【残金】
・銀貨二十一枚、銅板七枚(日本円で二十一万・七千円)
【備品】
◆魔改造デリンジャー銃(一丁)
・黒銀鋼 (残り半分ほど…)
・魔獣骨 (バネ素材の余り)
・ネジ回し(一本)
・銅材 (銅貨二十二枚分)
・黄道鋼 (ひと握り)
・魔石 (Fランク。残り二十個ほど…)
・試射台 (石製)
・試射の的(木材。残り半分ほど…)
・回収弾頭(銅製。四個)
・空薬莢 (黄道鋼製。雷管付き。四個)
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応援ありがとうございます!
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