異世界ガンスミス!

書記係K君

文字の大きさ
上 下
1 / 20

プロローグ

しおりを挟む
 
 二〇××年、ある秋の肌寒い夜、東京にて――


「へっくし!! うぅ~えらく今夜は冷えるッスねぇ……」

「そうだなぁー、ここ数日でずいぶんと冷え込んだよなぁー」

「これだけ外気温が下がったら、今年の『ガスガン』は撃ち納めかな?」


 あーそうかもしれないな……。
 俺は、いつも一緒に遊んでいる【サバゲー仲間】の男三人に笑いかける。

 【サバゲー】とは、ガス圧や電動モーターを利用してBB弾を撃ち出す『エアソフトガン』を使って楽しむ、日本発祥のシューティング・スポーツ【サバイバルゲーム】の略称だ。ぶっちゃけて言えば、銃撃戦を模した”戦争ごっこ”ってヤツだな。

 最近の【サバゲー】では、充電式の電動モーターを利用してBB弾を撃ち出す『電動ガン』タイプが主流だ。ガス圧を利用する『ガスガン』タイプは、気温が下がる冬場になるとガス圧不足で使えなくなるし、消耗品のガス缶はコスパが悪いからだ。

 でも、トリガーを引いた時に「パシュ!」とホンモノさながらに射撃反動が味わえる『ガスガン』タイプは、ハンドガン愛好家の俺にはタマらないんだよなぁ~。


「でも最近は、屋内でサバゲーできる施設が増えてありがたいッスねぇ~」

「そうだなぁー、屋内ならまだ『ガスガン』イケるかもしれないぞぉー?」

「それなら来月、横浜で屋内イベント戦があるぞ。オマエら参加するか?」


 ああ、残念だけど、俺はパスかな……。
 この時期は、仕事が忙しいから【サバゲー】やってる余裕ないんだよぉ……。
 まったり部屋でモデルガンを作ったり、動画編集でもしてノンビリ過ごすよ。


「あっ、先輩が動画投稿してる『小学生でも作れるモデルガン講座』ッスね!」

「あの動画は俺も見てるぞぉー。発砲スチロールで作る【レミントン・ダブル・デリンジャー】はカッコ良かったなぁー」

「ふじこちゃんが口紅を装填して撃つオープニングは最高ッス!」

「段ボールで作る【コルト・ローマンMk-Ⅲ2inchモデル】も良かったな」

「あぶ刑事デカッスね、あぶ刑事デカのユウジ!」

「動画の再生回数も、結構伸びてるみたいじゃないか?」


 いやーおかげ様で順調なんだよね。
 広告収入が入るようになったら、念願の【3Dプリンター】を購入したい!


「それで作ったら『小学生』ムリだろ……」

「ちなみに次は、何を作るつもりなんスか?」


 ふふっ、よくぞ聞いてくれた。
 俺が次に作るのは――【マテバ・モデロ2006M】だぜぇ!!


「うわっ、ド変態リボルバーじゃないッスか!?」

「いやぁー某SFアニメの見過ぎだろぉー」

「用意できてる?」


 マテバで良ければ!!

 いやぁ~今も時間を見つけては、少しずつ設計図を書いてるんだけどさ。
 もうホントに、設計図を書いてるだけでメッチャ楽しいんだよね!


「俺は、先輩が作る【オートマチック銃】も見てみたいッスけどね」

「おっ、ここはやっぱり【グロック17】だよなぁー!?」

「なに言ってるんスか、【デザートイーグル】に決まってるッスよ!」

「いやいや、ここは”尺取虫”の異名を持つ【ルガーP08】を――」


 え~っと、今後の製作予定は……。
 まずは【マテバ・モデロ6ウニカ】と【キアッパ・ライノ】を作りたいかな。
 その後は【S&Wスミスアンドウェッソンセンティニアル】や【コルトM1851ネイヴィー】や【コルト・シングルアクション・アーミー】も作って、それから、え~と…――。


「それ全部【リボルバー銃】ッスよねぇ!?」

「しかも見事に、クセモノ銃ばっかじゃねえか!?」

「この【リボルバー銃】オタクめ……」


 な、なんだよ、そんなジト目で俺のこと見るなよ!
 よしわかった、俺が【リボルバー銃】の魅力について説明しようじゃないか!


「いやいや。先輩のリボルバー話を聞いてたら、終電なくなるッスよ」

「そうだなぁー、寒いからさっさと帰るかぁー」

「この【リボルバー銃】オタクめ……」

「まだ言ってるッス」


 俺は【サバゲー仲間】とワイワイ喋りながら、ぼんやり街灯が照らす歩道を歩いていく。
 ふと空を見上げれば、綺麗な月夜だった。

 今年も、あっという間だったなぁ……。

 俺も今年で三十六歳か。趣味の【サバゲー】と【モデルガン作り】が嵩じて、
 年齢=彼女いない歴を更新中。どこに出しても立派な【ミリオタ】独身男だ。

 これだけ聞くと、残念な【ミリオタ】独身男の悲哀に思えるかもしれないが。
 趣味も心ゆくまで楽しめているし。友達とワイワイ騒ぐ日々も悪くない。
 まあ「足るを知る」ってヤツだな。


 何だかんだで……俺って幸せだよなぁ……。
 あぁ早く部屋に戻って【マテバ】を作りたいなぁ…――


 その時だった――。
 俺の視界が急に暗転し、意識が遠のいていく――。
 そして、次に目が覚めると……俺は【異世界】に転生していた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

望まぬ世界で生きるには

10期
ファンタジー
沢渡佳乃、彼女は何処にでもいる凡人だ。唯一人とは違うことは狩猟を嗜む程度で、それ以外にこれといった特徴はない。 ありきたりの毎日を送っていた佳乃はある日、女子高生に巻き込まれて異界の地へと飛ばされてしまう。 少々甘えたな女子高生・美琴に壁にされる事が多いが、聖女ではない佳乃は唯々その世界で生きるため、最善の選択をするのであった。 2018/04/27

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

創造眼〜異世界転移で神の目を授かり無双する。勇者は神眼、魔王は魔眼だと?強くなる為に努力は必須のようだ〜

ファンタジー
【HOTランキング入り!】【ファンタジーランキング入り!】 【次世代ファンタジーカップ参加】応援よろしくお願いします。 異世界転移し創造神様から【創造眼】の力を授かる主人公あさひ! そして、あさひの精神世界には女神のような謎の美女ユヅキが現れる! 転移した先には絶世の美女ステラ! ステラとの共同生活が始まり、ステラに惹かれながらも、強くなる為に努力するあさひ! 勇者は神眼、魔王は魔眼を持っているだと? いずれあさひが無双するお話です。 二章後半からちょっとエッチな展開が増えます。 あさひはこれから少しずつ強くなっていきます!お楽しみください。 ざまぁはかなり後半になります。 小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

処理中です...