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幕間Ⅱ -悪女は微笑む-

#047.隣国姫の嫁入り……そして王妃は妖艶に微笑む

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 王族の妻娘が暮らす白亜石の尖城――≪奥塔≫――
 その最上階にある国王御正室≪第一王妃エリザバートリィ≫の”奥御所”にて――


「ふう……っうふふ♪……あなた…とっても良かったわァ……♪」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫の”茶会”が開宴されてから数時間後――
 蜂蜜色の夕陽が地平線に沈み、紫雲の夜闇が≪第一王妃エリザバートリィ≫の寝室を仄暗くしていく中――≪第一王妃エリザバートリィ≫はウットリと気だるげに黒髪を掻き上げると、なまめかしく溜め息をこぼした。

 そして、フワフワの寝台ベッドをギシリと軋ませながら≪第一王妃エリザバートリィ≫は上体を起こすと、御手をスッと伸ばし――すぐ横で仰向けに寝転がされた≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍の男根を優しくまさぐる。


「ぐっ……ああ…ッ…」


「あらあら、うふふ…っ♪ まだ我慢できるなんてえらいわァ…さすが”剣聖”様ねぇ♪……でも、もうパンパン…破裂しちゃいそうだわァ…っ…♪」


 まるで宝玉を磨く様に――その肉棒先端の丸みを手のひらでスリスリとこすり撫でる。
 必死にこらえる≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍の苦悶の表情を眺めながら――≪第一王妃エリザバートリィ≫はニタァと淫靡に微笑むと、そのビギビギッと膨張する男根をゆっくりしごきモテあそぶ。

 ”第一王妃エリザバートリィ≫に”――、
 そして――””――。

 数時間前にそう””された≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は――あれから何十回もの射精感を耐え続けていた。だが、たかぶり続けたその”異常な射精感こみ上げ”は、既に≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍の思考を快楽で混濁させ――意志を奪うには過分に過ぎた。


「うふ…あははァ…♪…さあ…ほら……””…ッ…♪♪」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫が――さらに重ねて””しながら男根をまさぐる。

 次の瞬間、≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍の股間で強制勃起させられた肉棒がビグビグッと膨れ上がり――ついに、その先端からブュシャーッと噴水の様に、白濁液が噴き出しまくる。

 その強烈な射精快感に、≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は腰を跳ね上げて悶絶し…――

 そして、その魅惑的な裸体カラダを白濁まみれにした≪第一王妃エリザバートリィ≫が、ニタァと淫靡に微笑みながら、ケラケラと愉悦に笑い続けるのだった…――。

 ◆

 それから数分後――、
 白濁液でドロドロに汚れた寝台ベッドに寝そべる≪第一王妃エリザバートリィ≫が――ウットリと満足げに手足を伸ばしながら身体を起こす。


「はあァ…いい匂いだわァ♪……んう…でも残念だわァ…私はこれから国王だんなと晩餐だから、少し出掛けてくるわね。すぐに戻るから…あなたも夕餉を終えたら――””――うふふ…今度は寝布シーツ射精して、精子を無駄にしちゃダメよぉ…?」


「ぐ…うっ、仰せのままに……ッッ」
(ぬう…ッ…この”女”の言葉に逆らえない…ッ)


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫が言いつけた””に――≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍はギリリと歯噛みしながら臣従する。

 その様子を眺めやった≪第一王妃エリザバートリィ≫はニタァと愉悦に微笑むと――まるで見せつける様に、白濁精液まみれの艶めかしい足先からムッチリした太ももへと黒絹靴下タイツを穿き滑らせる。
 ねっとり濡れた黒絹靴下タイツに包まれた淫靡な下半身――それを隠すように≪第一王妃エリザバートリィ≫は漆黒色の装飾衣ドレスを身に纏うと、満足げにニヤついた。

 これから夫君である≪国王≫との晩餐会にも関わらず、その黒薄布ヴェール腰布スカートの内に――浮気相手ロンメルの”精液”をムワッと濡らし秘めながら、出掛けようというのだ。
 その狂気じみた淫欲に――≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍はゾワリと怖気で肌が粟立つ。


「うふふ…♪…これで国王あのヒトとの退屈な晩餐会も少しは愉しめるかしら? ああ面倒だわ……国王あのヒトは”血”が薄いから””するのがスゴぉく手間なの……あなたの様に”血”が濃ければ、一度でしっかり”使役テイム”できて楽なのに…ねぇ?」


「なっ!? ま、まさか……”中つ国ミッドガルド”の現国王≪ユーサーフェンドラゴン≫陛下も、貴女が……ッ!?」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫が溜め息と共に漏らした言葉に――≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は驚愕する。

 そして同時に思い出す――”竜灰色”軍服にまつわる逸話――
 竜の血族と伝承される≪カーディナル王家≫の伝説を――。


「うふふ…っ♪……でも”竜の血族”と言っても、もうだいぶ”血”が薄いから……ほんの少しだけね? ちょっと私に惚れて…”求婚”プロポーズしちゃう程度の”洗脳”だわァ……くすくす…♪」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫はその美麗な口元を御手で隠すと、まるで無垢な少女の様に――そして憐れみ嘲笑あざけわらう悪魔の様に、クスクスと愉快そうに微笑みまくる。

 一方の≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は、異世界大陸の覇権を握る現宗主国≪ミッドガルド王国≫が――いま眼前にいるこの”女”に掌握されつつある事実に驚愕し、その頬に冷たい汗を奔らせる。


「んんゥ~…でもそうね…”血”が薄いゆえに、国王あのヒトの滑稽ぶりは”見世物”としては実に愉快だけれど……おかげで”私の国”を手に入れる計画はだいぶ遅れちゃったわ?」


「な…っ、いったい何が目的だ、”王妃”の座だけでは不服なのか…ッ!?」


「あら…当然でしょ?」


 コロコロと微笑んでいた≪第一王妃エリザバートリィ≫が――≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍の問い掛けを聞いた瞬間、仄暗い無感情な微笑みに豹変する。

 その微笑みを見た瞬間――≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は背筋をゾクリと凍らせる。


「どんなに”王妃”と云えど……所詮、王政の主座は”国王あのヒト”にあるもの……”女”の私が”国”の頂点に立ちたければ、それは国王の母――”王太后”にならないと……そう思わなくて?」


「で、では……やはり≪第八王子クリストファン≫の失踪は…ッ!?」


「あら…っ♪…いいえ、それは本当に私じゃないわァ…?」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫がニタァと邪悪に微笑む。


「まあ…どうせ、あの愚かな”息子”の仕業しわざでしょう。うふふ…っ♪……まあいいわ…私が”王太后”になるためにも……あの子には確実に”次期国王”へ成ってもらわないと♪…うふ…あはは……あァ~ははは…っ♪」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫は翼を拡げる様に両手を仰ぐと――まるで輪舞ロンドを踊る様にくるりと廻りながら暗澹と微笑みまくる――その時だった。

 ◆

 ≪第一王妃エリザバートリィ≫の寝室に夜風が流れ、≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍らの頬を撫でてゆく。
 ≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍がギッと眼光を奔らせると――寝室の扉前にひとりの”執事”が立っていた。

 突然の闖入者に相対して――無意識に≪第一王妃エリザバートリィ≫を護衛する様に仁王立ちしてしまった自身の行為に心の中で舌打ちしながら、≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍はその”執事”をジッと睨み遣る。

 一方、その”執事”――年齢は三十路程度、銀髪に片眼鏡を着けた好青年――は全く動揺する事なく、≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍らに対して、礼儀正しく一礼した。


『これは≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍様、私は当王家に仕えております”執事”の――』


「――ふん…黙れ。その匂い…貴様は”人間ヒューム”ではないな…ッ…!!」


『……ほほう、さすが”狐”だな。鼻が効くじゃないか?』


 ≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍の言葉を喰らい――
 次の瞬間、”執事姿”の好青年の顔が見るみる内に――鈍く輝ける蒼銀毛の”狼”へ変貌し、狼牙を軋ませながらグルル…ッと唸り声を漏らし吠える――。


「ぬう……この威圧感、ただの”人狼”ウェアウルフではないな……”人化の秘術”を会得した【狼頭鬼コボルト】の上位種――【狼鬼王コボルトキング】――か…ッ…!!」


 【狼鬼王コボルトキング】――
 異世界モノでは”小鬼ゴブリン”と”豚頭鬼オーク”に並ぶ定番の”最下級魔獣ザコ・モンスター”――狼の顔&体躯を持つ亜人型魔獣【狼頭鬼コボルト】――その最上位種である。
 その敏捷性や”狼”特有の嗅覚&集団統率力は侮れず、”小鬼ゴブリン”と同程度に人間ヒュームの武器も使いこなす。一方、通常種の【狼頭鬼コボルト】は”大人の人間ヒューム”より一回り小さな体躯ゆえに膂力貧弱で打たれ弱く、追っ払うだけなら新米冒険者でも容易に出来てしまう――が。
 それが最上位種の【狼鬼王コボルトキング】にもなれば――その体躯&膂力は人間ヒュームの倍に匹敵し、その残虐且つ執念深い首魁リーダーが指揮する”群れ”は、熟練冒険者すら餌食にしてしまう。

 極めつけは――極稀に顕れる”人化の秘術”を会得した変異種”人狼”ウェアウルフの存在である。
 ひとたび”人狼”ウェアウルフ人間ヒュームの組織社会に潜り込むと、その討伐は困難を極め……夜な夜な血肉を貪り喰らう恐るべき魔獣に、人々は怯え暮らす事になる――まさに”人類の怨敵”なのだ。


「うふふ…っ♪……即座に”人化”を見抜くなんて…さすが”砂漠の英雄”様だわ♪……でもその子…私の”お気に入り”だから…喧嘩しちゃダメよぉ…?」


 既に戦闘態勢に入っていた≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍をいさめる様に、そのたくましい剛腕を――≪第一王妃エリザバートリィ≫の魅惑的な肉体が抱き締める。

 そしてそれに呼応する様に――人間ヒューム状態に戻った”執事”が慇懃に黙礼した。

 一方の≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は――王国中枢の≪王城≫内部にまで”人狼”ウェアウルフの潜伏を許した”魔の蔓延はびこる国”に、ゾクリと戦慄を覚える。


「うふふ…♪…それで……あの生意気な”小娘”どもの様子は?」


『はい。まずは……実弟である≪第八王子クリストファン≫をたぶらかして王位簒奪をはかった――≪第一王女ヘロディアーナ≫――ですが、左遷された東方の”魔法学校”にて……今度は貴族令嬢をたぶらかし、裏貴族界を粛々と牛耳ってございます。また、王政撤廃・革命派に支持される”聖十字教会”の使徒――≪聖女ソフィア≫――ですが、現在は”サキュバス狩り”と称して民衆の賛辞を集めながら……”奴隷狩り”を愉しんでございます』


「あらイヤだわ…まるで”私の国”に群がる小蝿コバエみたい……本当に”目障めざわり”ねぇ…?」


『おお我が主よ。御安心下さいませ……”計画”は順調でございます。それと――』


「あら…”それと”…何かしら?」


『約一ヶ月程の前に起きた≪女騎士アレシア≫殿の失踪事件ですが……どうやら【小鬼王ゴブリンキング】のヤツめの仕業しわざでございました。あの”小鬼ゴブリン”ども……王都の地下水路にかくまい、潜伏させてやった我が主の御慈悲も忘れ、現在は”魔の森”へ侵攻中のようでございます』


「あら…あらあら…っ♪……うふふ…そうだったのねぇ……””だわァ…♪」


 ”執事姿”の【狼鬼王コボルトキング】は静かに答えながら、その顔面に青筋を刻み立てる。
 だが、逆にそれを聞いた≪第一王妃エリザバートリィ≫は――ケラケラと愉悦に微笑みまくる。


「ああァ…うふふっ♪…あの子は賢いから…何をしでかすのか…とっても愉しみだわァ…♪…しばらく放っておきなさい…♪……それに…ねぇ?」


 そう言いながら≪第一王妃エリザバートリィ≫は妖艶に微笑むと――漆黒色の装飾衣ドレスを淫らにハダけさせる。

 次の瞬間、その淫靡な裸体に禍禍まがまがしい黒紫色の瘴気がまとわり憑き――その魅惑的な艶肌に、まるで”魔獣”をかたど象った様な”隷属紋”が幾つも浮かび上がる――!!

 それを眼前にした”執事”と≪砂狐剣聖ロンメル≫将軍は――思わず体躯を戦慄させ、臣従を示す様に跪いてしまう。


「ま、まさか……その無数の”隷属紋”は…ッ…」


「うふふ…っ♪…ええそうよ…見えるかしらァ…♪……これが”蛇尾鬼の女王ラミアクィーン”で……こっちが”妖精女王フェアリークィーン”……それに”淫夢悪魔の末裔ハーフ・サキュバス”や……あなた達っ♪……どの”隷属紋”も……私に臣従する”お気に入りコレクションの仔”達だわァ…♪」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫はその艶肌に輝ける”魔獣の隷属紋”を見せながら妖艶に微笑むと――その指先で、右乳房に刻まれた”小鬼ゴブリンの隷属紋”をイヤらしく揉み撫でる。


「んふふ…っ…ほぉら♪……”小鬼王あの子”も……私からは逃げられないわァ…♪…うふ…あはは……あァ~ははは…っ♪」


 ≪第一王妃エリザバートリィ≫がケラケラと妖艶に微笑みまくる。

 古来伝説では”魔王”継承をあらそうと云う”王位魔獣キング・モンスター”――
 それらを幾匹も臣従させ、”魔の蔓延はびこる国”に君臨する妖艶王妃――

 臣従にひざまずきながらも≪砂狐剣聖ロンメル≫は、その妖艶に微笑む≪第一王妃エリザバートリィ≫の御姿に――”魔王”の影を感じ、底知れぬ”恐怖感”に襲われるのだった。



◆幕間Ⅱ後篇・完◆

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