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幕間Ⅱ -悪女は微笑む-
#043.ある日、森の中 <下>
しおりを挟む”魔の森”深層の森陰、妖樹精が宿る”古代樹”の樹下にて――。
先程まで双方睨み合っていた”褐色美女”と”緑髪美女”――そんな両者の”気の昂ぶり”を、ニタニタ豚笑いした【豚頭鬼の王】がたっぷりと諫めまくる。
”王”の御前では皆等しく”ただの女”――ゆえに”喧嘩両成敗”である。ぶひひっ!
そして今、霊験荘厳な”古代樹”の樹下に仁王立ちした”俺様”の眼前では――慎ましく跪いた”褐色美女”と”緑髪美女”が、そそり勃った豚陰部の竿を両側から仲睦まじく舐めしゃぶっていた。ぶひひぃ~!
「……っ…み、未熟ゆえの無礼、許されよ」
『……ああァ~…そのォ~…ごめんなさいでしたァ~…』
褐色艶肌の火照る裸体を隠そうと、乱れた衣服を直す”褐色美女”――
艶汗が滴る首筋を撫でり、乱れた緑髪を手櫛で整える”緑髪美女”――
俺の両腕に抱かれた”不倶戴天の天敵同士”である【耳長族】と【妖樹精霊】が――満足そうに”ふぅ…”と桃色吐息を溢しながら、素直に謝罪を述べる。
ぶひぃ~まったく”女”は手が掛かるな。だが、蜜袋を”男”で満たし、心身も充溢に丸みおびれば”女”も従順になろう。丁寧に”仕込む”しかあるまい…ぶひひっ!
”魔の森”支配階級の双璧たる【耳長族】と【妖樹精霊】を支配した【豚頭鬼の王】――それはまさに”魔森の盟主”と云えよう。俺様が支配する”領土”ならば……しっかり”女の統治”もせねばなるまいな~ぶっひひぃ!!
◆◇◆
『うふふゥ~♪ それではァ~…こちらにどうぞォ~…♪』
しばらくの後、俺は両脇に”褐色美女”と”緑髪美女”を抱き侍らせると――【妖樹精霊】の魂魄が宿る”古代樹”の回廊を歩いていた。
その幾重にも聳え生える”古代樹”の樹下や樹枝には――【妖樹精霊】が籠絡した”獲物”が蔦枝で吊り囚われている。美男好きの【妖樹精霊】だけあって、その蒐集品は……”青年エルフ”が多いようだ。
まあ~俺と≪黒曜耳長≫ら女親衛隊が、≪隠れ里≫に暮らす”男衆”を罠に嵌めては、たんまり”提供”したからなぁ~ぶひひっ。
『――ぶひ、これがお前らの言っていた…”異変の報せ”…か?』
だが、俺たちが辿り着いた”古代樹”は――どうやら少し様相が異なる様だ。
「が…は…はっ……うひぁ…っ…」
「…ぎひ…ぎ…ひひっ……ひぐっ…ぇ……」
「ぐふ…ふぅ……う…ぐっふ…っ……」
その霊験荘厳な”古代樹”の樹下には――樹根の蔦に絡み囚われた”三人組の冒険者”が寝かされ、虚ろな瞳を快楽に歪ませながら悦楽の声を漏らしていた。今もまた、膨張した股間に吸着した”蔦触手”が、ごぶり…ごぶり…っと”精”を搾り摂っている。
生気を吸われ、干からびかけた”三人組の男冒険者”たち――いったいどの様な”幻想”を愉しんでいるのやら。ぶひひっ。
『ぶひっ…人間の冒険者か』
『うふふゥ~♪ こちらは先ほどォ…”魔の森”深層のォ~…耳長族の≪隠れ里≫の近くでェ~…籠絡したモノですわァ~♪』
「なっ…何だと……!?」
”緑髪美女”の説明を聞いて――≪黒曜耳長≫が眉根を寄せる。
それを聞いた俺は、”緑髪美女”が鹵獲した”三人組の男冒険者”の装備類を確認すると、ブヒィ~と豚鼻を唸らせた。おそらく≪黒曜耳長≫の推測通りだな。
『ぶひっ、一般的な冒険者装備の他には……”獲物”の歩行を妨げる捕縛用”投擲縄”、救援の発声を防ぐ”猿ぐつわ”に……身体の自由を奪う人間用の”麻痺薬”か。ぶひぃ…どうやら”奴隷商”に雇われた――”エルフ狩り”の冒険者、と云ったところか?』
「……ッ、おのれ…また【街人族】は……このような愚かな行為を…ッ…!!」
異世界大陸において最大勢力を誇る人間種族【街人族】――まあ要するに俺が転生した≪ミッドガルド王国≫の事だな――は、かつて覇道主義を唱えると、他種族に対して大規模な”奴隷狩り”をヤらかしてきた。
そして、他種族と禍根を遺し続けたがゆえに多方面戦争が勃発――その栄華を自ら陰らせたのだ。現国王は、他種族に対する”贖罪政策”に邁進しているはずだが……。
『ぶひっ…愚かな人間は、ひと度”愉悦”を愉しめば…それが”悪徳”であれ”誘惑”には抗えぬ。耳長族の奴隷は美麗ゆえ、若い女も男も……人間の貴族連中からは人気だからな……』
「ぐぬぅ…イヤしいクズ共め…。だが、”魔の森”深層まで侵入したとなれば……此度の”奴隷狩り”は、かなり大掛かりだな……」
『ぶひぃ…どこぞの奴隷商に”出資者”が付いた可能性が高いな。獣耳娘達や≪女将校≫に調査させよう』
俺が慰める様に≪黒曜耳長≫の肩を抱き撫でると、”褐色美女”がウットリ甘える様にしなだれてくる。ぶひひっチョロいやつだ。
「……ところで”緑髪美女”よ、先程から気になっていたのだが……その”娘”は何なのだ?」
気を取り直した≪黒曜耳長≫が、ニッコリ威圧的に微笑みながら――”古代樹”の樹下に転がる”三人組の冒険者”たちを指差す。
そこには”三人組の男冒険者”の股ぐらに癒着した”蔦触手”と同化する――”見た目はエルフの娘”――がニンマリ微笑みながら、ゴクリ…ゴクリ…ッと股ぐらで”精”を搾取していた。ぶひひぃ~これは眼福だなあ。
『うふふゥ~…もちろん仲間の【妖樹精霊】ですわァ~♪ 冒険者相手にィ~…伝承まんまの”緑髪美女”の姿で顕れてもォ~…”囮”になりませんものォ~…♪』
『ぶひひっ…なるほど【妖樹精霊】の種族特性≪妖樹の幻想花≫であれば、容貌は自在という事か。ならば”エルフの娘”に擬態するのは、理に適っているな』
「むう。まあ…それは良いのだが……何やら風貌が…”私”に似ていないか?」
ぶひひっ、たしかに言われてみれば……≪黒曜耳長≫の銀髪&褐色艶肌を、金髪&白雪色肌にした感じだなあ?
『…………あらあらァ~たまたま偶然ですわァ~♪』
「おい…今の”間”は何なのだ……」
『……うふふゥ~…薄汚い男冒険者どもに輪姦される”惨めな自分”を傍から眺めるのは……とても興奮しますでしょうゥ~♪』
「わ、わたしに…そのような性癖はないぞ…っ//…ッ!!」
ほほう、ムキになるとこは”見込み”がありそうだなあ~ぶひひっ。
『ぶひっ…ところで”緑髪美女”よ、先ほどお前は――”まずは”――と言ったか?』
『うふふゥ~さすが”豚”さんですわァ~♪ 実はもうひとつ、見て頂きたいモノがありますのォ~♪』
◆
またしばらく、俺が両脇に”褐色美女”と”緑髪美女”を抱き侍らせながら”古代樹”の回廊を歩いていると――ぶひっ、これまた異様な”古代樹”へと辿り着いた。
と、ゴミクズを見るような冷ややかな瞳で≪黒曜耳長≫がつぶやく。
「……ふむ。ただの【小鬼】ではないか?」
その”古代樹”の枝に”蔦触手”で吊られていたのは――矮小な体躯に薄汚い緑肌、人間から奪った装備を身に着け、尖り耳&鷲鼻の狡猾そうな顔を【妖樹精霊】の”吸精”で悦楽に歪ませた”最下級魔獣”――【小鬼】――であった。
――【小鬼】――
異世界モノでは定番の”最下級魔獣”であり、成体でも”人間の子ども”程度の体躯・膂力・知能しか持ち合わせない。だが、その性格は極めて残忍且つ狡猾であり、幾多の村々を滅ぼし、数多くの新米冒険者を屠り、そして”豚頭鬼”と同じく――人間種族の”女”を攫い、犯し、孕ませる事で繁殖してきた――”人類の怨敵”である。
『ぶひぃ…ヤツらは馬鹿だが、間抜けじゃない。侮ることは厳に戒めよ』
「うむ…至当だな。すると、この近辺に【小鬼】の群れでも棲みついたか?――いや待てよ、ひと月ほど前までは”里”の周辺に【小鬼】が多く出没していたが、最近は目にしていなかった……この”空白の期間”は何なのだ?」
ぶひぃ…イヤな予感がするなあ……。
俺と≪黒曜耳長≫は、”古代樹”に吊るされた十匹ほどの【小鬼】に近づき、その装備類を確認しようとして――即座に気づく。
「こ、これは……偵察用の装具か……っ!?」
『ぶひぃ…しかも不器用ながら”手入れ”もしてあるな……』
そして何より不可解なのが、これだけの”人間の装備品”を……たかが【小鬼】が取り揃えたという点だ。
【豚頭鬼】に墜ちた”俺”だからこそ理解できる――これだけの”人間の装備品”を、”魔獣”が集め備えるのは――”至難の業”であるはずだ。ぶひぃ…。
「むう…、この十匹余りの【小鬼】が…”ただの偵察要員”ならば……こやつら”本隊”の規模はどれ程になろうか……」
ぶひぃ…≪黒曜耳長≫の危惧はもっともだな。
俺は豚鼻を鳴らすと――薄汚れた【小鬼】どもの匂いを嗅ぎ探る。
ぶひぃ~何という悪臭だ。”豚頭鬼”の嗅覚は犬並みに鋭敏だからキツいなあ……。
だが――なるほど”まずい”匂いがするぶひぃ……。
『ぶひぃ…人間の”女”の匂いがするな。複数の若い”女”……しかも匂いが濃ゆい。最近ついたモノだ。おそらく……”繁殖”しているな』
(……ぶひぃ…それにこれは…何故に”あいつ”の匂いがする……)
「な、何だと…ッ…、なるほど……予想しうる”最悪”の事態だな…っ…」
俺の言葉を聞いて、≪黒曜耳長≫や親衛隊のメスエルフ達が驚愕の声を上げる。
たしかに危機的状況だ。ヤツらは”女”を囲うと瞬く間に増殖する。ひと月も過ぎれば”軍勢”規模になりかねない……。
だが、それより気掛かりなのは――
これだけの”人間の装備品”を用意する小賢しさ――
ひと月前まで繰り返してきた”無駄な侵攻”を止めさせる統率力――
偵察隊を差し向ける用心深さと、垣間見える狡猾さ――
”軍勢”規模にまで膨れた【小鬼】どもの”徒党”ともなれば、その”頭目”たり得るのは――上位種の【小鬼将軍】か……あるいは【小鬼英雄】か、それとも――
ぶひひっ――【小鬼王】――と云ったところかあ…ッ!!
◆◇◆
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