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第二章 -エルフ凌辱篇-
#038.巫女エルフは寝取られる
しおりを挟む耳長族の聖樹≪世界樹≫の麓下、”巫女”達が住まう聖御所≪神殿宮≫――
その内殿の最奥、巫女が祈祷を捧げる”祭壇の間”への廊下にて――
「あ、あの、ノナさん、ニナさん……大丈夫ですか?」
”少年エルフ”は、進行方向の安全を確認しながら歩き進む≪エルフ姉妹≫へ心配そうに声をかける。
なぜなら、先ほどから≪エルフ姉妹≫が息苦しそうに全身をほんのり火照らせ、妙に艶っぽい甘息を漏らしているからだ。
「はぁ…はぁ…っ//……ええ…大丈夫です……//」
「どうやら……御所内に漂う…この”妖しい香り”は……媚薬の類のようですね……//」
「ええっ// び、媚薬って…ッ//……おふたりは、その…っ…平気なんですか…っ?…//」
「御安心ください。我われは鍛え方が違いますので……//」
「ふふっ…少年様はすっかり”色”に興味津津ですね……//」
「そ、そんなつもりは…~っ//……あれ、けど……ぼくは全然、平気ですよ?」
「確かに、そのようですね。たいそう不可思議ですが……精霊様が御守り下さっているのかもしれません」
「それより……少年様、ニナ、ようやく”祭壇の間”に着きましたよ……」
”豚媚の香炉”の妖香が焚かれた内殿の廊下を、警戒しながら駆け抜けてきた少年エルフ達は、ようやく聖御所の最奥――”祭壇の間”の扉前に到着する。
妖香を嗅ぐまいと衣袖で口元を押さえていた≪エルフ姉妹≫は、互いに視線を向けて頷き合うと…――その扉を静かに開け放った。
◆◇◆
それを喩えるならば、濃ゆい”獣”の匂い…――
剥き出しの”欲望”が互いをむさぼり、艶香を充満させる肉欲の饗宴…――
「……ッ…ッ//…!!?」
「こ、これは…っ//…!?」
「なんて…淫らな……っ//…」
篝火が灯る仄暗い”祭壇の間”…――
広間の最奥には”祭壇”に続く大階段があり…――
その祭壇上には、”巫女姫と精霊王”が御床入りを召すための”天蓋付の寝祭壇”が置かれている。
そして”祭壇”の手前…――
本来は”御床入りの儀式”の立会人が、座して拝むのための”板敷きの広間”では…――
三十名ほどの”長老”と”巫女”が、淫らに”乱交”していた――。
妖艶な媚香炉の匂いと、汗と涎液の迸る匂い…――
甘ったるい桃色の吐息と、男女の性器から噴き出す生臭い体液の匂い…――
好々爺の卑猥な哄笑と、股ぐらを叩きつける肉音…――
若い巫女娘の泣き、叫び、喘ぎ、よがり、震え上がる淫靡な艶声…――
むせぶほどに淫靡な”交尾”の香りが…――”祭壇の間”を重く濁し満たしていた。
「これは…いったい……何なのです…っ//…!?」
「ぬうっ…”長老”たちが御所内にいるのは、儀式立会のためでしょうが…っ…//」
純真無垢な少年エルフは言葉を失い…――、
怒りと恐怖に涙潤ます≪エルフ姉妹≫は、腕を握り締めてカタカタと震え上がる――とその時。
「あぁ…っ//…ああっ、ノ…ノナ様……ニナさ…ま……ううっ…助けて…ぇ……」
少年エルフ達のすぐ近くで、ふたりの”長老”に輪姦されていた”巫女”が…――涙を零しながら、”救い”を求めるように≪エルフ姉妹≫へ手を伸ばす。
それを見た瞬間――≪エルフ姉妹≫は義憤に吠えた。
「……っ!!……ええいっ”長老”がた、いったい”巫女”様たちに何を召されるか…っ…!!」
「神聖な御所にて、このような御振る舞い…っ…気でも触れられましたか…っ…!?」
甘汁の滴る”巫女”達の艶肉を夢中にむしゃぶっていた”長老”達は、突然の闖入者にどよめき惑う。
「むほっ……なっ、なにを言うとろうが…っ、そも…この”巫女”の娘どもが、我らに色目を流しより……そうよなぁ!?」
「まさにそれ…っ、双方合意の上の”和姦”なれば……これ清浄なる”清めの儀式”なるぞお…っ!」
「うむ左様っ、うむ左様…っ!」
「なん…ですって……よもや”長老”がたッ、さような痴れ事が通ずると御思いか…っ!?」
「恥を恥とも御思いになられぬとは…っ…もはや救いがたい…っ…!!」
ぬるりと交尾汁で濡れた陰部を晒したまま、道理の立たぬ”言開き”を語り古す”長老”の老獪翁衆に向けて、義憤と羞恥で気色ばむ≪エルフ姉妹≫が糾弾の声を上げる――とその時。
「――静粛に召されよ」
色欲をむさぼる老獪共の喚き声…――
玩ばれた貞操を儚んだ、若い娘達の啜り泣く声…――
その悪徳なる肉欲の饗宴に悲憤するエルフ姉妹の叫び声…――
この世すべての”醜悪”を煮詰めたように混沌する”祭壇の間”…――その臭気を斬り裂くように、ひとりの【黒曜耳長】が内殿扉を開け放ちながら現れた。
◆◇◆
「ダ、ダリエ隊長…っ…!」
「ご無事でございましたか…っ!」
”祭壇の間”の扉を開け放ち、女親衛隊を引き連れて、威風堂々に登場したのは――≪耳長族の隠れ里≫の軍務を司る”長老”にして【耳長族】の最高戦力である褐色麗人≪黒曜耳長≫だった。
「むほっ…これは…”長老ダリエ”…であるか……」
「いな待て…”長老ダリエ”よ。これは悲しき…心得違いなれば…っ…」
「うううむ左様っ!」
己らの窮地を理解し始めた”長老”の翁共が、後講釈に腐心する――だが、≪黒曜耳長≫がすぐさま言い放った意想外の言葉に、”長老”衆のどよめきが、さらに波打ち拡がる。
「――御安心召されよ。我ら親衛隊は……”長老”の御仁方を御救いしたいからこそ、参上したのです」
「むほっ…!?」
「いや待て”長老ダリエ”よ、それは如何ような意味じゃ…っ…」
「うんむ左様っ、そう言いながら……我らを取り囲む理由を聞きたしっ!」
聖御所を守護する女親衛隊に包囲された、二十数名の”長老”の翁共に対して――≪黒曜耳長≫は毅然と言い放った。
「我らが耳長族の郷里≪ラシル≫は――今この時も、恐れおぞましい”化け物”に侵略されつつあるのです」
「「「なっ、なんじゃと…っ…!?」」」
◆
「…う…っ//……//」
「ん…っ//……く…っ…//」
≪黒曜耳長≫の言葉を聞いた瞬間――なぜか≪エルフ姉妹≫の下腹部が”ジュク…ッ”とアツく鼓動する。
その甘ったるく動悸する下半身を手で押さえ、≪エルフ姉妹≫は頬を赤らめ艶っぽい吐息を漏らすと――ふと、なぜ自分達にここ数日間の記憶がないのかを思い返す。
その”答え”が、今から明かされると直感して…――
「それは――かつて唯の一匹にて小国をも滅ぼした高位魔獣種【淫夢悪魔】でございます」
仄暗い”祭壇の間”が、ザワッと驚きにざわめく。
が、≪黒曜耳長≫は冷淡に言葉を紡ぎ続ける。
「――”長老”の各々方も、約ひと月ほど前……”魔の森”境界部の≪女だけの村≫で起きた凄惨な事件は……御存知でありましょう?」
「むほっ…”淫夢悪魔襲撃事件”の事じゃな。無論知っておる……なあ?」
「まさにぃ…男衆は皆死に絶え、女衆は熟れも若きも皆輪姦され、辱められたとか……」
「ううむ左様。いとあはれなり」
「――むほっ!? よもや”長老ダリエ”は……我らが【淫夢悪魔】に誑かされたと申すか…っ…!?」
再び、仄暗い”祭壇の間”がザワッとどよめく。
それを眺める≪黒曜耳長≫は冷淡に――否、あざける様に――微笑んだ。
「畏れながらも仰る通り――さもなくば”長老”方が為された…この悪虐痴態のかぎり、御説明できまするか?」
その≪黒曜耳長≫の言葉に――老獪なる”長老”衆は瞬く間に思慮する。
【淫夢悪魔】の種族特性――≪魅惑≫――その妖艶なる美貌にて”男を洗脳する”という凶悪権能の前には、”長老”とて抵抗できないのは必定であり”罪に非ず”――
”淫魔”に誑かされるは”恥”なれど――このままであれば”淫行の処罰”は免れない。なれば”長老”衆の取るべき道は――ひとつであった。
「む…ほっ、なるほど……よくよく思慮せば、”淫魔”の所業に疑いなし…っ」
「い、いかにも…っ」
「ううむむ左様…っ」
仄暗い”祭壇の間”の暗がりに隠れて――≪黒曜耳長≫の口唇がニタリと歪み微笑む。
「無論、耳長族の叡智の象徴たる”長老”の御仁方全員が、【淫夢悪魔】に誑かされたとは申しませぬ…――ただ、一部に潜り込まれた可能性はありや……と?」
「むっほ…っ!?……なるほど、よくよく思慮せば……先ずもって巫女達とまぐわいたる痴れ者こそ怪しければ……おぬしか?」
「んなぁ何を仰る…っ、そも…巫女姫様の”御褥”の風紀を乱したる貴殿こそ怪しければ…っ!」
「ううんむう左様っ!」
それが≪黒曜耳長≫による思考誘導とも気づかず、双方互いを訝り、疑心暗鬼に問い質しあう”長老”衆…――すでに”舞台”は≪黒曜耳長≫が掌握したも同然であった。
「――どうか静粛に召されよ。貴殿らは耳長族の叡智象徴の至宝”長老”なれば、万難を排して御救いしたい。そのためにも……この時かぎりは”長老”であり”女”でもある、この私≪黒曜耳長≫に”執政全権”を委譲願いたい。異論はありますまいな?」
「む…むほ…っん……む、無論である。汝、”長老ダリエ”に全権を委ねようぞ……」
「し、しかし…”淫魔”に洗脳されたる者を探る術なぞ…ありやなしや…っ…」
「ううむ左様ぅ…」
「御安心召されよ。これより”長老”の御仁方全員には……聖御所の地下にある”天岩戸の間”へ御入室いただきたい」
「むほ…っ!? あれは窓一つない暗黒座敷…っ…謂わば”地下牢”ではあらぬか…っ…!?」
「いな待たれよ……かの幽玄室は≪世界樹≫の根元ゆえに、魔力も干上がる”精霊砂漠”なれば――」
「うむ左様。精霊一糸纏えぬ我らが≪世界樹≫の聖気を浴び続ければ……”淫魔”の邪気も祓えるというわけか…っ…」
「ふふっ…さすがは”長老”の御仁方、仰せの通りでございます。おそらく七晩もあれば”淫魔”の邪気も祓えましょう。それまでは御食膳なども我らで御運び致しますゆえ――”天岩戸の間”で御籠もりくださいませ」
「むぅ…まあ…なれば致し方あるまい……」
「まさに…それで”在らぬ疑い”をぬぐえるならば……」
「ううんむ左様……では往きましょうぞな」
◆◇◆
その光景を”少年エルフ”はずっと見ていた…――
女親衛隊が護送するなか”長老”の翁衆が、聖御所の地下玄室”天岩戸の間”へと幽閉されていくのを…――
そして、最後の”長老”翁が入牢すると…――≪黒曜耳長≫が精霊魔法を詠唱し、堅牢な”岩扉”を閉ざして封印を施した。
――”…ふっ…ふふっ……さらばだ…クソ爺ぃども…っ…”――
封印された”岩扉”の前で…――≪黒曜耳長≫がニタァと仄暗い微笑みを浮かべる。
気づけば、封印された”岩扉”の前には、先ほどまで貞淑を穢された悲しみに啜り泣いていたはずの”巫女”衆が…――暗澹たる微笑みを魅せていた。
それは偶発的な”事件”が発端だったのかもしれない…――
だが、”事の真相”は…――恋仲の殿方すら別離を強要され、寵愛相手の伴侶すら”里”の都合にて宛がわれ、儀式と説き伏されては”初めて”を散らされる…――そんな巫女衆による”復讐”だったのかもしれない。
その光景を…――”少年エルフ”はずっと見ていた。
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