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序章
#001.豚頭鬼(オーク)に堕ちる
しおりを挟む俺の名前は≪畑山大地≫――
日本の某ブラック企業で働く社畜童貞35歳というありふれた男である。
そんな俺の人生を一変させたのは――トラックに轢かれそうな幼女を助けた身代わりに死亡し、天国で女神様から”こちらの不手際でしたごめんなさいぃ…!”と謝罪を受ける、これまたよくある≪異世界転生≫だった……。
まあ、異世界転生系ラノベを愛読してきた俺としては大歓迎だけどさ!
こうして俺は歓喜しながら”剣と魔法”の異世界へ――
異世界大陸の宗主国≪ミッドガルド王国≫を統治する≪カーディナル王家≫――その第八王子≪クリストファン=カーディナル≫という美少年に転生したのであった!!
前世の記憶がある俺は、幼少期から神童と褒め称えられる。気分が良いねえ。
そのまま調子にのった俺は、愛読してきたラノベの内政チート知識をちょい出しすると――あっという間に内政&商業で大成功。いくつもの功績と、莫大な資産を築き上げてしまう。
さらには俺が15歳となり、異世界系ラノベでは定番の≪成人の儀式≫を迎えると、千年にひとりという伝説の職業≪勇者≫を神様より授かる。さらに調子にのった俺は、社会勉強だと家臣を説き伏せて≪冒険者≫になると――これまたあっという間に”魔竜退治”などの伝説的偉業を成し遂げ、国中から”大英雄”と賞賛されてしまう。
この頃になると女神様から貰った加護≪魅了≫の効果により、宮廷侍女のお姉さん達から女騎士や聖女様、果ては隣国の姫君までetc.etc……とにかく周囲のあらゆる美女達から求愛され、俺は異世界ハーレムをたっぷり満喫する事となった。マジ最高。
そして、これは数日前の内示通達で知ったのだが……王位継承権争いを断トツで勝ち抜いた俺は、ついに次期国王の称号≪王太子≫を継承する事になったらしい。
まさに順風満帆! 人生の勝ち組! これぞ異世界転生物語――!!
富も、名誉も、権力も、美女も……この世の全てを手に入れた俺は、まさに幸福の絶頂にあった――あの日、全てを奪われるまでは。
◆◇◆
「さぁ降りるが良い、ここが貴様の墓場となるのだクリストファン!」
馬車の客室から俺を蹴り落とすや、俺の異母兄である第一王子≪ゲッシュハルト=カーディナル≫は愉悦を噛み締めながら邪悪に微笑む。このド畜生が……。
斯く言う俺は、≪第一王子≫に喰わされた猛毒に体躯を蝕まわれ、激痛に悶えながら地面を這う事しか出来ずにいた。あまりの悔しさに、俺の喉奥から呻き声がほとばしる。
「くははっ、いい様ではないかクリストファン! 貴様のような愚弟の分際が、第一王子であるこの私に逆らうからこうなるのだ!」
≪第一王子≫が、俺を見下しながら哄笑する。
その間にも≪第一王子≫の部下達が、周囲にモンスターの死骸をバラ撒くなどの隠蔽工作を施していく。どうやらこの鬱蒼とした森が広がる街道で、俺は”モンスターに襲撃された”事になるらしい。
「こ、こんな事をしたら、お前は王位継承権を失う事になるぞ……」
「ああ、王位継承権を争う王子同士が殺戮抗争に奔らぬよう、我われ王族の魂魄に刻み込まれた≪不殺の誓約≫の事か? たしかに今ここで直接的・間接的を問わず貴様を殺してしまえば、私の身体には≪王族殺しの烙印≫が浮かび上がってしまう。そうなれば、私は”王位継承権”を失う事になるだろう……くははっ、安心するが良いぃ愚かなる弟よ。私は貴様を殺すつもりはないのだ」
≪第一王子≫はそう言いながら邪悪に顔を歪ませると、ニタァリと微笑む。
「貴様が口にした毒薬は、禁獣呪術≪蟲毒≫と云ってな…――幾万匹の毒蟲獣を一つの壺に封じ、最後の一匹になるまで共喰いさせる事で”飢餓と怨讐”を苗床に産み堕とさせたシロモノだ。これには致死性こそ無いが、この毒を喰らった者は、混沌属性”暴欲と悪食”にその体躯をじわじわと侵食され……生きたまま”魔獣”に変異してしまうのだよ!!」
≪第一王子≫がそう告げた瞬間…――俺の体躯に灼け爛れるような激痛が奔る。それと同時に俺の骨格や筋肉が、まるで沸騰するようにボコボゴォと膨張し始める。
自身を襲う肉体変異の激痛と恐怖に、俺は悲鳴を上げ、その醜態に≪第一王子≫が歓喜する。
「くははっ、どぉれ哀れな弟にもうひとつ良い事を教えてやろう。禁獣呪術≪蟲毒≫は蟲贄によって変異先の”魔獣”を選べてなぁ……これから貴様はその体躯をじわじわと変異させ、あの臭く醜い豚の化け物――【豚頭鬼-オーク-】――になるのだぁ!!」
何だとぉこのクソ野郎、よりにもよって人類の怨敵にして、異世界屈指の低俗モンスター【豚頭鬼】を選びやがるとは――!!
そんな俺の恨み言も、まるで灼熱の溶岩に体躯を沈めたかの様な激痛に呑み込まれる。暗くなる視界と激痛に沈む意識の中、第一王子の邪悪な哄笑だけがえらく響いて聞こえる――
「くははっ、宮廷内の美女を好き放題に侍らせてきた貴様が、あの醜悪な豚の化け物になるとは実に愉快だ! 安心しろクリストファン、私が王位を継承した暁には……これまで貴様が抱いてきた、隣国の姫君≪フィオナ≫も! 王国教会の聖女≪ソフィア≫も! あの生意気な女騎士≪アレシア≫も! 女賢者≪ルルゥ≫も! 全て私が娶ってやろう! まあその前にぃ……王国内のオーク狩りが先だがなぁ!! せいぜい私が王位を継承するまで冒険者などに狩られぬ事だ、哀れな”豚の化け物”よ!! あぁーはっはっはっ!!」
くそぉ、体躯が灼け爛れるように熱い、痛い、イタいッ!!
ちくしょう覚えてろよ第一王子、この怨み晴らさずにはおかんぞ――!!
絶対に、絶対に復讐してやるからな――!!
くそぉ痛え、ちくしょうがぁ――!!
覚えていや――がれ――
絶対に――復讐して――……
…………
……
◆◇◆
【氏名】クリストファン=カーディナル
【種族】ヒューム<階級S:王族>【性別】♂ 【年齢】18歳
【魂の位階】Lv100(MAX)
【神の加護】≪異世界言語・全≫ ≪経験値倍増≫ ≪帝王の器≫ ≪魅了≫
【能力値】耐久値:S++ 筋力値:S++ 敏捷値:S++
器用値:S++ 魔導値:S++ 幸運値:S++
【種族特性】≪職業制度≫
【職業】≪勇者≫
【職業特技】
≪無限収納≫ ≪鑑定真眼≫ ≪特技模倣≫ ≪全域探知≫
≪聖剣召喚≫ ≪結界兵装≫ ≪剛体覚醒≫ ≪無限魔力≫
≪神雷■法≫ ≪封■▽%≫、≪■#▲◎=□*◆+
■¥/◆&■$+□……――――
――ザザ――ザッ――ザッ……――
――ザッ――ザ…――――
――<種族データの変質を確認しました>――
――<情報を更新中……>――
――<情報を更新中……>――
――ザッ――ザザ――ザッ……――
――<種族が【オーク】に変更されました>――
――<種族特性【職業制度】を消失しました>――
――<【職業】及び【職業特技】を消失しました>――
――ザッ――ザザ――ザッ……――
――<能力値が初期値化されました>――
――<種族特性【怪力】を獲得しました>――
――<情報を更新中……>――
――<種族特性【性豪】の獲得に失敗しました。条件を満たして下さい>――
――ザッ――ザザ――ザッ……――
――<情報の更新を完了しました>――
【氏名】クリストファン=カーディナル
【種族】オーク<階級E>【性別】♂ 【年齢】18歳
【魂の位階】Lv100(MAX)
【神の加護】≪異世界言語・全≫ ≪経験値倍増≫ ≪帝王の器≫ ≪魅了≫
【能力値】耐久値:D 筋力値:E 敏捷値:G
器用値:F 魔導値:H 幸運値:H
【種族特性】≪怪力≫
【職業】-消失-
【職業特技】-消失-
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