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第四章 将軍様一局願います!
第1話 変わってしまった関係
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俺とバルギーの関係が変わった。
首に下がる印が示すのが、俺達の新しい関係。
奴隷と主。
所有物と所有者。
あの日バルギーに初めて抱かれてから、はや2週間。
俺の生活は一変した。
今まで感じていた信頼とか友情とか安心感とか、そう言うものはバルギーに全て取り上げられてしまった。
そして、俺は未だに何も理解していないままだ。
バルギーとの関係が変わってから、色んな事が変わった。
変わった事その1
まず、一番の変化。
俺とバルギーはセックスするようになった。
毎日毎晩、バルギーは俺の部屋にやって来て俺を抱いていく。
必ず香油を嗅がされて、理性を奪われて啼かされるんだ。
2週間前の俺へ。
あんなロケット砲みたいなもの突っ込まれて死にそうになってるかもしれないけど、安心しろ。
2週間後にはびっくりだけど、ちょっと慣れちゃうから。
慣れちゃうどころか、気持ちの良い所もバッチリ覚えさせられるから。
俺の尻は順応力抜群の優秀なやつだったよ。
香油の所為なのかバルギーがテクニシャンなのか、抵抗できるのは最初の方だけで、何時も直ぐに快楽に堕ちて抵抗が出来なくなっちゃうからな。
その後は、もうバルギーの良いようにされるがままで俺は情けなく喘ぐだけだ。
バルギーとはこんな事したく無いのにな。
バルギーは俺から信頼を取り上げた。
変わった事その2
部屋から出してもらえなくなった。
俺の好きな色だった水色の扉は、今は施錠を示す濃紺色だ。
バルギーが来るまで決して色は変わらない。
バルギーは俺から自由を取り上げた。
変わった事その3
バルギー以外の人間に会わなくなった。
今までは部屋を整えに使用人の人達が室内に入る事があったけど、それが無くなった。
時折庭に姿を見せていたヨムルも見なくなったし、バルギーの傍にいる事の多いリーフも見ない。
どうしても手入れの為に庭に人が入る時は、格子窓の外にかけられている魔法壁が黒くなって目隠しされてしまう。
凄いな。
魔法壁ってそんな機能もあるんだな。
とにかく、バルギーは徹底して他の人間が俺の視界に入らないようにしている。
会うのはバルギーだけだ。
バルギーは俺からバルギー以外の人間関係を取り上げた。
変わった事その4
部屋にあった沢山の衣装箱が消えた。
バルギーに贈られた大量の服や靴が入った衣装箱がいつの間にか無くなっていた。
俺が寝てる間に運ばれたのかな。
全部無くなったわけじゃなくて1箱は残ってるんだけど、その中に入っているのは室内着だけだ。
外着は一切無い。靴に関しては室内ばきも無い。
多分、俺の脱走防止なんだと思う。
服や靴がなければ、外に出れないと思ってんだろうな。
俺がこの世界に来た時に身に付けていたものも無くなってるし。
バルギーが俺を外に出す気が無いのは、よく分かった。
バルギーは俺から外の世界を取り上げた。
変わった事その5
着る服が変わった。
奴隷らしく、ボロボロの服を着ているわけじゃ無い。
むしろ多分上等な服を着せられていると思う。
変わったと言うのは、服の形とかだな。
前は被るタイプの服が多かったけど、今は全部前開きだ。
甚平みたいに紐で留めるタイプだったり、着物みたいに腰帯で留めたりする服が多い。
数は少ないけどボタン式の服もある。
だけど、それらは大体ボタンの数が少ない。
つまりどう言う事って、全部脱がせやすい服ってことだ。
とにかく、バルギーがヤリやすい為だけの格好だ。
バルギーは俺から尊厳を取り上げた。
変わった事その6
バルギーは俺と目を合わせなくなって、あまり会話をしてくれなくなった。
朝・晩の2回、俺に食事を持って来てくれるけど、ほとんど俺と目を合わせない。
掛けてくれるのは、必要最低限の言葉ばっかりだ。
あと、夜に俺のベッドに入って来る時は色々と言葉を掛けてくる。
だけど、それは「可愛い」とか「気持ちいいな」とかそう言う類の言葉が多いし、俺の返答を必要としない一方的な言葉ばっかりだ。
俺との対話は望まれていない。
だから、俺は最近エリーとしかまともに話をしていない。
エリーは俺の言葉を理解して、ちゃんと反応してくれる。
だけど、エリーは喋れない。
もちろんエリーに不満なんかある筈がないけど、やっぱり人との会話とは違うからな。
部屋に響くのは俺の声だけだ。
それがちょっと・・・・・・いや、かなり寂しい。
バルギーは俺から意思を取り上げた。
あと、こうなってから気付いた事だけど、バルギーが与えてくれたこの部屋は人を閉じ込める為の部屋だった。
唯一外へ行ける扉はバルギーの部屋へ繋がっていて、扉を開けることが出来たとしても絶対にバルギーのいるベッドを通らないといけない配置になっている。
綺麗だと思ってた格子窓も、ただの檻の柵だ。
しかも風呂もトイレも完備されているから、あとは食べるものさえ運んで貰えれば、この空間内で生活が完結してしまう。
最初は日光がよく入って気持ちの良い部屋だと思っていた。
壁のタイルとか絨毯とか家具とかも、グレーが基調のこの屋敷の中では浮いていると思うほどカラフルで華やかだとも感じていた。
今なら分かる。
陽のよく入る作りは、ただ住人の健康を害さない為のもの。
カラフルな内装は、部屋を出れない住人を退屈させない為の工夫。
罪人を閉じ込めるような粗末な扱いでは無くても、ここは牢獄以外の何物でもない。
住人を大切に閉じ込める為の牢獄だ。
日中、誰も来ない部屋で静かに過ごすのは寂しくて仕方ない。
寂しさが募るのにつれて、エリーに話しかける量が増えた。
ちょっとした事で、大袈裟に独り言を言ってみたりもして。
誰も返事を返してくれない静かな部屋の中、俺の虚しい声だけが響いている。
唯一、この部屋に来てくれるバルギーも俺の言葉は殆ど無視してるしな。
何より、あの感情の読めない冷たい目で見られるのが一番寂しくて辛い。
俺が一番怖いと思ってた事が現実になったのだと思い知らされるから。
優しいバルギーが、俺の事をモノみたいに見てきたらどうしようってずっと思ってた。
だから、どんなに信頼を寄せていても、異世界から来たことや竜達と話せる事を言えなかった。
バルギーとの関係が変わっちまう事が怖かったから。
でも。
結局、言わなくても今の状況だ。
何がいけなかったんだろな。
なんでバルギーはあんな目で俺を見るんだろ。
感情を見せない、温かみのない目。
あの目を向けられる度に、針で刺されたみたいに胸が痛むんだ。
日が落ちて外が暗くなった頃、濃紺色の扉が水色に戻った。
それは、バルギーがやって来た合図。
ガチャリと扉が開けば、夜食を手にしたバルギーが静かに部屋に入ってきた。
直ぐに窓辺に座る俺の前に皿が並べられる。
皿の上を見れば、俺の好物ばかりが乗せられていた。
バルギーが無言のまま手際良く取り皿へと料理を移していく。
「食べなさい」
それだけ言って、俺にその皿を渡してきた。
俺が特に好きな物を多めに入れつつ、俺が食べれるくらいの量を盛った皿。
こういうところは、今までと変わらずなんだよなぁ。
優しいんだか、優しくないんだか分かんねぇな。
渡された料理を口に運べば、それを見てバルギーも一緒に食事を始める。
こんな事になるまでは、食事の時間はバルギーと雑談を楽しむ時間だった。
その日どんな事があったのか、他愛もない内容の話でもバルギーは楽しそうに聞いてくれて俺も凄く楽しかった。
でも、今は静かな食事だ。
はっきり言って、超苦痛。
会話のない重苦しい空気の中、モソモソと食事をするのだ。
もう、お葬式状態だ。
この息苦しい空気を変えたくて、何度かどうでも良い話を振ってみたりもした。
だけど、バルギーはそれに一言二言返すだけで全然会話は広がらない。
って言うか、バルギーから会話をしようという気持ちが全く伝わってこないんだから仕方がない。
でも、俺は諦められなかった。
バルギーとちゃんと話をしたい。
何でこんな状況になったのか、その理由を知りたいし。
バルギーが何を考えているのか理解したい。
俺たちは、ちゃんと話し合わなければならないから。
だから、無駄だと分かっていても、必死で会話のきっかけを探してしまう。
「きょ・・・今日の肉は、ちょっと辛くて美味いな!」
「・・・・あぁ」
「・・どんな調味料使ってんだろうな?」
「さぁな」
「・・・・・あ、今日の朝さ、庭見たら一面に霜が降りてたぞ」
「そうか」
「芝が白く凍っててさ、凄い寒そうだった」
「そうか」
「・・・・・」
「・・・・・」
はい、終~了~。
すっげぇ、つまんねぇ会話しちゃった。
仕方ないじゃん!
2週間、この部屋に閉じこもりっぱなしなんだもん。
正直、話のネタなんかねぇのよ!
俺が黙れば、再び部屋に居心地の悪い沈黙が降りる。
会話のきっかけも何も無いな、全く。
どうやったら、バルギーは俺と話をしてくれるんだろうか。
食事が終われば、バルギーは当たり前のように俺をベッドへと連れていく。
ちなみにエリーは蓋付きの籠に入れられて、自力で蓋を開けられないように重石代わりに本を積まれている。
ごめんな、エリー。
後でちゃんと出してやるからな。
エリーを気にしている間にベッドの上に降ろされて、すぐにバルギーが覆い被さってきた。
こうなるともう、逃げることは絶対にできない。
あとはバルギーの気が済むまで、好きなようにされるしかないんだ。
言っておくが、俺だってこの2週間無抵抗だった訳じゃないぞ。
最初のうちはこれを回避しようと全力で抵抗したんだ。
でもそうすると、またあの枷をつけられて初日と同じ目に合わされる。
それを何度か繰り返して、俺はようやく無駄な抵抗をするのは諦めて今に至るって感じだ。
「う“ぅ”っーー・・」
体内に侵入してくるソレに、どうしても呻き声が漏れてしまう。
この2週間ですっかり慣れてしまった行為でも、この瞬間だけはどうしても苦しくて辛い。
どんなに尻をぐちゃぐちゃに解されても、あのデカいのが入る瞬間の苦しさだけは慣れない。
先の一番太い部分がミチミチと俺の尻をこじ開けてくる。
痛みに半泣きになれば、俺の気を紛らわそうとするようにバルギーの手が股に伸びてきて快感を引き出すように萎えたモノを扱き出す。
「っ・・・力を抜きなさい」
多分、バルギーも痛いんだろう。
少し苦しげに言ってくるけど腰を引く気は無いらしくて、少しずつ少しずつ俺の中に侵入してくる。
「うあっ・・っっ!!」
一番太い部分が穴をこじ開け、ズッと完全に中に入り込んだ。
そうなれば、あとは引っかかるものも無くて残りの部分がズプズプと腹の奥へと入ってくる。
凄まじい圧迫感に、息が止まる。
ズズ、ズズっと信じられないくらい奥まで入り込んできて、ようやくバルギーの腰が止まった。
「・・・ここまでだな」
その言葉に、アレが最奥まで到達した事を知らされる。
それでも全部は入り切っていないんだから、バルギーのアレはマジで恐ろしい。
「はっ・・はっ・・・うぁ・・」
あまりの苦しさに、荒く息継ぎを繰り返してしまう。
何が辛いって、これで終わりじゃないって事だよ。
むしろこれが始まりだ。
挿れたからには、動いて出すとこまでがワンセットだもんね。
これから、この恐怖のデカブツで内臓をぐちゃぐちゃに掻き回されるんだ。
無理ー。
ほんと無理ー。
「うぅ・・・動かな・・で・・」
「分かっている。大丈夫だケイタ」
死にそうな気持ちで懇願すれば、バルギーが優しい手つきで俺の乱れた髪をかき上げてきた。
そしてそのまま俺が慣れるまで、バルギーは動かずに待ってくれる。
意外なことに、バルギーの抱き方は最初の時のあれを除けば、想像していたよりも優しかった。
いや、この行為自体は全く優しく無いんだけどね。
それでも、バルギーが可能な限り俺を傷つけないようにしているのは伝わってくる。
今みたいな状況であれば、俺が慣れるまで決して動かないし、強引に事を進める事は基本無い。
「はぁ・・はぁっ・・ん、ん・・」
腹の中のモノに慣れてきて俺が落ち着き始めたのを見計らって、バルギーが慎重に動き出す。
何時も必ず嗅がされる香油も追加で嗅がされて、俺のモノもまた甘く刺激される。
バルギーの動きはゆっくりで丁寧だ。
まるで、俺に覚えさせるように腰を揺さぶってくる。
「ケイタ、きちんと私を覚えなさい。他の人間は全て忘れるんだ。私だけ覚えていればいい」
あぁそっか、俺はバルギーから抱かれ方を教え込まれてるのか。
っつーか、こんなセックスはバルギーとしかしてない。
風俗で前立腺マッサージとかあるのは知ってたけど、俺はやったことないし。
後ろは、そもそもバルギーしか知らねぇっつーんだ。
て言うか、受け入れる側がこんなに大変だったなんて知らなかった。
今まで相手してくれてた女の子達は偉大だな。
俺何も知らずにただ喜んで腰振ってたけど、皆なんて寛容で優しかったんだ。
バルギーに揺さぶられながら、思わず過去にお付き合いしていた女の子達を思い出していたら、バルギーの目つきが鋭くなった。
「ケイタ?何を考えている。誰の事を考えているのだ」
ほんの一瞬気を逸らしただけなのに、バルギーの声が尖る。
えー、何で俺が他の人間の事を考えてたって分かるんだよー。
エスパーなのか?
「私以外の事は考えるな」
「うあっ・・待っ・・あっ・・!」
少し苛立たしげな声と共に、バルギーが腰の動きを速めてきた。
乱暴とまではいかないけど、いつもよりも少し強い抱き方に俺の口から情けない悲鳴が上がる。
でも、情けないのは悲鳴だけじゃない。
こんなに辛いのに。
なのに。
ソレと同じくらい気持ちが良い。
この2週間でバルギーに教え込まれた、後ろの気持ちよさ。
男の癖に、男に挿れられて喜ぶなんて。
恥ずかしくて死にてぇ。
涙が出そうになる程の羞恥の中でふとバルギーを見れば、ブラウンの瞳が濃い色欲に濡れていた。
セックスしている最中だけは、冷たい目にも熱が籠るんだよな。
「ケイタ・・・ケイタ・・・」
俺を揺さぶりながら、まるでバルギーの方が縋るような声を出す。
駄目だ。
やっぱりバルギーの考えている事がさっぱり分からん。
邪険にしたいのか、モノみたいな扱いをしたいのか、それとも優しくしたいのか。
全然理解できない。
バルギー、何を考えているのか俺に教えてくれよ。
何で俺にこんな事するんだ。
俺馬鹿だからさ、言ってくれなきゃ何も分かんねぇんだよ。
首に下がる印が示すのが、俺達の新しい関係。
奴隷と主。
所有物と所有者。
あの日バルギーに初めて抱かれてから、はや2週間。
俺の生活は一変した。
今まで感じていた信頼とか友情とか安心感とか、そう言うものはバルギーに全て取り上げられてしまった。
そして、俺は未だに何も理解していないままだ。
バルギーとの関係が変わってから、色んな事が変わった。
変わった事その1
まず、一番の変化。
俺とバルギーはセックスするようになった。
毎日毎晩、バルギーは俺の部屋にやって来て俺を抱いていく。
必ず香油を嗅がされて、理性を奪われて啼かされるんだ。
2週間前の俺へ。
あんなロケット砲みたいなもの突っ込まれて死にそうになってるかもしれないけど、安心しろ。
2週間後にはびっくりだけど、ちょっと慣れちゃうから。
慣れちゃうどころか、気持ちの良い所もバッチリ覚えさせられるから。
俺の尻は順応力抜群の優秀なやつだったよ。
香油の所為なのかバルギーがテクニシャンなのか、抵抗できるのは最初の方だけで、何時も直ぐに快楽に堕ちて抵抗が出来なくなっちゃうからな。
その後は、もうバルギーの良いようにされるがままで俺は情けなく喘ぐだけだ。
バルギーとはこんな事したく無いのにな。
バルギーは俺から信頼を取り上げた。
変わった事その2
部屋から出してもらえなくなった。
俺の好きな色だった水色の扉は、今は施錠を示す濃紺色だ。
バルギーが来るまで決して色は変わらない。
バルギーは俺から自由を取り上げた。
変わった事その3
バルギー以外の人間に会わなくなった。
今までは部屋を整えに使用人の人達が室内に入る事があったけど、それが無くなった。
時折庭に姿を見せていたヨムルも見なくなったし、バルギーの傍にいる事の多いリーフも見ない。
どうしても手入れの為に庭に人が入る時は、格子窓の外にかけられている魔法壁が黒くなって目隠しされてしまう。
凄いな。
魔法壁ってそんな機能もあるんだな。
とにかく、バルギーは徹底して他の人間が俺の視界に入らないようにしている。
会うのはバルギーだけだ。
バルギーは俺からバルギー以外の人間関係を取り上げた。
変わった事その4
部屋にあった沢山の衣装箱が消えた。
バルギーに贈られた大量の服や靴が入った衣装箱がいつの間にか無くなっていた。
俺が寝てる間に運ばれたのかな。
全部無くなったわけじゃなくて1箱は残ってるんだけど、その中に入っているのは室内着だけだ。
外着は一切無い。靴に関しては室内ばきも無い。
多分、俺の脱走防止なんだと思う。
服や靴がなければ、外に出れないと思ってんだろうな。
俺がこの世界に来た時に身に付けていたものも無くなってるし。
バルギーが俺を外に出す気が無いのは、よく分かった。
バルギーは俺から外の世界を取り上げた。
変わった事その5
着る服が変わった。
奴隷らしく、ボロボロの服を着ているわけじゃ無い。
むしろ多分上等な服を着せられていると思う。
変わったと言うのは、服の形とかだな。
前は被るタイプの服が多かったけど、今は全部前開きだ。
甚平みたいに紐で留めるタイプだったり、着物みたいに腰帯で留めたりする服が多い。
数は少ないけどボタン式の服もある。
だけど、それらは大体ボタンの数が少ない。
つまりどう言う事って、全部脱がせやすい服ってことだ。
とにかく、バルギーがヤリやすい為だけの格好だ。
バルギーは俺から尊厳を取り上げた。
変わった事その6
バルギーは俺と目を合わせなくなって、あまり会話をしてくれなくなった。
朝・晩の2回、俺に食事を持って来てくれるけど、ほとんど俺と目を合わせない。
掛けてくれるのは、必要最低限の言葉ばっかりだ。
あと、夜に俺のベッドに入って来る時は色々と言葉を掛けてくる。
だけど、それは「可愛い」とか「気持ちいいな」とかそう言う類の言葉が多いし、俺の返答を必要としない一方的な言葉ばっかりだ。
俺との対話は望まれていない。
だから、俺は最近エリーとしかまともに話をしていない。
エリーは俺の言葉を理解して、ちゃんと反応してくれる。
だけど、エリーは喋れない。
もちろんエリーに不満なんかある筈がないけど、やっぱり人との会話とは違うからな。
部屋に響くのは俺の声だけだ。
それがちょっと・・・・・・いや、かなり寂しい。
バルギーは俺から意思を取り上げた。
あと、こうなってから気付いた事だけど、バルギーが与えてくれたこの部屋は人を閉じ込める為の部屋だった。
唯一外へ行ける扉はバルギーの部屋へ繋がっていて、扉を開けることが出来たとしても絶対にバルギーのいるベッドを通らないといけない配置になっている。
綺麗だと思ってた格子窓も、ただの檻の柵だ。
しかも風呂もトイレも完備されているから、あとは食べるものさえ運んで貰えれば、この空間内で生活が完結してしまう。
最初は日光がよく入って気持ちの良い部屋だと思っていた。
壁のタイルとか絨毯とか家具とかも、グレーが基調のこの屋敷の中では浮いていると思うほどカラフルで華やかだとも感じていた。
今なら分かる。
陽のよく入る作りは、ただ住人の健康を害さない為のもの。
カラフルな内装は、部屋を出れない住人を退屈させない為の工夫。
罪人を閉じ込めるような粗末な扱いでは無くても、ここは牢獄以外の何物でもない。
住人を大切に閉じ込める為の牢獄だ。
日中、誰も来ない部屋で静かに過ごすのは寂しくて仕方ない。
寂しさが募るのにつれて、エリーに話しかける量が増えた。
ちょっとした事で、大袈裟に独り言を言ってみたりもして。
誰も返事を返してくれない静かな部屋の中、俺の虚しい声だけが響いている。
唯一、この部屋に来てくれるバルギーも俺の言葉は殆ど無視してるしな。
何より、あの感情の読めない冷たい目で見られるのが一番寂しくて辛い。
俺が一番怖いと思ってた事が現実になったのだと思い知らされるから。
優しいバルギーが、俺の事をモノみたいに見てきたらどうしようってずっと思ってた。
だから、どんなに信頼を寄せていても、異世界から来たことや竜達と話せる事を言えなかった。
バルギーとの関係が変わっちまう事が怖かったから。
でも。
結局、言わなくても今の状況だ。
何がいけなかったんだろな。
なんでバルギーはあんな目で俺を見るんだろ。
感情を見せない、温かみのない目。
あの目を向けられる度に、針で刺されたみたいに胸が痛むんだ。
日が落ちて外が暗くなった頃、濃紺色の扉が水色に戻った。
それは、バルギーがやって来た合図。
ガチャリと扉が開けば、夜食を手にしたバルギーが静かに部屋に入ってきた。
直ぐに窓辺に座る俺の前に皿が並べられる。
皿の上を見れば、俺の好物ばかりが乗せられていた。
バルギーが無言のまま手際良く取り皿へと料理を移していく。
「食べなさい」
それだけ言って、俺にその皿を渡してきた。
俺が特に好きな物を多めに入れつつ、俺が食べれるくらいの量を盛った皿。
こういうところは、今までと変わらずなんだよなぁ。
優しいんだか、優しくないんだか分かんねぇな。
渡された料理を口に運べば、それを見てバルギーも一緒に食事を始める。
こんな事になるまでは、食事の時間はバルギーと雑談を楽しむ時間だった。
その日どんな事があったのか、他愛もない内容の話でもバルギーは楽しそうに聞いてくれて俺も凄く楽しかった。
でも、今は静かな食事だ。
はっきり言って、超苦痛。
会話のない重苦しい空気の中、モソモソと食事をするのだ。
もう、お葬式状態だ。
この息苦しい空気を変えたくて、何度かどうでも良い話を振ってみたりもした。
だけど、バルギーはそれに一言二言返すだけで全然会話は広がらない。
って言うか、バルギーから会話をしようという気持ちが全く伝わってこないんだから仕方がない。
でも、俺は諦められなかった。
バルギーとちゃんと話をしたい。
何でこんな状況になったのか、その理由を知りたいし。
バルギーが何を考えているのか理解したい。
俺たちは、ちゃんと話し合わなければならないから。
だから、無駄だと分かっていても、必死で会話のきっかけを探してしまう。
「きょ・・・今日の肉は、ちょっと辛くて美味いな!」
「・・・・あぁ」
「・・どんな調味料使ってんだろうな?」
「さぁな」
「・・・・・あ、今日の朝さ、庭見たら一面に霜が降りてたぞ」
「そうか」
「芝が白く凍っててさ、凄い寒そうだった」
「そうか」
「・・・・・」
「・・・・・」
はい、終~了~。
すっげぇ、つまんねぇ会話しちゃった。
仕方ないじゃん!
2週間、この部屋に閉じこもりっぱなしなんだもん。
正直、話のネタなんかねぇのよ!
俺が黙れば、再び部屋に居心地の悪い沈黙が降りる。
会話のきっかけも何も無いな、全く。
どうやったら、バルギーは俺と話をしてくれるんだろうか。
食事が終われば、バルギーは当たり前のように俺をベッドへと連れていく。
ちなみにエリーは蓋付きの籠に入れられて、自力で蓋を開けられないように重石代わりに本を積まれている。
ごめんな、エリー。
後でちゃんと出してやるからな。
エリーを気にしている間にベッドの上に降ろされて、すぐにバルギーが覆い被さってきた。
こうなるともう、逃げることは絶対にできない。
あとはバルギーの気が済むまで、好きなようにされるしかないんだ。
言っておくが、俺だってこの2週間無抵抗だった訳じゃないぞ。
最初のうちはこれを回避しようと全力で抵抗したんだ。
でもそうすると、またあの枷をつけられて初日と同じ目に合わされる。
それを何度か繰り返して、俺はようやく無駄な抵抗をするのは諦めて今に至るって感じだ。
「う“ぅ”っーー・・」
体内に侵入してくるソレに、どうしても呻き声が漏れてしまう。
この2週間ですっかり慣れてしまった行為でも、この瞬間だけはどうしても苦しくて辛い。
どんなに尻をぐちゃぐちゃに解されても、あのデカいのが入る瞬間の苦しさだけは慣れない。
先の一番太い部分がミチミチと俺の尻をこじ開けてくる。
痛みに半泣きになれば、俺の気を紛らわそうとするようにバルギーの手が股に伸びてきて快感を引き出すように萎えたモノを扱き出す。
「っ・・・力を抜きなさい」
多分、バルギーも痛いんだろう。
少し苦しげに言ってくるけど腰を引く気は無いらしくて、少しずつ少しずつ俺の中に侵入してくる。
「うあっ・・っっ!!」
一番太い部分が穴をこじ開け、ズッと完全に中に入り込んだ。
そうなれば、あとは引っかかるものも無くて残りの部分がズプズプと腹の奥へと入ってくる。
凄まじい圧迫感に、息が止まる。
ズズ、ズズっと信じられないくらい奥まで入り込んできて、ようやくバルギーの腰が止まった。
「・・・ここまでだな」
その言葉に、アレが最奥まで到達した事を知らされる。
それでも全部は入り切っていないんだから、バルギーのアレはマジで恐ろしい。
「はっ・・はっ・・・うぁ・・」
あまりの苦しさに、荒く息継ぎを繰り返してしまう。
何が辛いって、これで終わりじゃないって事だよ。
むしろこれが始まりだ。
挿れたからには、動いて出すとこまでがワンセットだもんね。
これから、この恐怖のデカブツで内臓をぐちゃぐちゃに掻き回されるんだ。
無理ー。
ほんと無理ー。
「うぅ・・・動かな・・で・・」
「分かっている。大丈夫だケイタ」
死にそうな気持ちで懇願すれば、バルギーが優しい手つきで俺の乱れた髪をかき上げてきた。
そしてそのまま俺が慣れるまで、バルギーは動かずに待ってくれる。
意外なことに、バルギーの抱き方は最初の時のあれを除けば、想像していたよりも優しかった。
いや、この行為自体は全く優しく無いんだけどね。
それでも、バルギーが可能な限り俺を傷つけないようにしているのは伝わってくる。
今みたいな状況であれば、俺が慣れるまで決して動かないし、強引に事を進める事は基本無い。
「はぁ・・はぁっ・・ん、ん・・」
腹の中のモノに慣れてきて俺が落ち着き始めたのを見計らって、バルギーが慎重に動き出す。
何時も必ず嗅がされる香油も追加で嗅がされて、俺のモノもまた甘く刺激される。
バルギーの動きはゆっくりで丁寧だ。
まるで、俺に覚えさせるように腰を揺さぶってくる。
「ケイタ、きちんと私を覚えなさい。他の人間は全て忘れるんだ。私だけ覚えていればいい」
あぁそっか、俺はバルギーから抱かれ方を教え込まれてるのか。
っつーか、こんなセックスはバルギーとしかしてない。
風俗で前立腺マッサージとかあるのは知ってたけど、俺はやったことないし。
後ろは、そもそもバルギーしか知らねぇっつーんだ。
て言うか、受け入れる側がこんなに大変だったなんて知らなかった。
今まで相手してくれてた女の子達は偉大だな。
俺何も知らずにただ喜んで腰振ってたけど、皆なんて寛容で優しかったんだ。
バルギーに揺さぶられながら、思わず過去にお付き合いしていた女の子達を思い出していたら、バルギーの目つきが鋭くなった。
「ケイタ?何を考えている。誰の事を考えているのだ」
ほんの一瞬気を逸らしただけなのに、バルギーの声が尖る。
えー、何で俺が他の人間の事を考えてたって分かるんだよー。
エスパーなのか?
「私以外の事は考えるな」
「うあっ・・待っ・・あっ・・!」
少し苛立たしげな声と共に、バルギーが腰の動きを速めてきた。
乱暴とまではいかないけど、いつもよりも少し強い抱き方に俺の口から情けない悲鳴が上がる。
でも、情けないのは悲鳴だけじゃない。
こんなに辛いのに。
なのに。
ソレと同じくらい気持ちが良い。
この2週間でバルギーに教え込まれた、後ろの気持ちよさ。
男の癖に、男に挿れられて喜ぶなんて。
恥ずかしくて死にてぇ。
涙が出そうになる程の羞恥の中でふとバルギーを見れば、ブラウンの瞳が濃い色欲に濡れていた。
セックスしている最中だけは、冷たい目にも熱が籠るんだよな。
「ケイタ・・・ケイタ・・・」
俺を揺さぶりながら、まるでバルギーの方が縋るような声を出す。
駄目だ。
やっぱりバルギーの考えている事がさっぱり分からん。
邪険にしたいのか、モノみたいな扱いをしたいのか、それとも優しくしたいのか。
全然理解できない。
バルギー、何を考えているのか俺に教えてくれよ。
何で俺にこんな事するんだ。
俺馬鹿だからさ、言ってくれなきゃ何も分かんねぇんだよ。
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紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
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変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
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性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
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義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
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ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
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王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
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