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第三章 将軍様はご乱心!
第55話 フラグ
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竜達によってハチャメチャにされた軍の魔物討伐は、やることもなく予定日数を消化し静かに幕を閉じた。
実際に兵達が狩った魔物は少なかったけど、竜の置いていった獲物はどっさりだったから、街へ戻った時には市民から大きな歓声でもって出迎えられた。
イバン達は今までで一番暇で一番成果の大きな討伐だったと、居心地悪気に苦笑していた。
でも祭りとしてはとても盛り上がったみたいだな。
俺としては大きな走り茸を見れなかったのが残念だったんだけど、やっぱり珍しいから簡単には見れないもんらしい。
いつかは見れると良いな、茸の王様。
祭りが終わり、どこか浮ついた雰囲気も街から消えた頃、本格的な冬が始まった。
確かに雪は降らないけど、朝には霜が降りるくらいにはバッチリ寒い。
「ケイタ、今日はその外套では寒い。こちらの毛皮を羽織って行きなさい」
仕事へ行く準備をしていれば、バルギーが白い毛皮のコートを差し出してくる。
「いやー・・・流石にそれは仕事に着てくにはちょっと派手・・・」
工業街へ行くのに、そんなバッチリオシャレ着で行くのは恥ずかしい。
「駄目だ。風邪をひいたらどうする。しっかり暖かい恰好をしていきなさい」
着ていたコートを剥ぎ取られ、あれよあれよと言う間に歌舞伎町のホストみたいなコートを着せられた。
「これも持っていきなさい」
渡されたのは鶏卵位の金属の球体で、中には赤い魔法石が入れられてて暖かい。
手が冷たくなった時に握ったりする、つまりはカイロだ。
細い鎖が付いてて腰帯に着けるものらしいんだけど、俺はぶらぶらするのが気になるからエリーの籠と一緒に首に掛けてる。
エリーも暖かいだろうし、丁度良い。
「さぁ、折角だ。途中まで一緒に行こう」
身支度を整え終わったら、バルギーにそっと背中を押された。
「あ、うん」
「旦那様、ケイタ様、行ってらっしゃいませ」
「あぁ、行ってくる」
「リーフ、行ってきます」
「今日もすげぇ格好してるなお前は」
工房に着いた途端、ガングの厳つい片眉がクイっと上がった。
「うん、俺もそう思ってます」
「馬将軍様の見立てか?」
「はは、暖かい恰好してけって」
「確かに暖かそうではあるけどな。とても下っ端従業員には見えねぇ。どこぞの貴族のご令息みたいだぞ」
「いやー、ねー・・・」
ガングにイジられながら、目立つコートを脱いで仕事用の動きやすい服に着替える。
赤い魔法石を使った暖房が効いてるから、工房内は薄手の作業着でも全然問題ない。
「よし、エリー。今日も俺頑張ってくるから、ここで良い子で待っててな」
工房の一角、俺が仕事をする場所の近くに置かれた木箱にエリーをそっと下ろしてやれば、エリーも自分からジャンプして箱の中に飛び降りた。
木箱の中には小さな椅子やテーブル、ソファにベッドに引き出し、果ては小さな小さな積み木なんかもあって、完全なるドールハウスだ。
これはどうしたかと言うと、工房の職人達が面白がって用意したエリー専用待合室だ。
最初はエリーを気に入ったガングが、俺が仕事をしている間にエリーが待っていられるようにって、木箱に椅子とベッドを入れた簡単な部屋を置いてくれただけなんだけど、それを見た他の職人達も小さい家具を使うエリーが面白かったらしくて、何故か日に日に家具が増えていった。
しかもだ!
何が凄いって、どの家具にも茸マークが彫刻されていて、本当にエリー専用に作られてるんだ。
職人達のおふざけらしいけど、俺としては大満足だ。
これ・・・いつか自分の部屋に持って帰りたいな・・・。
箱の中に下ろしたエリーは、引き出しから服を引っ張りだして着替えている。
職人達が着ている仕事着と同じデザインの服。
これもいつの間にか用意されてたヤツだけど、エリーはここに居る間はこの服を着るのが好きらしい。
多分、俺の真似をしてるんだと思う。
たまらんな。
エリーは腕が生えたおかげで、自分で着替えられるようになったし、引き出しとかの家具も使えるようになった。
エリーがそうやって色んな事をするのを眺めるのは、とてつもなく楽しい。
多分、一日中でも余裕で見続けられる。
「はぁー、何度見ても面白ぇな」
俺と一緒に箱を覗き込んでいたガングが、感心したように呟いた。
「腕が生えて討伐から戻ってきた時は驚いたが、出来る事が格段に増えたな」
「ふへへへ、可愛いでしょう?」
「まぁ、お前が愛着を持つのも分かるな」
「エリー、仕事してくるなー」
手を振ったら、エリーも頑張ってこいと言うように手を振りかえしてくれた。
これだけで、俺のやる気はマックス充電されるってもんだ。
俺もエリーに負けていられないぜ。
この世界で出来ることをどんどん増やして、皆から子供扱いされないようにならないと。
そんで、一人前の大人として認めてもらいたい。
「よし、ケイタ。今日は新しい仕事を教えてやるから、気張っていけよ」
「はいっ」
だから、今日も頑張って働くぞ!
木屑まみれになりながら1日の仕事を終え、帰る支度を始める。
「いやー、やっぱりお前ぇは器用だな。仕事の覚えも早いし助かるわ」
「はは、言っても簡単な仕事ばっかりですからね」
「その簡単な仕事がまともに出来ねぇヤツが結構居るから困ってんだ」
ガングは日雇い連中の仕事ぶりが忘れられないみたいだ。
最近は俺以外のヤツは来てないから、どうやら募集をかけるのはやめたらしい。
忙しいけどその分仕事を独占できるから、俺としては嬉しい限りだけどな!
「俺、頑張るんで仕事どんどん投げてくださいね」
ガッツポーズをすれば、ガングが褒めるように俺の背中をひと叩きしてくれた。
「やる気があって助かる」
そして今日も仕事終わりの報告の為にザウラの店へと足を運ぶ。
「やっほーザウラー!仕事終わったぜー!」
「へーへー、お疲れさん」
工房で印をもらった依頼書を渡せば、いつものようにザウラが処理をしてくれる。
「そうだケイタ。お前が討伐に行っている間に、工房の親っさんから相談を受けてな」
「相談?なんの?」
「お前を専属にしたいそうだ」
「専属?」
「あぁ、お前の仕事ぶりが気に入ったらしい。お前ここんとこずっとこの工房に行ってるだろ?だから専属での契約もありなんじゃ無いかと思うんだが、どうだ」
「専属ってことは、仕事受けるのここだけになるってやつか」
「そうだ。今は日雇い契約だろ?これが一定期間での契約に変わる。期間は雇用主との相談になるが、1ヶ月とか3ヶ月とかだな。期間が終わって問題なければ、また更新って感じだ」
なるほど、つまり短期バイトが長期バイトになるって事だな。
「ちょっと詳しく聞きたいな」
「お、乗り気か?そうだな、まずは報酬は今よりも上がるぞ」
「おぉ、それは嬉しい」
「その代わり拘束時間も増える。今はお前が好きな時にここで依頼を受けて仕事に向かうが、決まった期間内はずっと仕事だ」
「うん、うん」
「まぁ、お前の場合は将軍様の都合もあるだろうからな。1日の労働時間とか休日の間隔とかは親っさんと要相談で決めればいいと思うが」
「あー、その辺はバルギーに聞いてみる」
「あと、今は仕事の度にここに来て依頼書を受け取って、終わればまた提出に戻るってのをやってるだろ?これも無くなる。契約期間の最初と終わりに一回ずつ来れば良い」
「えぇ~、ザウラに会えなくなっちゃうの~?俺寂しぃ~」
冗談混じりにクネクネとシナを作ってみたら、胡乱な視線を寄越された。
「・・・俺は静かになるから嬉しい」
「ひでぇ」
「それより、お前まだ住み込みでの仕事したいとか希望あるのか?」
「うん、もちろん。そこは変わらずだよ」
「そうか・・・なら、それも工房の親っさんに伝えておいてやる。しばらく専属を続けて、問題がなければ正式な従業員として雇って貰えるかもしれん。ここの工房は確か寮があったはずだからな」
「え、マジ?超ありがたい」
「お前の働きぶりが良かったからだ。親っさんもお前の事はかなり評価してるみたいだし、多分言えば前むきに検討してくると思うぞ」
「へへへ・・・」
そうか、俺評価されてるのか。嬉しいな。
「まぁ、そんな感じだ。あとは馬将軍様に相談しろ」
「分かったー」
「よし、それじゃ今日の分の報酬だ。無駄遣いすんなよ」
「あざーっす!」
ザウラの店から帰る間、気持ちは上がりっぱなしだった。
自分の仕事ぶりが評価された事、専属にと求めてもらえた事、収入アップ、どれもが嬉しい。
何よりも嬉しいのが、上手くいけば住み込みの仕事も決まるかもしれないって事。
この世界に来てまだ1年も経ってないから、生きて行くのに必要な知識も常識も何も足りていないのは分かってる。
でも、それでも、自立できる道筋が出来始めたのが嬉しかった。
今はバルギーに全部面倒を見てもらってて一人前と呼ぶには程遠いけど、やっぱり自分のことは自分で面倒見れるようになりたいもんな。
働いて生活をたてる、地球にいた頃は当たり前にしてた事だ。
そうやってちゃんと1人の大人として自立して、誰よりもバルギーに一人前だと認めて貰いたい。
それに、いつまでもバルギーん家のお客様なんてフワフワした立場でも居られないからな。
バルギーは何時までも居て良いって言うけど、現実はそんなん無理だろ。
あくまでも客は客なんだから。
大体、バルギーだっていつ結婚して家庭を持ってもおかしくない歳だし。
もしそうなった時に、いきなり家を出されても困るのは俺だ。
いや、バルギーだったらそれでも家に居て良いって言いそうだけど、俺が嫌だ。
新婚さんの家に居候とか、肩身狭すぎるだろ。
だから、やっぱりちゃんと自立出来るように頑張んないと。
バルギーとの生活は楽しいから、それが終わるのは少し寂しい気はするけど。
でも、仕事場は歩いても行けるくらい近い距離だから、会いたければいつだって会える。
俺とバルギーの関係が変わるわけじゃない。
とりあえず、今日帰ったらバルギーに仕事の話をしてみよう。
半人前で頼りないからか、俺を見るバルギーの目はいつも心配そうで不安そうだからな。
ちゃんと一人前の大人として自立できれば。
1人でもちゃんと生活が出来ると証明すれば。
その時は。
きっと、バルギーも安心出来るだろうから。
だから、今日は帰ったらバルギーと話をしよう。
実際に兵達が狩った魔物は少なかったけど、竜の置いていった獲物はどっさりだったから、街へ戻った時には市民から大きな歓声でもって出迎えられた。
イバン達は今までで一番暇で一番成果の大きな討伐だったと、居心地悪気に苦笑していた。
でも祭りとしてはとても盛り上がったみたいだな。
俺としては大きな走り茸を見れなかったのが残念だったんだけど、やっぱり珍しいから簡単には見れないもんらしい。
いつかは見れると良いな、茸の王様。
祭りが終わり、どこか浮ついた雰囲気も街から消えた頃、本格的な冬が始まった。
確かに雪は降らないけど、朝には霜が降りるくらいにはバッチリ寒い。
「ケイタ、今日はその外套では寒い。こちらの毛皮を羽織って行きなさい」
仕事へ行く準備をしていれば、バルギーが白い毛皮のコートを差し出してくる。
「いやー・・・流石にそれは仕事に着てくにはちょっと派手・・・」
工業街へ行くのに、そんなバッチリオシャレ着で行くのは恥ずかしい。
「駄目だ。風邪をひいたらどうする。しっかり暖かい恰好をしていきなさい」
着ていたコートを剥ぎ取られ、あれよあれよと言う間に歌舞伎町のホストみたいなコートを着せられた。
「これも持っていきなさい」
渡されたのは鶏卵位の金属の球体で、中には赤い魔法石が入れられてて暖かい。
手が冷たくなった時に握ったりする、つまりはカイロだ。
細い鎖が付いてて腰帯に着けるものらしいんだけど、俺はぶらぶらするのが気になるからエリーの籠と一緒に首に掛けてる。
エリーも暖かいだろうし、丁度良い。
「さぁ、折角だ。途中まで一緒に行こう」
身支度を整え終わったら、バルギーにそっと背中を押された。
「あ、うん」
「旦那様、ケイタ様、行ってらっしゃいませ」
「あぁ、行ってくる」
「リーフ、行ってきます」
「今日もすげぇ格好してるなお前は」
工房に着いた途端、ガングの厳つい片眉がクイっと上がった。
「うん、俺もそう思ってます」
「馬将軍様の見立てか?」
「はは、暖かい恰好してけって」
「確かに暖かそうではあるけどな。とても下っ端従業員には見えねぇ。どこぞの貴族のご令息みたいだぞ」
「いやー、ねー・・・」
ガングにイジられながら、目立つコートを脱いで仕事用の動きやすい服に着替える。
赤い魔法石を使った暖房が効いてるから、工房内は薄手の作業着でも全然問題ない。
「よし、エリー。今日も俺頑張ってくるから、ここで良い子で待っててな」
工房の一角、俺が仕事をする場所の近くに置かれた木箱にエリーをそっと下ろしてやれば、エリーも自分からジャンプして箱の中に飛び降りた。
木箱の中には小さな椅子やテーブル、ソファにベッドに引き出し、果ては小さな小さな積み木なんかもあって、完全なるドールハウスだ。
これはどうしたかと言うと、工房の職人達が面白がって用意したエリー専用待合室だ。
最初はエリーを気に入ったガングが、俺が仕事をしている間にエリーが待っていられるようにって、木箱に椅子とベッドを入れた簡単な部屋を置いてくれただけなんだけど、それを見た他の職人達も小さい家具を使うエリーが面白かったらしくて、何故か日に日に家具が増えていった。
しかもだ!
何が凄いって、どの家具にも茸マークが彫刻されていて、本当にエリー専用に作られてるんだ。
職人達のおふざけらしいけど、俺としては大満足だ。
これ・・・いつか自分の部屋に持って帰りたいな・・・。
箱の中に下ろしたエリーは、引き出しから服を引っ張りだして着替えている。
職人達が着ている仕事着と同じデザインの服。
これもいつの間にか用意されてたヤツだけど、エリーはここに居る間はこの服を着るのが好きらしい。
多分、俺の真似をしてるんだと思う。
たまらんな。
エリーは腕が生えたおかげで、自分で着替えられるようになったし、引き出しとかの家具も使えるようになった。
エリーがそうやって色んな事をするのを眺めるのは、とてつもなく楽しい。
多分、一日中でも余裕で見続けられる。
「はぁー、何度見ても面白ぇな」
俺と一緒に箱を覗き込んでいたガングが、感心したように呟いた。
「腕が生えて討伐から戻ってきた時は驚いたが、出来る事が格段に増えたな」
「ふへへへ、可愛いでしょう?」
「まぁ、お前が愛着を持つのも分かるな」
「エリー、仕事してくるなー」
手を振ったら、エリーも頑張ってこいと言うように手を振りかえしてくれた。
これだけで、俺のやる気はマックス充電されるってもんだ。
俺もエリーに負けていられないぜ。
この世界で出来ることをどんどん増やして、皆から子供扱いされないようにならないと。
そんで、一人前の大人として認めてもらいたい。
「よし、ケイタ。今日は新しい仕事を教えてやるから、気張っていけよ」
「はいっ」
だから、今日も頑張って働くぞ!
木屑まみれになりながら1日の仕事を終え、帰る支度を始める。
「いやー、やっぱりお前ぇは器用だな。仕事の覚えも早いし助かるわ」
「はは、言っても簡単な仕事ばっかりですからね」
「その簡単な仕事がまともに出来ねぇヤツが結構居るから困ってんだ」
ガングは日雇い連中の仕事ぶりが忘れられないみたいだ。
最近は俺以外のヤツは来てないから、どうやら募集をかけるのはやめたらしい。
忙しいけどその分仕事を独占できるから、俺としては嬉しい限りだけどな!
「俺、頑張るんで仕事どんどん投げてくださいね」
ガッツポーズをすれば、ガングが褒めるように俺の背中をひと叩きしてくれた。
「やる気があって助かる」
そして今日も仕事終わりの報告の為にザウラの店へと足を運ぶ。
「やっほーザウラー!仕事終わったぜー!」
「へーへー、お疲れさん」
工房で印をもらった依頼書を渡せば、いつものようにザウラが処理をしてくれる。
「そうだケイタ。お前が討伐に行っている間に、工房の親っさんから相談を受けてな」
「相談?なんの?」
「お前を専属にしたいそうだ」
「専属?」
「あぁ、お前の仕事ぶりが気に入ったらしい。お前ここんとこずっとこの工房に行ってるだろ?だから専属での契約もありなんじゃ無いかと思うんだが、どうだ」
「専属ってことは、仕事受けるのここだけになるってやつか」
「そうだ。今は日雇い契約だろ?これが一定期間での契約に変わる。期間は雇用主との相談になるが、1ヶ月とか3ヶ月とかだな。期間が終わって問題なければ、また更新って感じだ」
なるほど、つまり短期バイトが長期バイトになるって事だな。
「ちょっと詳しく聞きたいな」
「お、乗り気か?そうだな、まずは報酬は今よりも上がるぞ」
「おぉ、それは嬉しい」
「その代わり拘束時間も増える。今はお前が好きな時にここで依頼を受けて仕事に向かうが、決まった期間内はずっと仕事だ」
「うん、うん」
「まぁ、お前の場合は将軍様の都合もあるだろうからな。1日の労働時間とか休日の間隔とかは親っさんと要相談で決めればいいと思うが」
「あー、その辺はバルギーに聞いてみる」
「あと、今は仕事の度にここに来て依頼書を受け取って、終わればまた提出に戻るってのをやってるだろ?これも無くなる。契約期間の最初と終わりに一回ずつ来れば良い」
「えぇ~、ザウラに会えなくなっちゃうの~?俺寂しぃ~」
冗談混じりにクネクネとシナを作ってみたら、胡乱な視線を寄越された。
「・・・俺は静かになるから嬉しい」
「ひでぇ」
「それより、お前まだ住み込みでの仕事したいとか希望あるのか?」
「うん、もちろん。そこは変わらずだよ」
「そうか・・・なら、それも工房の親っさんに伝えておいてやる。しばらく専属を続けて、問題がなければ正式な従業員として雇って貰えるかもしれん。ここの工房は確か寮があったはずだからな」
「え、マジ?超ありがたい」
「お前の働きぶりが良かったからだ。親っさんもお前の事はかなり評価してるみたいだし、多分言えば前むきに検討してくると思うぞ」
「へへへ・・・」
そうか、俺評価されてるのか。嬉しいな。
「まぁ、そんな感じだ。あとは馬将軍様に相談しろ」
「分かったー」
「よし、それじゃ今日の分の報酬だ。無駄遣いすんなよ」
「あざーっす!」
ザウラの店から帰る間、気持ちは上がりっぱなしだった。
自分の仕事ぶりが評価された事、専属にと求めてもらえた事、収入アップ、どれもが嬉しい。
何よりも嬉しいのが、上手くいけば住み込みの仕事も決まるかもしれないって事。
この世界に来てまだ1年も経ってないから、生きて行くのに必要な知識も常識も何も足りていないのは分かってる。
でも、それでも、自立できる道筋が出来始めたのが嬉しかった。
今はバルギーに全部面倒を見てもらってて一人前と呼ぶには程遠いけど、やっぱり自分のことは自分で面倒見れるようになりたいもんな。
働いて生活をたてる、地球にいた頃は当たり前にしてた事だ。
そうやってちゃんと1人の大人として自立して、誰よりもバルギーに一人前だと認めて貰いたい。
それに、いつまでもバルギーん家のお客様なんてフワフワした立場でも居られないからな。
バルギーは何時までも居て良いって言うけど、現実はそんなん無理だろ。
あくまでも客は客なんだから。
大体、バルギーだっていつ結婚して家庭を持ってもおかしくない歳だし。
もしそうなった時に、いきなり家を出されても困るのは俺だ。
いや、バルギーだったらそれでも家に居て良いって言いそうだけど、俺が嫌だ。
新婚さんの家に居候とか、肩身狭すぎるだろ。
だから、やっぱりちゃんと自立出来るように頑張んないと。
バルギーとの生活は楽しいから、それが終わるのは少し寂しい気はするけど。
でも、仕事場は歩いても行けるくらい近い距離だから、会いたければいつだって会える。
俺とバルギーの関係が変わるわけじゃない。
とりあえず、今日帰ったらバルギーに仕事の話をしてみよう。
半人前で頼りないからか、俺を見るバルギーの目はいつも心配そうで不安そうだからな。
ちゃんと一人前の大人として自立できれば。
1人でもちゃんと生活が出来ると証明すれば。
その時は。
きっと、バルギーも安心出来るだろうから。
だから、今日は帰ったらバルギーと話をしよう。
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