飛竜誤誕顛末記

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第三章 将軍様はご乱心!

第53話 新しい友達

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『で・・・結局誰に名前をつければいいんだ?』

成り行きを見守っていたけど、この場合はこの小さい竜全員に名前をつけるってことになるのか?
【あ!お前が噂の人間か!】
【俺、この前夜の森で見たぞ】
【ケイタって言うんだよな】
あっという間に足元に小さい竜達が集まってくる。
猫とか犬くらいのサイズの地竜や飛竜だ。
あと小さい馬竜もいて、ポニーみたいで可愛い。
『う、うん。そう』
【名前を貰うヤツは決めてる!】
【皆で相談して決めたんだ】
どうやら、名前をつける竜は1匹らしい。
【名前を貰うのはこいつだ】
【こいつに名前をくれ】
皆に押されて前に出たのは、特に体の小さい飛竜だった。
鳩くらいのサイズだ。
【お、俺。皆の代表で名前貰う】
デュマンと同じプテラノドンタイプの飛竜が、俺の前でモジモジと手を揉み合わせている。
【皆で相談したんだ。誰が一番名前を貰うのに相応しいか】
【皆でいっぱい話した】
【それで決めたんだ。一番小さいヤツが名前を貰おうって】
『一番小さい?一番強いじゃなくて?』
【うん、俺たちの代表だから】
【小さくても大きい竜に勝てるってのを証明したかったの】
【だから森で一番小さいヤツが、大きい竜に勝った証に名前を貰うことにしたんだ】
おぉ、なんかかっこいいじゃないかコイツら。
『よし分かった!じゃぁ頑張っていい名前を考えないとな』
小さな竜が、まるで祈るように手を組んで期待の眼差しで俺を見上げてくる。
さぁ、この竜に合う名前ってなんだろう。
小さくても強い・・小さくても強い・・・。
『アントとかどうだ?』
【アント?それが俺の名前?】
『そう。俺が住んでたとこに居た小さな虫の名前』
【えぇ~、ムシー?】
『はは、そんなガッカリした顔するなよ。凄い虫なんだぞ。自分よりも大きい物を運ぶ力持ちなんだ。それに1匹は小さくて弱いかもしれないけど、群れになると凄い強いんだ。有名な種類だと、自分よりもずっとずっと大きいやつをあっという間に骨にしちゃったりとか。だから大きくて強い生き物も、その群れに会うと避けて通るくらいなんだ』
【凄い!】
『小さな巨人とも言われるんだぞ。お前達と同じだろ?お前達だと大竜か?小さな大竜』
【小さな大竜・・・・】
虫と聞いた時は不満そうな顔をしてた竜達だったけど、説明してやれば皆凄いキラキラした目になった。
『・・・どう?』
【それが良い!】
【小さな大竜!そんな事初めて言われた】
【お前、良いヤツだなぁっ】
皆が頷き合う中、実際名前を貰う竜はピュイと高い鳴き声を上げた。
【俺はアント!人間に名前を貰ったぞ、友達になった!】
周りの竜達に自慢するように一度高く舞い上がり、高らかに宣言する。
そして再び俺の前にストンと着地する。
『よろしくなアント。それに皆もな』
小さな竜達を見渡す。
『よろしく、小さな大竜達』
大きな竜達に勝った小さな竜達は、俺の言葉にニンマリと目を細め誇らしげに胸を張った。

【さーて、ここらでお開きだ。お前達そろそろ森に帰れ。人間達が気を失いそうだ】
良い雰囲気になった頃、デュマンが口を開いた。
振り向けば、人間達がっていうよりも主にカルシクが気を失いそうになっている。
額に玉汗がびっしりと浮かび、顔が真っ白だ。
どうした!死にそうだぞ!?
それにカルシク程じゃないけど、バルギーとイバンも緊張に強く歯を食いしばってるのが分かった。
そうだった。
竜と意思の疎通ができる俺はどうしても緊張感を欠いてしまうんだけど、バルギー達にとっては、竜に囲まれるって凄く危険を感じる状況だったんだ。
ごめん。
竜と話してて、ちょっと忘れてたわ。
【そうだな、ここまでにしよう。皆帰ろうぜー】
【帰ろう帰ろう。楽しかったなー】
デュマンの言葉を皮切りに俺達を囲んでいた竜達が満足気にバラけ始め、森へと去り始める。
【ふむ。今回は負けたが次回はワシが勝つからな。ケイタ、今のうちにワシの名前を考えておけ】
【おや、次は私だよ。ケイタ、私の為に美しい名前を用意しておいてね】
【ふん、次はワシだと言っておるだろう!お前はその次まで待っておれ】
【何言ってんだい。それならアンタが待ちな】
地響きとシロがブーブーと言い合いながら森へと入っていく。
【まぁまぁ、お前達。それはその時になったら分かるだろ。じゃぁなケイタ、また来年だ】
え?
森の中へと去っていく竜達が不穏な事を言っている。
【さぁ、帰るぞ】
【ケイタ、またな】
【また来年な】
ちょっとちょっと?
何?その来年って。
【次が楽しみだ】
【来年は俺たちも群れで狩ろう】
【それが良い。大物に挑戦したいぞ】
待って。
なに恒例行事にしようとしてんの?
皆当たり前のように来年がある事を前提にした挨拶でもって、森に帰っていくけど。
違う。
やらないぞ。
来年はもうやらないぞー!
って言いたいのに、竜達はどんどんと森へと姿を消していく。
【ケイタ、良い名前を考えてくれてありがとうな】
【名前を貰ったのは1匹だけど、俺達も勝った竜のうちだ。名前は無くてもお前の友達だろ?】
【小さな大竜って言ってくれて嬉しかったぞ!】
【また遊ぼうな!】
【じゃあな!】
【またねー】
勝利した小さい竜達もご機嫌に鳴きあいながら、森の中へと走り去っていく。
『・・・またねー。ハハハ』
来年。
来年ね。
どうなるかな、来年。
・・・・・うん、よし。
考えるのは止めよう。
そん時になりゃ、またどうにかなるだろう。
こうして竜の魔物狩り大会は、始まった時と同じように終わりも唐突なものだった。

「ハァァァ~~」
原っぱから野生の竜の姿があらかた消えたのを見届けた瞬間、カルシクが腹の底から息を吐き出し、ヘタリと腰を抜かした。
「し・・・死ぬかと思った・・・」
「カルシク、情けないぞ。将軍の前で何というザマだ」
イバンが叱る様に言うけど、その声にも余り覇気は無い。
「うぅ・・・申し訳ありません」
カルシクが半泣きな感じで立ち上がるけど、いつものビシっとした感じではなくてどこかヘニャっとした雰囲気がある。
疲れ果ててるな。
「構わんイヴァン。よく耐えた方だ」
お、バルギーは太っ腹だな。
「まぁ正直、私も生きた心地はしませんでしたけどね」
「あのような大きな地竜は初めて見たな」
「本当に。カルシクでは無いですが、悲鳴が喉までせり上がりましたよ」
地響きの登場シーンは、恐竜映画みたいでドキドキだったもんな。
俺も凄い興奮した。
うんうんと頷いていたら、3人の目が俺に向く。
「ケイタ、お前はやはり竜を怖がらないのだな。あの状況でそんなに平然としていられるとは」
「竜達も明らかにケイタへ興味を示していましたからね。あの地竜の顔が近づいてきた時は喰われるのではと思いましたが」
「恐らく我々が襲われなかったのも、ケイタがそばにいたお陰だろう」
そもそも竜が集まっちゃったのが、俺のせいなんだけどね。
「ケイタ、やはりお前は神の祝福を受けているようだ」
バルギーが疲れたような顔をしながらも、襲われなくて良かったと安堵の表情を見せた。
「それにしても・・・これが森に居たなんて」
少し気持ちが落ち着いたのか、アント達が置いていった獲物をイバンが見上げている。
大型バスサイズの銀色の毛玉。
こちらに背を向けた状態で置かれてるから、どんな姿なのか今一分からない。
これはあれかな。
「カルシク、これってもしかして話してた雷獣とか?」
あの会話はフラグだったんじゃね?
「違うよケイタ。雷獣はもう少し小さい」
答えてくれたのはイバンだったけど、なんだ違うのか。
「だけど同じくらい強くて危ない魔物だよ。これは月豹という豹が魔物化したものだ」
初めて聞く動物だな。
「もっと南の方にいる筈の魔物なのだが、まさかこの森にも居たとは・・・・」
「遭遇したのが我々ではなくて良かった」
「そんなにやばいの?」
「あぁ、簡単には討伐できん」
バルギーの言葉に魔物の姿をきちんと確認したくて、背中側から腹側へと回り込んでみた。
バルギー達も一緒についてくる。
『あーなるほど』
背中側からだと分からなかったけど、前から見たら腹や足に少し濃い銀色の豹柄が浮かび上がる大型猫の姿だった。
サーベルタイガーの様な鋭く大きな牙が特徴的だ。
これは強そうだな。
アント達、いくら群れだといってもよくこれを狩れたな。
やっぱり竜って強いんだな。
「ヴァルグィ!無事かっ」
皆で月豹を観察してたら、野営地から焦ったようなナルガスが走ってきた。
「野営地から見ていたが恐ろしい光景だったぞ。よく竜達に襲われなかったな」
「幸運だった」
「幸運なんてものじゃないぞ。あの状況で無傷で済むなんて。それに集まってきた理由も分からんが竜達はなぜ突然去っていったのだ」
「私に分かるわけ無かろう」
「また戻って来ないと良いのだが」
「とりあえず様子見だな。この獲物を取り戻しに来る可能性も高いであろう」
バルギーとナルガスが、点在する獲物の山を見渡す。
「まさか月豹まで見る羽目になるとは・・・この獲物の山はどうするか」
「これも様子見だな。下手に手を出して、取り戻しにきた竜達を怒らせてはまずい」
「将軍、とりあえず安全のために野営地全体に防護壁を作りますか」
「そうだな。それが良かろう」

【ケイターっ。やっと見つけたぞ、火鼠だ】
バルギー達が難しい仕事の話を始めたから、俺は月豹の巨大な肉球を突いていたんだけど、遠くからカイマンが嬉しそうに何か咥えて走ってくるのが見えた。
カイマンだけじゃない、アリとダイルもいる。
それと・・・・あれ?アントか?
【ケイタ、見ろ。デカイ火鼠だぞ】
カイマンが俺の前に赤っぽいデカイ鼠をボタリと落とした。
『っつーかアント?森に戻ったんじゃ無かったのか?』
カイマンに続いて俺の目の前に飛んできたアントに声を掛ければ、小さな飛竜は俺の肩にナチュラルにとまった。
【ケイタと友達契約をした者同士、改めてちゃんと挨拶しとこうと思って。ダイル達と話してた】
『なるほど』
【ケイタ、友達増えたな】
【遊び友達増えた】
ダイルとアリが楽しそうに尻尾を振る。
アリの上ではエリーも楽しそうに足ぶみをしてる。
【他の大陸の地竜と友達になるのは初めてだけど、茸とも友情を交わす事になるとは思わなかった】
アントが少し嬉しそうにクフフと笑った。
【ケイター、火鼠!みーてっ!みーてっ!】
皆で話してたら、カイマンが焦れた様に叫び出す。
『おっと、ごめんごめんカイマン。それが火鼠ってやつなんだな?』
【そう!こいつは凄い大っきい】
『うーん、俺初めて見るから普通の大きさが分かんねえな』
【普通のはこれの半分くらい】
『おぉ、そりゃデカイわ』
2倍って事だ。
【それでね、それでね、こいつ凄い面白いんだぞ】
『面白い?』
【うん、こいつは面白い】
【俺たち、これでよく遊ぶぞ】
ダイルとアリも頷いている。
『何が面白いの?』
【見てろ!】
カイマンが火鼠の尻尾を咥えたかと思ったら、そのまま勢いよく振り上げ力一杯地面に叩きつけた。
『うおっ』
グチャッという肉の潰れる音と同時に、火鼠の体が一瞬炎を纏った。
『え、何?今の』
叩きつけた瞬間だけ燃え上がったぞ。
【こいつの体、攻撃受けると燃えるんだ】
カイマンがそう言いながら、右に左に火鼠の死骸を叩きつける。
その度に、鼠の体がボワッ、ボワっと燃え上がる。
不思議な事に、全身を炎に包まれても毛皮は一切焦げていない。
きっと外敵に襲われた時に身を守る為、そういう生態をしているんだろうな。
地竜達は燃え上がる様が楽しいらしく、ダイルとアリも順番に火鼠を地面に叩きつけてはキャーっと喜んでる。
【ケイタもやってみろ!】
『えー・・・俺は見てるだけで良いよ』
その遊び、ちょっとグロいんだもん・・・・。
火が出るのは確かに面白いけど、叩きつける度に辺りに血が飛び散ってるぞ。
【そうなのか?楽しいぞ】
『うん、大丈夫。見てるだけで満足』
【そっかー】
【カイマン、あれやって、あれ】
【よしっやるぞ】
何々、今度は何やるの。
見てたらカイマンが後ろ足と尻尾でバランスを取って、スックと2本足で立ち上がる。
そして、両手をバンザイするみたいに上げたと思ったら、そのまま火鼠に向かって体を落とした。
『え、危なっ』
止める間も無く、火鼠がカイマンの腹の下で潰される。
と同時にカイマンを巻き込んで一際大きな炎が上がった。
『カイマーンっ!!』
焼きカイマンのできあがりか!?と焦ったけど、炎はやっぱり一瞬ですぐに消えた。
『カ、カイマン!大丈夫なのか?!』
急いで走り寄るけど、カイマンはケロりとした顔だった。
【ワハハハハッ、大きく燃えたなぁ!】
【凄い燃えたぞ!】
【やっぱり大きな火鼠は燃え方もデカイなぁっ】
トリオ達は大爆笑だ。
えぇ・・・・。
【いかにも地竜って感じだね】
肩にとまっていたアントが呆れたように首を振った。

【これがダイル達の言っていたフカフカか!】
アントが勢いよく布団の上にダイブして、ゴロゴロと転がりまわる。
火鼠が憐れなミンチ状態になった頃、バルギーに呼ばれてテントまで戻って来たわけだけど。
何故かアントは森に帰らず、一緒についてきた。
バルギーもアントに気付いてたけど、特に何も言うことなく無視してる感じだった。
いや、俺の肩にとまってるのを見て「・・・増えておる」ってボソリと呟いてたけど。
『アント、森に戻らなくていいの?』
【地竜に聞いたぞ。友達になったら皆で一緒に寝るのだろう?だから俺も今日はここで一緒に寝る】
【アント、この寝床は気持ちが良いだろう】
【ここで皆でくっついて寝るんだ】
ダイル達も続々と布団にあがり、4匹の竜が入った時点で布団のキャパが終わった。
俺の寝るとこ完全に無いじゃん・・・。
じゃぁ、どうなるかって?
決まってるよね。
「ケイタ、こちらで寝なさい。あれでは流石にお前の寝る場所はなかろう」
「うぐぅ・・」
バルギーの抱き枕決定だよ。
アントも加わって賑やかな夕食を取った後、皆が楽しそうに布団の上でキャッキャウフフとはしゃいでるのを見ながら、俺だけおじさんに抱きしめられて寝る羽目になった。
エリーも皆のとこで寝てたから、超寂しかった!
カイマンもアリも、今日一緒に寝ようねって言ってくれてたじゃん!
なんで、俺がこちらの布団に回収されていくのをあっさりと見送ったんだー。
俺もキャッキャウフフに参加したかったよー。


翌朝、朝食後のデザートに皆で星苺を頬張っていたらカディがやってきた。
「ケイタ、おはよう。お、良いものを食べているな」
「あ、カディおはよう。カディも食べる?」
苺を盛った皿を差し出したけど、それは笑顔で押し戻された。
「ありがとう、でも私は結構だよ。それはお前が食べなさい。お前に必要なものだ」
「あぁ、魔力が沢山とれるんだっけ?」
「そうだ」
俺は普通に美味いから食ってるだけなんだけどな。
「カディ、朝からすまんな。ケイタの魔力がどれくらい溜まったか確認してくれ」
「あぁ、分かってる。ケイタ食べながらで構わないから、片方の手だけ貸してくれるか」
何時ものカディの健診だ。
俺の腕を取って、カディが魔力を流し込み始める。
しばらく何かを探るような感じだったけど、直ぐに満足そうに頷いて手を離した。
「大量の星苺のおかげか、濃度の高い魔力溜まりに行ったおかげか・・・かなり良い調子だ」
「そうかっ」
カディの評価にバルギーが安堵したような表情になった。
「こんなに早く、ここまでの量の魔力を溜められるとは思わなかった。まだ少なくはあるが、これくらい溜めれば取り敢えずは大丈夫であろう。後はゆっくりと溜めていけば良い」
「そうか・・・良かった。結局魔力溜まりにはあまり行けなかったから心配だったのだ」
「まぁ、残りの不足分もあの量の星苺があれば安心だろう」
「そうだな。今回ばかりはあの地竜達に感謝せねば。後で礼代わりに肉を与えておこう」
『お、皆ー、後でお肉貰えるってさー』
【本当か!】
【やったー】
バルギーの言葉を伝えたら、皆嬉しそうに尻尾を振った。

「イヴァン、森の方はどうだ?」
カディが帰った後、入れ替わりでイバンが報告書を持ってテントにやって来た。
「偵察をやりましたが、竜達は森の奥へ帰った様ですね。昨日のような騒ぎは無かったようです」
「そうか」
「それで、改めて討伐隊も森に送ったのですが・・・」
「居なかったか」
「居ませんでしたね」
「だろうな」
バルギーの返事に、イバンが苦笑気味だ。
「何が居なかったんだ?」
「魔物だよ。討伐するべき魔物が1匹も見つからないんだ」
「昨日あれだけの量を竜達が狩ったのだ。ほとんど残っていないだろう」
「あー・・・なるほどね」
昨日の騒ぎで魔物一掃しちゃったのか。
「昨日の獲物の山は見事でしたからね。あの量の魔物が森に居たと考えると、やはり大繁殖していたのでしょう」
「であろうな。例年の討伐数を遥かに上回る数だった。あれを我々だけで狩ろうと思えばかなりの日数が必要だっただろう」
「生きた心地はしませんでしたが、結果的には竜達に助けられましたね」
「原っぱのアレは、竜達が取りに来る様子はあったか?」
「いえ、魔物と同じく竜達も気配を消してしまいましたから」
「では、今日1日様子をみて戻ってこないようであれば、回収して順次王都へ運べ。売上は兵達に等分で分配しろ」
「承知いたしました」
大騒ぎではあったけど、バルギー達の仕事は減ったみたいで何よりだ。
「月豹だけは陛下へ献上だ。見事な毛皮だったから御喜びになるだろう。それに、確か月豹の牙で作った柄が欲しいと以前おっしゃっていた気もする」
「今回の話を報告すれば、幼い王子方も喜ばれるでしょうね。竜達の魔物狩りに獲物比べ、まるでお伽噺そのものの様な出来事でしたから」
「そうだな。陛下への報告はナルグァスに任せよう。あいつは口が上手いから、面白おかしく話して王族方を楽しませるだろう」
「貴方が報告に行くと、陛下以外は皆様眠そうにされますからねぇ」
イバンのセリフに、バルギーは何も言わずにサワリと髭をひと撫でしただけだった。
ふっ、目に浮かぶな。
クソ真面目で面白みのない報告を淡々とするバルギーの姿が。
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