飛竜誤誕顛末記

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第二章 将軍様のお家に居候!

第22話 頭の中の定規

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抱き抱えられたまま連れてこられたのは、バルギーの部屋の方にある風呂場だった。
脱衣所まで来て、ようやく下ろして貰える。

バルギーの部屋の風呂は、俺の部屋の方のに比べて更に広くてデカイ。
俺の部屋の風呂だって2人位なら余裕でゆったり入れるくらいのサイズだから、個人用として考えたらかなりデカい風呂だけど、こっちは更にって感じだ。
たぶん4人位なら余裕で足を伸ばして同時に入れる。
なんでこっちの風呂を知っているのかと言うと、実は来るのが初めてじゃないからな。
だって、こっちには驚く事にサウナがあるんだ。
広い浴室の一部が小部屋のように仕切られていて、あの熱を発する赤い魔法石がいくつかと水を出す青い魔法石が一つ大きな皿に盛られていて、熱い蒸気が室内を満たしている。
初めてサウナがあることを知った時にテンションを上げたら、バルギーは苦笑しながらこっちも使って良いと言ってくれたので、それから、まぁまぁ頻繁に俺はサウナを使いに来ている。
こっちを使う時はバルギーも一緒に入る事が多い。
一緒にサウナで汗を流しながら談話するのも楽しいものなのだ。

「一体何をしたらこんなに汚れるのだ。まったく」
降ろした俺を改めて見て、バルギーがしょうが無いと言った感じに首を振る。
「少し、転ぶ、しました」
「転んだのか。怪我はしていないか?」
服を脱ぐ俺の体をバルギーが確認するように素早く見渡してくる。
バルギーは俺の怪我に対して、妙に神経質なんだよな。
「大丈夫」
土が落ちないように気をつけながら、脱いだ服を丸めて籠に入れる。
バルギーも一緒に入るらしく、横で服を脱ぎ始めた。

俺はもう裸になっていたので、脱衣所にバルギーを残して先に洗い場に向かう。
体についた土を落とす為たっぷりの湯を一気に浴びたら、足元を茶色く濁った水が勢いよく流れていった。
髪の毛の中にも土が入り込んでいたから、石鹸を泡立てて頭を洗えば泡はあっという間に茶色く汚れた。
泡が白くなるまで念入りに何度も洗い、気が済んだところでようやく湯船に体を沈めたら、いつの間にか体を洗い終えたバルギーもちょうど一緒に入って来るところだった。

バルギーが湯船の中に腰を下ろす瞬間、俺はいつもその股間に視線をやってしまう。
意識している訳じゃないけど、つい見ちゃうんだ。
だって、そこにはそれはもう立派なモノがぶら下がっている訳で。
最初のうちは腰に布を巻いていたバルギーだったけど、慣れてきたせいか最近になって布を巻かなくなった。
俺は元々巻かない派なので、バルギーが巻かないのであれば俺も別に巻かない。
てか、湯船の中でまで布を巻いたままって方がちょっと慣れなかったからな。
銭湯とかではむしろ湯船の中にタオルとか入れる方がマナー違反だったから、こっちの方が俺としては慣れた感じで落ち着く。
だけど、そうなるとバルギーのアレがもろに視界に入ってくる訳で。
別に恥ずかしいとかでは無いけど、あの体躯に見合ったそれは今までに見た事がないサイズ感で、まぁちょっとビビるわけよ。
今までの俺の人生では、AV観賞会した時に見た先輩のソレが一番大きかったけど、バルギーであっさり記録更新だ。
勃っていない状態であれって事は、やる気を出したバルギーのジュニアはどうなってしまうのか。

「ケイタ。使用人の手伝いをするのは構わないが、彼らとあまり馴れ合いすぎるな」
頭の中の定規でバルギーの平常時のそれを元に、勃った時のサイズ感を予想していたら、突然話しかけられた。
「ほあっ?」
くだらない事を真剣に考えていたもんだから、バルギーの言葉は殆ど頭に入ってこなかった。
「え、何?」
「使用人と仲良くするのは駄目だ」
俺の頭の中身とは違い、バルギーは少し真剣な表情でこちらを見ている。
「使用人?仲良く駄目、何で?皆、優しい」
「ケイタ、お前は私の客人だ。彼らとは立場が違う。それにお前が手を出せば、彼らの仕事を奪うことになる。分かるか?」
「んー・・・・少し、分かる」
俺が仕事を邪魔してるって事か。
まぁ、確かにそれは否定できないけど。
「お前が楽しそうだからやめろとは言わないが、立場の違いの線引きは大切だ。お前は使用人とは違うんだからな」
バルギーの渋い表情を見る限り、俺が使用人の人達の手伝いをしている事は余り良くない事のようだ。

屋敷内の手伝いにもう少し慣れてから街に行って仕事を探すつもりだったけど、それが出来ないとなると仕方がない。
まだ言葉とか常識面で不安は残るけど、覚悟を決めてさっさと街に仕事を探しに行く事を考えないとだ。
「バルギー、私、外、行きたい」
「なっ、何故急にそんな話になるんだ?」
俺の言葉を聞いて、バルギーがギョッとしたように目を開く。
「外、駄目?街、行きたい」
「・・・別に駄目では無い。お前が望むなら構わない」
言葉とは裏腹に、バルギーの声は腹の底から絞り出すように苦しげだった。
なんつー声を出すんだ。
絶対駄目って思ってんじゃん。
やっぱり、俺ってまだまだ外に出すには不安な状態なんだろうか。
超カタコトだし、常識ほぼゼロだもんな。
「まだ、駄目?」
バルギーの様子に、自分の状態がどんなに酷いモノなのか不安になってしまう。
「そんな顔をしないでくれ・・・、お前を閉じ込めるつもりはないんだ」
「街、行く、良いですか」
「あぁ。・・・・そうだな、五日後なら私も休みを取れるから一緒に街に行こう」
バルギーは少し苦笑気味だったけど、どうやら街には連れて行ってくれるみたいだ。
「バルギー、ありがとう!」
バルギーは優しいから、きっと俺がまだまだ外に出るには不安な状態でも断りにくかったんだろう。
少し申し訳ない気もしたけど、街の様子を知りたいから俺はありがたくバルギーの親切に甘える事にした。
バルギーが一緒について来てくれるなら、きっと大丈夫だ。
「すまないケイタ。私は、またお前に我慢させていたようだ」
街に行ける事になって俺は一気に楽しみな気持ちになったのに、何故かバルギーは俺に謝ってきた。
バルギーは俺の我儘を聞いてくれているだけなのに、何で謝るんだろうか。
むしろ迷惑かけているのは俺の方なのに。
バルギーって、時々よく分かんない事言うんだよな。
変なの。
「バルギー、街、一緒、楽しい」
楽しみにしていると伝えれば、難しい顔をしていたバルギーも少し目元を和らげてくれた。

俺はその日から出掛ける日までを指折り数えながら楽しみにしていた。
セフ先生にも、もっぱら街の事ばかり聞いている。
街はどんなところなのか、通貨はどういうものなのか、物価は高いのか低いのか。
どんなものが売っているのか。
俺があんまりにもはしゃいだせいか、先生もリーフも苦笑気味だった。

楽しい事とは反対に、少し残念な事もあった。
バルギーに嗜められた翌日くらいから、使用人の人達に距離を置かれてしまった。
せっかく仲良くなれたと思ったのに、最初の頃の態度に戻ってしまったのだ。
手伝う事は反対されないけど、丁寧で少し他人行儀な感じの態度は寂しさを感じた。
ヨムルも似たような態度だったけど、俺が露骨に拗ねた態度を取ったからか、人目が無いところで「ごめんな」って言われて、その時だけはいつもの態度で接してくれた。
どうも、皆リーフ経由でバルギーから注意を受けたらしい。
俺が居る時に皆の気が緩んでいるって。
確かに、俺って緊張感ないからな。
皆真面目に仕事してるのに、一緒に居る時に騒がしくして集中力を散らしてしまってたらしい。
寂しさは感じるけど、皆の邪魔をするわけにもいかないから屋敷内のお手伝いは少し控える事にした。

とにかく、今は街に行ける事を楽しみに毎日を過ごしている。
お金は無いから買い物とかは出来ないけど、買い食い程度はバルギーにたかってやろうと目論んでいる。
先生が言うには街には店舗として店を構えているところもあるけど、そう言うところは専門的で特殊な商品を扱うところが多く、生活用品や食べ物などの日常的な買い物は大きな市場があってそこで売り買いされるらしい。
バルギーが俺を連れて行ってくれるのも市場の方だと言っていた。
どんなものが売られているんだろうか。
きっと珍しいものが沢山見れるんだろうな。
ワクワクした気持ちが溢れて、出掛ける日まで俺は遠足前の子供みたいに落ち着きない状態だった。
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