飛竜誤誕顛末記

タクマ タク

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第二章 将軍様のお家に居候!

第13話 何の騒ぎなの?

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バルギーに連れて来られたのは、大きな寝室だった。
室内は立派な調度品で整えられ、奥にでかいベッドがある。
大きな窓からは、綺麗に手入れをされた庭が見えた。
「ここが私の部屋だ」
「バルギー、部屋?」
なるほど、立派な部屋な訳だ。
屋敷の主の部屋だもんな。

「お前の部屋はこちらだ」
バルギーについて行くと、ベッドの奥に扉がもう一つあった。
中に入ると、バルギーの部屋よりは少しだけ小さい部屋で、こちらにもベッドが置いてある。
バルギーの部屋程では無いけど、そこそこ大きいベッドだ。
こんだけ広ければベッドから落ちる心配は無いな。

庭に面した壁は、床から天井まで続く大きなアーチ状の窓になっていた。
細かい幾何学模様の格子が嵌め込まれた窓で、レースみたいに繊細で綺麗だ。
外の光がたっぷり入るから、室内はとても明るい。
窓辺には綺麗な絨毯が敷かれ、細かい刺繍のクッションが沢山置かれている。
あそこで日向ぼっこしながら昼寝したら気持ちいいだろうな。
「ここがケイタの部屋だ」
「私?」
「そうだ」
え、こんな立派な部屋使って良いのか?
「こっちは、お前の好きなものもあるぞ」

部屋の奥にもう一つ扉があって、バルギーに言われるまま中を覗くと、なんとそこは風呂だった。
『おぉー、風呂だー!』
6畳くらいの浴室はカラフルなタイルで彩られていて、手前が脱衣所で、奥が浴槽と洗い場になっている。
扉のすぐ横には視界を遮るように仕切り壁があって、壁の向こう側を覗いたらそこはトイレだった。
タイルの敷き詰められた壁の一部がベンチのように出っ張り座れるようになっていて、座る部分には穴が空いている。
馴染みのある洋式トイレに似た感じだ。
水洗式だろうかと便器の中をみたら、水が流れる穴がある訳でもなく、ボットン便所みたいに深い穴があるわけでもなく、トイレの底は平らかな石で塞がっていた。
え、これじゃぁ、どんどん排泄物が溜まっちゃうんじゃ・・・。
一瞬不安になったけど、良く見たらトイレの底面に何やら見覚えのある模様が刻まれていた。
『なるほど』
刻まれているのは、森でバルギーがトイレの時に使っていた不思議な石板と同じ模様だった。
これなら、使い方は特に問題無いな。

風呂付きの部屋なんて最高だ。
「バルギー、ありがとう」
「気にいったか?室内は好きに使って良い。あと、お前の服はここに入れてある」
ベッド横に置かれた大きな箱を開くと、中に見慣れた繋ぎの服が綺麗に畳まれて仕舞われていた。
スニーカーも一緒に入っている。
『あ、俺の服だ』
いけね、すっかり忘れてたわ。
あれ、そういえばリヤカーはどうなってんだ?
『バルギー、リヤカーもあるか?』
俺が荷車を引く動きをすると、バルギーが頷いてくれた。
「大丈夫だ、ちゃんと保管してある。お前の大切な財産だからな。昨日のうちに運び込んでおいた」
言っている事は分からないけど、バルギーの様子からして心配しなくても大丈夫そうだ。
多分、何処かに保管してくれてるんだろう。
言葉を覚えたら、保存食とかはあげると伝えよう。

俺は早速、大きなベッドに腰掛けてみた。
「うわ、でっけぇ」
そのまま後ろに倒れるように、ベッドへ仰向けになってみる。
両手を広げても余裕の広さだ。
バルギーも隣に腰掛けてきて、はしゃぐ俺を満足そうに見ている。

仰向けになったところで、今までずっと大人しくしていたエリーが服の下でもぞりと蠢いた。
『お?エリー出るか?』
俺は体を起こして、エリーを出すために服の前合わせのボタンを外した。
「ケイタっ?!何をしているんだっ」
ボタンを上から順番に外していたら、隣でバルギーがギョッとしたように目を見開いている。
『ん?どうした?』
「やめなさいっ」
ボタンを全て外して前を開こうとしたら、何故か慌てたようなバルギーに前合わせを掴まれてしまった。
「男のいる寝台で服を脱ぐなど、どういう意味か分かっているのかっ?」
妙に真剣な目を向けられて戸惑ってしまう。

「バルギー、何・・」
「将軍、準備ができました」
突然のバルギーの態度が分からず理由を尋ねようとしたその瞬間、同じタイミングで扉が開いてイバンが部屋に入ってきた。
俺とバルギーを見て、イバンの表情が一瞬で厳しいものになる。
「ヴァルグィ将軍、何をしているんですかっ!」
ツカツカと近づいて来たと思ったら、凄い力でバルギーから引き剥がされた。
「ぐえっ!?」
「将軍っ!まさか本当に子供に手を出すとは!」
「馬鹿者っ、出しておらんわ!ケイタが自分で脱ぎ始めたから止めていたんだ!」
バルギーとイバンが何やら言い合っている。
何なんだ、突然。
「流石にその言い訳は苦しいですよ。まさかケイタが誘ってきたとでも言うおつもりですか」
「それが分からないから、私も困惑しているんだっ」
「・・・ケイタ。将軍はこう仰っているが、本当か?」
イバンの厳しい目がこちらにも向けられるけど、何が何だかさっぱりだ。
「何?」
「・・とにかく、前を留めなさい」
せっかく開けた前合わせのボタンを、イバンが順番に留めていく。
『いやいやいや。エリーを出すからちょっと待って』
イバンの手を押さえて、俺は留められたボタンを再度外す。
「何故、外すんだ!?」
さっきのバルギーと同じように、イバンが目を見開く。
もしかして服のボタン外したのが、バルギー達が騒いでいる原因なのか?
でも、理由が良く分からない。
バルギーの前で着替える事は別に初めてじゃ無いけど、今までこんな風に騒がれた事は無いし。
とりあえず、さっさとエリーを出してボタンを留め直せばいいか?
ズボンに入れ込んでいたインナーを引っ張り出して、上に捲りあげる。
「「やめなさいっ」」
バルギーとイバンが慌てたように声を揃えたのと、エリーが服の下から飛び出すのは同時だった。

「は?」
「へ?」

ベッドの上を走っていくエリーを見て、バルギー達が固まっている。
どうした、おじさん方。
今更、エリーを珍しがることもないだろ。
ずっと俺と一緒にいるんだから。
俺が服を整え直してる間も、2人は何故か固まったままだ。
「バルギー?イバン?」
「茸・・・・何故、そんなところに茸を入れているんだ・・・」
「茸を出したかっただけか・・・・なんて紛らわしい・・・」
何やら2人から物凄い脱力感を感じる。
だから、何だってんだ一体。
何をそんなに大騒ぎしてたんだ・・・。

「はぁ・・・・だから言っただろうイヴァン。恐ろしく振り回されると。言っておくが、ケイタは常にこの調子だからな」
「成る程・・・確かにこれは危なっかしい。将軍の目の届くこの部屋に置くのは正解ですね」
2人の疲れたような視線が、俺に集中する。
「リーフにもよくよく言っておかなければ」
「若い使用人は近寄らせない方が良いでしょうね。この調子だと容易く勘違いしてしまう」
「ケイタにも色々と教えていかなくては。とにかく警戒心が無さすぎるのが心配だ」
「言葉も教えていかなくてはいけないし、教育係が必要ですよ」
「イヴァン、忍耐強いのを探しておいてくれ」
「畏まりました」
何の話なのかは知らないが、2人が考え込む様に髭を撫でている様は、なかなか男前だと思った。
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