飛竜誤誕顛末記

タクマ タク

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第二章 将軍様のお家に居候!

第12話 竜達の忠告

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ラビクの背は思ったよりも揺れず、乗り心地はなかなか悪くなかった。

それよりも、さっきラビクに言われた事がどうしても気になる。
ラビク達と話せる事を隠せってやつ。
声を出さなくても俺の言葉は聞こえるって言ってたけど本当かな。
試しに、言われた通り頭の中でそっとラビクに声を掛けてみる。
『・・・ラビク、聞こえてる?』

【あぁ、聞こえている。どうだ、乗り心地は悪くないか】
おぉ、本当に声に出さなくても会話できてる。
『うん、大丈夫。それよりもさっきのアレ、どういう意味だ?』
【ん?】
『ラビク達と喋れるのをバルギー達には言うなって』
【あぁ、それか。お前のためだ】
『俺の?なんで?』
ラビクの言う意味が分からなくて、思わず首を傾げてしまう。
何でバルギー達に隠すのが、俺のためになるんだ。

【俺も、言わない方が良いと思うぞ】
イバンを乗せて少し後ろを歩いていたジャビも会話に入り込んできた。
『なんで?』
【ケイタ。人間という生き物は欲深く排他的だ】
『わぉ、辛辣』
ラビクの人間に対する評価、厳しいな。
【竜と話せる人間など、利用されるか異端として排除されるかのどちらかに決まっている】
【そうだぞ。お前は素直そうだからきっと良いように利用されてしまうぞ】
ラビクの言葉に、ジャビも頷いている。
『バルギーは大丈夫だと思うけど・・』
【やめておけ。私も契約している人間のことは信頼しているが、それでも人間の欲深さは油断できない】
【全くだ。ケイタ、優しくされても油断したら駄目だぞ。コイツらは結構強かな人間だからな】
なんかラビクもジャビも、結構人間に対して辛口だね。
『ラビク達は人間嫌いなの?俺も人間だよ?』
【ケイタはこうやって言葉を交わすことができるし、臭くないから嫌いじゃない】
【あぁ、それに邪気が無くて良い】
『・・・・えっと、ありがとう?』

俺はバルギーのこと信頼できると思うんだけど、確かにラビク達が言う事も一理あるかもしれない。
他の人間に出来ない事が出来るって、ちょっと不気味だし警戒されるってのは分かる。
俺だって、誰かが動物と喋れるとか言ってきたら頭おかしいって思うもん。
それに、バルギーとは信頼関係築けていると思ってるけど、よく考えればバルギーから見た俺って結構正体不明なとこあると思うんだよな。
言葉も分からないし、こっちの常識は何も知らないし、何処から来たのかも分からない怪しいヤツだ。
むしろ、よくバルギーはこんな俺の事受け入れてるよな。
森で助けた事を恩に感じてるからとか?
バルギー真面目そうだから、そう言うことはこだわりそうだし。
まさか、義務感で俺の面倒見てくれてるんだろうか。
それだと、信頼関係が築けているのとは違うかもしれない。
・・・あれ、なんか凄い不安になってきた・・。

『ラビク、竜と話せる俺ってやっぱり異常?』
【異常かどうかは分からないが、少なくとも私は今まで竜と話せる人間がいると言うのは聞いた事がない】
【俺も無いな。やっぱり普通じゃないと思うぜ】
『そっかぁ・・・。バルギー達に言ったら気持ち悪がられるかな』
【と言うよりも、その能力を利用されると思うぞ】
【人間は戦争が好きだからな。竜と話せる人間がいるなんて知ったら、敵側の竜を取り込んだり混乱させる為に戦場に連れて行かれたりするかもしれないぞ】
【それか、力のある竜を捕獲するための囮にされるか】
『えー、何それ怖い。冗談だよな?な?』
【冗談なものか。充分可能性のある話だ】
【そうだぞ。だから人間達には言ったら駄目だ。別に隠していたって困る事はないだろ?俺たちとお喋りが出来て楽しいくらいに考えれば良いじゃないか】
まぁ、確かに。
ラビク達と話せる事は、わざわざバルギー達に言わなくても困ることは無い。
っていうか、バルギーを信じてない訳では無いけど、ラビク達の話に若干ビビってしまった。
だって戦争に連れていかれるかもとか、怖いじゃん。
『うーん・・・・じゃあ、もう少し様子みてから、どうするか考えようかな』
【そうしなさい】
【それがいい】
2頭が揃って頷いた。
よし。とりあえず、ラビク達と話せる事は暫く隠しておこう。
もっとバルギー達との関係がしっかりとしたら、打ち明けるかどうするか考えれば良いだろ。
今このタイミングで、俺という不審者に更に不審な設定を上乗せする必要は無いもんな。

「ケイタ、大丈夫か?随分静かだが馬に酔ったか?」
ラビク達との会話に夢中になっていたら、後ろからバルギーが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「顔色は悪くないな。疲れたか?それとも眠いか?」
バルギーが優しげに目元を和らげながら、話しかけてくる。
うぅー、なんかバルギーを騙している感じがして罪悪感感じるなぁ。
「大丈夫か?」
「・・・大丈夫」
何となく隠し事の後ろめたさを感じて、俺はバルギーの目から逃れるように俯いてしまった。
大丈夫、別に嘘をついている訳じゃ無いし・・・。
心の中で自分自身に言い訳をして、湧き出る罪悪感にそっと蓋をした。


ラビクの背に揺られて20分くらいした頃だろうか、バルギーが手綱を引っ張り大きな門の前で止まった。
「着いたぞ。私の家だ」
「バルギー、家?」
え、うっそ、なんか凄いデカイじゃん。
門の向こうに見える建物は、明らかに普通の個人宅のサイズじゃない。
家ってか、屋敷だよね。
バルギーが手をかざすと門はひとりでに開いて、ラビク達は慣れたように中へと進んでいく。
やっぱりここも中東風な佇まいの建物で、白い壁に扉や窓は鮮やかな青で統一されている。
どの扉も窓枠も、細かい彫刻がされていて綺麗だ。
『すげー家・・・。バルギー金持ちだったんだな』

玄関前に着くと、乗った時と同じようにバルギー達の手でラビクから下された。
扉の前には白髪混じりの初老の男の人が姿勢良くぴしりと立っている。
「おかえりなさいませ、旦那様。イヴァン様もいらっしゃいませ」
「あぁ」
「邪魔するぞ」
「旦那様。そちらが、お話に伺っていた?」
「そうだ。私の大切な恩人だ。くれぐれも無礼の無いように」
「畏まりました」
おじさんが、とても丁寧な動作でバルギーにお辞儀をしている。
「ケイタ、この家の事を取り仕切っている使用人頭のリーフだ」
「ケイタ様、お会いできて光栄です。大切な旦那様をお助けいただいたこと、心より感謝申し上げます」
今度は俺に向かっておじさんが頭を下げたので、俺もぺこりとお辞儀を返す。
「ケイタ、リーフだ」
バルギーが俺に分かるように名前を繰り返してくれる。
「リーフ?」
「はい。屋敷の事は私が取り仕切っておりますので困ったことがありましたら、遠慮なく何でもお申し付けください」
バルギーに対する態度から、多分リーフは使用人とかそんな感じの人っぽい。
動作一つ一つがとても丁寧で上品で、洋画に出てくる執事みたいだ。
「リーフ、事情は昨日伝えた通りだ。ケイタが安心して暮らせるよう可能な限り気を配ってくれ」
「承知しております。・・・ケイタ様、今まで大変でしたね。もう大丈夫ですよ。これからは旦那様がお守りくださいます。どうぞ安心してゆっくりとお過ごしください」
リーフが優しげに微笑んでくれた。

屋敷の中はグレーを基調にしたタイルで飾られていて、どの扉もやはり細かい彫刻がされている。
とても個人宅には見えない。
『うわー、ホテルみたいな家だな』
きっとアラブとかの観光用ホテルとかこんな感じだろうな。
見たことないけど。
「リーフ、部屋の用意は出来ているな?」
「はい。お申し付け通り準備できております。それにしても・・・本当に奥のお部屋でよろしいので?賓客用のお部屋も空いておりますが・・・。」
「将軍、まさか奥の間にケイタを置くつもりで?」
バルギーとリーフの会話中に、イバンが驚いたように声を上げた。
「問題あるか?イヴァン」
「問題あるでしょう・・・」
「どうせ空いている部屋だ。今後使う予定も無いしな」
「そう言う事では無いのですが」
何故か、イバンがひどく呆れたような目でバルギーを見ている。
「・・・旦那様、如何致しましょう。お部屋を変えられますか?」
「いや、奥の間で良い。なるべく目の届くところに置いておきたいし、あそこが一番安全だからな」
「畏まりました」
リーフが頷く隣で、イバンは何とも言えない顔をしていた。

「ケイタ、おいで。お前の部屋に案内しよう」
リーフ達との会話がひと段落したのか、バルギーに手招きされた。
「イヴァン。私はケイタを部屋に連れて行くから、お前は印の用意を」
「はぁ・・・分かりました。準備できたらお呼び致します」
イバンは何やら溜息を吐いた後、リーフと一緒に何処かへと行ってしまった。
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