飛竜誤誕顛末記

タクマ タク

文字の大きさ
上 下
33 / 163
第二章 将軍様のお家に居候!

第12話 竜達の忠告

しおりを挟む
ラビクの背は思ったよりも揺れず、乗り心地はなかなか悪くなかった。

それよりも、さっきラビクに言われた事がどうしても気になる。
ラビク達と話せる事を隠せってやつ。
声を出さなくても俺の言葉は聞こえるって言ってたけど本当かな。
試しに、言われた通り頭の中でそっとラビクに声を掛けてみる。
『・・・ラビク、聞こえてる?』

【あぁ、聞こえている。どうだ、乗り心地は悪くないか】
おぉ、本当に声に出さなくても会話できてる。
『うん、大丈夫。それよりもさっきのアレ、どういう意味だ?』
【ん?】
『ラビク達と喋れるのをバルギー達には言うなって』
【あぁ、それか。お前のためだ】
『俺の?なんで?』
ラビクの言う意味が分からなくて、思わず首を傾げてしまう。
何でバルギー達に隠すのが、俺のためになるんだ。

【俺も、言わない方が良いと思うぞ】
イバンを乗せて少し後ろを歩いていたジャビも会話に入り込んできた。
『なんで?』
【ケイタ。人間という生き物は欲深く排他的だ】
『わぉ、辛辣』
ラビクの人間に対する評価、厳しいな。
【竜と話せる人間など、利用されるか異端として排除されるかのどちらかに決まっている】
【そうだぞ。お前は素直そうだからきっと良いように利用されてしまうぞ】
ラビクの言葉に、ジャビも頷いている。
『バルギーは大丈夫だと思うけど・・』
【やめておけ。私も契約している人間のことは信頼しているが、それでも人間の欲深さは油断できない】
【全くだ。ケイタ、優しくされても油断したら駄目だぞ。コイツらは結構強かな人間だからな】
なんかラビクもジャビも、結構人間に対して辛口だね。
『ラビク達は人間嫌いなの?俺も人間だよ?』
【ケイタはこうやって言葉を交わすことができるし、臭くないから嫌いじゃない】
【あぁ、それに邪気が無くて良い】
『・・・・えっと、ありがとう?』

俺はバルギーのこと信頼できると思うんだけど、確かにラビク達が言う事も一理あるかもしれない。
他の人間に出来ない事が出来るって、ちょっと不気味だし警戒されるってのは分かる。
俺だって、誰かが動物と喋れるとか言ってきたら頭おかしいって思うもん。
それに、バルギーとは信頼関係築けていると思ってるけど、よく考えればバルギーから見た俺って結構正体不明なとこあると思うんだよな。
言葉も分からないし、こっちの常識は何も知らないし、何処から来たのかも分からない怪しいヤツだ。
むしろ、よくバルギーはこんな俺の事受け入れてるよな。
森で助けた事を恩に感じてるからとか?
バルギー真面目そうだから、そう言うことはこだわりそうだし。
まさか、義務感で俺の面倒見てくれてるんだろうか。
それだと、信頼関係が築けているのとは違うかもしれない。
・・・あれ、なんか凄い不安になってきた・・。

『ラビク、竜と話せる俺ってやっぱり異常?』
【異常かどうかは分からないが、少なくとも私は今まで竜と話せる人間がいると言うのは聞いた事がない】
【俺も無いな。やっぱり普通じゃないと思うぜ】
『そっかぁ・・・。バルギー達に言ったら気持ち悪がられるかな』
【と言うよりも、その能力を利用されると思うぞ】
【人間は戦争が好きだからな。竜と話せる人間がいるなんて知ったら、敵側の竜を取り込んだり混乱させる為に戦場に連れて行かれたりするかもしれないぞ】
【それか、力のある竜を捕獲するための囮にされるか】
『えー、何それ怖い。冗談だよな?な?』
【冗談なものか。充分可能性のある話だ】
【そうだぞ。だから人間達には言ったら駄目だ。別に隠していたって困る事はないだろ?俺たちとお喋りが出来て楽しいくらいに考えれば良いじゃないか】
まぁ、確かに。
ラビク達と話せる事は、わざわざバルギー達に言わなくても困ることは無い。
っていうか、バルギーを信じてない訳では無いけど、ラビク達の話に若干ビビってしまった。
だって戦争に連れていかれるかもとか、怖いじゃん。
『うーん・・・・じゃあ、もう少し様子みてから、どうするか考えようかな』
【そうしなさい】
【それがいい】
2頭が揃って頷いた。
よし。とりあえず、ラビク達と話せる事は暫く隠しておこう。
もっとバルギー達との関係がしっかりとしたら、打ち明けるかどうするか考えれば良いだろ。
今このタイミングで、俺という不審者に更に不審な設定を上乗せする必要は無いもんな。

「ケイタ、大丈夫か?随分静かだが馬に酔ったか?」
ラビク達との会話に夢中になっていたら、後ろからバルギーが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「顔色は悪くないな。疲れたか?それとも眠いか?」
バルギーが優しげに目元を和らげながら、話しかけてくる。
うぅー、なんかバルギーを騙している感じがして罪悪感感じるなぁ。
「大丈夫か?」
「・・・大丈夫」
何となく隠し事の後ろめたさを感じて、俺はバルギーの目から逃れるように俯いてしまった。
大丈夫、別に嘘をついている訳じゃ無いし・・・。
心の中で自分自身に言い訳をして、湧き出る罪悪感にそっと蓋をした。


ラビクの背に揺られて20分くらいした頃だろうか、バルギーが手綱を引っ張り大きな門の前で止まった。
「着いたぞ。私の家だ」
「バルギー、家?」
え、うっそ、なんか凄いデカイじゃん。
門の向こうに見える建物は、明らかに普通の個人宅のサイズじゃない。
家ってか、屋敷だよね。
バルギーが手をかざすと門はひとりでに開いて、ラビク達は慣れたように中へと進んでいく。
やっぱりここも中東風な佇まいの建物で、白い壁に扉や窓は鮮やかな青で統一されている。
どの扉も窓枠も、細かい彫刻がされていて綺麗だ。
『すげー家・・・。バルギー金持ちだったんだな』

玄関前に着くと、乗った時と同じようにバルギー達の手でラビクから下された。
扉の前には白髪混じりの初老の男の人が姿勢良くぴしりと立っている。
「おかえりなさいませ、旦那様。イヴァン様もいらっしゃいませ」
「あぁ」
「邪魔するぞ」
「旦那様。そちらが、お話に伺っていた?」
「そうだ。私の大切な恩人だ。くれぐれも無礼の無いように」
「畏まりました」
おじさんが、とても丁寧な動作でバルギーにお辞儀をしている。
「ケイタ、この家の事を取り仕切っている使用人頭のリーフだ」
「ケイタ様、お会いできて光栄です。大切な旦那様をお助けいただいたこと、心より感謝申し上げます」
今度は俺に向かっておじさんが頭を下げたので、俺もぺこりとお辞儀を返す。
「ケイタ、リーフだ」
バルギーが俺に分かるように名前を繰り返してくれる。
「リーフ?」
「はい。屋敷の事は私が取り仕切っておりますので困ったことがありましたら、遠慮なく何でもお申し付けください」
バルギーに対する態度から、多分リーフは使用人とかそんな感じの人っぽい。
動作一つ一つがとても丁寧で上品で、洋画に出てくる執事みたいだ。
「リーフ、事情は昨日伝えた通りだ。ケイタが安心して暮らせるよう可能な限り気を配ってくれ」
「承知しております。・・・ケイタ様、今まで大変でしたね。もう大丈夫ですよ。これからは旦那様がお守りくださいます。どうぞ安心してゆっくりとお過ごしください」
リーフが優しげに微笑んでくれた。

屋敷の中はグレーを基調にしたタイルで飾られていて、どの扉もやはり細かい彫刻がされている。
とても個人宅には見えない。
『うわー、ホテルみたいな家だな』
きっとアラブとかの観光用ホテルとかこんな感じだろうな。
見たことないけど。
「リーフ、部屋の用意は出来ているな?」
「はい。お申し付け通り準備できております。それにしても・・・本当に奥のお部屋でよろしいので?賓客用のお部屋も空いておりますが・・・。」
「将軍、まさか奥の間にケイタを置くつもりで?」
バルギーとリーフの会話中に、イバンが驚いたように声を上げた。
「問題あるか?イヴァン」
「問題あるでしょう・・・」
「どうせ空いている部屋だ。今後使う予定も無いしな」
「そう言う事では無いのですが」
何故か、イバンがひどく呆れたような目でバルギーを見ている。
「・・・旦那様、如何致しましょう。お部屋を変えられますか?」
「いや、奥の間で良い。なるべく目の届くところに置いておきたいし、あそこが一番安全だからな」
「畏まりました」
リーフが頷く隣で、イバンは何とも言えない顔をしていた。

「ケイタ、おいで。お前の部屋に案内しよう」
リーフ達との会話がひと段落したのか、バルギーに手招きされた。
「イヴァン。私はケイタを部屋に連れて行くから、お前は印の用意を」
「はぁ・・・分かりました。準備できたらお呼び致します」
イバンは何やら溜息を吐いた後、リーフと一緒に何処かへと行ってしまった。
しおりを挟む
ご感想への返信停止中です。
感想 386

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

若さまは敵の常勝将軍を妻にしたい

雲丹はち
BL
年下の宿敵に戦場で一目惚れされ、気づいたらお持ち帰りされてた将軍が、一週間の時間をかけて、たっぷり溺愛される話。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

処理中です...