飛竜誤誕顛末記

タクマ タク

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第二章 将軍様のお家に居候!

第4話 バルギー何処?

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俺が次に目を覚ましたのは夜になってからだった。
カーテン越しでも外が暗いのが分かるし、夜特有のシンとした静けさがあった。
部屋の中には、また俺1人だ。
枕の横ではエリーが寝ているけど。

腹減ったな・・・・。
どれだけ寝ていたのか分からないけど、中々の空腹感と喉の渇きを感じるから、結構長い間寝続けていたのかもしれない。

ベッド横の小さなテーブルに水差しとコップが置いてあったので、一応中身が水だと言うのを確認してから飲んでみた。
ちょっと硬水かな・・?
普段飲んでいる水よりも、少し味を感じるような不思議な感じだ。
美味くはないが、喉の渇きは癒える。

よし、次は飯だ。
バルギーに食事を頼もう。

俺はバルギーを探す為、廊下へと出る。
エリーは爆睡中で、起こすのも可哀想なので置いてきた。
今回は中庭には誰も居なくて、俺を止める人はいなかった。

一定間隔で壁に松明が掛かっていて、廊下は明るい。
取り敢えず適当な方向に足を進めてみた。
誰かに会ったら、バルギーの事を聞いてみよう。

俺がいた場所は少し隔離された区画だったようで、廊下の突き当たりの扉を開いたら建物の雰囲気が変わった。
今までいた場所の人気の無さが嘘のように、廊下に等間隔で兵士達が立っている。
こちらにも中庭のような広場があるけど、こっちのは訓練場みたいな感じで広く、兵士達が剣や弓の練習をしていた。

扉を出た瞬間、周りの兵士達も俺に気づいたようで皆驚いたようにこちらを見ている。
「おい、あの子供。馬将軍の・・・」
「寝込んでるって聞いていたが、大丈夫なのか?」
「何故ここに居るんだ」
俺を見ながら皆ヒソヒソと話していて、大変に居心地が悪い。

『あー・・・・すみません』
大人数に注目される気まずさの中、取り敢えず一番近くに立っていた若い兵士に声を掛けてみる。
「え、俺?・・何かな?」
声をかけられた兵士は、驚いたようにしながら目線を合わせるように腰を曲げる。
小さな子供にするようなその仕草に、少し顔が引き攣ってしまった。
どいつもこいつも、ほんとでけーな。

「バルギー、どこ?私、行く」
「馬将軍を探してるのか?・・なぁ、お前ら。馬将軍が今どちらにいらっしゃるか分かるか?」
兵士が振り返って周りの人達に声を掛けると、興味深そうに俺を見ていた数人がワラワラと集まってくる。

あっという間にムキムキな巨体に囲まれてしまった。
威圧感ぱねぇな・・・。

「将軍は、確か経緯報告の為にイヴァン副官と今王都にいらっしゃる筈だぞ」
「そうか、困ったなぁ」
「直ぐに戻って来るだろうけど、この子に説明通じるのか」
皆が何か話したあと、困ったように俺を見下ろしてきた。

「えぇっと・・・君、馬将軍は今お留守でね。直ぐに戻ってくるから、部屋で待っていなさい。分かるかい?」
最初に声をかけた兵士が、俺にゆっくりと話かけてくる。
・・・・よし、全く分からん。
分からない単語が多すぎる。
面倒だから、バルギーのいるところまで連れて行ってくれないだろうか。
「私、バルギー、行く」
兵士のマントを軽く引っ張って、一緒に行こうと仕草で伝えるが兵士は困ったように首を振るだけだ。
「将軍は今居ないんだよ」
兵士は、全く動く気配がない。
なるほど、仕事中だからここを離れられないのかも知れない。

「私、分かる。ありがとう」
「お、通じた?」
「大丈夫、将軍は直ぐに戻ってくるよ」
少しホッとしたような表情の彼らをみて、仕事の邪魔をしてしまったのだろうと申し訳ない気持ちになった。
これ以上、仕事の邪魔をしてはいけない。
他の人に聞こう。
俺は彼らにお礼を行って踵を返す。

今度は訓練場の方へ足を向けた。
「え、なんでそっちに行く?」
「部屋に戻らないのか?」
後ろでさっきの兵達が、少し困惑気味に話しているのが聞こえた。

今度は広場の端で、武器の手入れをしていた兵士に声を掛けてみる。
鼻の下に立派な髭を生やしている、紳士然としたおじさんだ。
声を掛けると、やっぱり少し驚いたような顔をされた。
『すみません』
「・・・私に何か用かな?」
「バルギー、どこ?私、行く」
さっきと同じ質問をしてみたら、後ろから先程の兵達が慌てたようにやってきた。

「駄目だ、この子やっぱり分かってない」
「君、将軍は今居ないんだよ。ここには居ないよ」
みんな口々に何か説明しているっぽいけど、全然分からない。

「お前達・・・説明が下手だな」
一生懸命何か言っている兵士達を見ながら、おじさんが呆れたように溜息をついた。
「しかし隊長・・・言葉が分からないのに、どう説明すれば・・・」
「ふむ・・・・。君、ちょっとこっちにおいで」
おじさんが俺を手招きして、廊下側にある扉のない部屋へと連れて来てくれた。

「これを見てごらん」
おじさんが、机の上に布を広げて見せてくれる。
それは大きな一枚の地図だった。
見たことの無い文字や記号で色々と書かれている。

「いいかい。今私達がいるのがここだ」
おじさんが地図に書かれた建物の絵を指さして、その後地面を指さす。
「分かるかい?ここだよ」
地図と地面を交互に指さす。
なるほど、分かりやすい。
「分かる」
了解したと頷くと、おじさんも満足そうに頷く。

「よし。では次はこちらだ。ここが王都」
今度は、地図の真ん中辺りを指さす。
そこは他の記号よりも大きめに描かれた立派な建物と、装飾的な文字で飾られている。
雰囲気から言って、首都とかそんな感じっぽい。
地図の縮尺が分からないけど、今いる砦からは離れている。
「王都だ」
「オウト」
町の名前かな。
「そうだ。そして、これが馬将軍だ」
おじさんが、机の引き出しからチェスの駒のような小さな木彫りの騎馬を取り出して、地図の上に置いた。

「分かるかい?馬将軍だ」
「バショーグン?」
何だ、バショーグンって。騎馬のことか?
「あぁ、馬将軍は分からないか。ヴァルグィ将軍の事だ。」
「バルギー!」
「そうだ」
なるほど、この駒はバルギーって事だな。
バルギーはバショーグンって事か?騎兵って事かな。
「分かる」
取り敢えず分かったと頷くと、おじさんがふっと笑ってくれた。

「いいかい、ヴァルグィ将軍は今王都にいらっしゃる」
おじさんが、騎馬の駒を王都の上に置く。
「君はこの駒にしようか」
おじさんが俺を指さしたあと、新たに兵士の駒を取り出した。
「君は今ここだ」
その駒を地図上の砦の上に置いた。
「君はここ、ヴァルグィ将軍はここだ」
何となく、意味は理解できた。

・・・・え?ちょっと待て、俺置いていかれたの?!
これは、ちょっとショックだぞ。
バルギーの家に連れて行ってくれるって言ってたのにー。

「・・・・分かる。バルギー、ここ、ない」
少し落ち込んでしまったのが伝わったようで。
「大丈夫だ、直ぐに戻ってくる」
おじさんが少し慌てたように、バルギーの駒を王都から砦へ移した。
大丈夫って言葉は分かったから、戻って来るってことだろうか。
「バルギー、ここ、行く?」
確認するように地図の砦を指させば、直ぐに頷いてくれた。

なんだ、ちゃんと戻ってくるのか。ビビらすなよ。
ここでいきなりリリースされたら、俺マジ路頭に迷っちまうからな。
俺はホッと胸を撫で下ろした。
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