飛竜誤誕顛末記

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第二章 将軍様のお家に居候!

第3話 目覚め

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神様、ありがとう。

目を覚ました時、俺は心から願っていたフカフカの布団に包まれていた。
砂利の上に敷いた薄い段ボールでは味わえない、優しく身体を受け止める布団と枕。
俺の身体を包むのは、薄い毛布でも大男の逞しい腕でもない。
柔らかく清潔な毛布だ。

目を覚ましてもやっぱり異世界のままっぽいけど、それすらどうでも良いくらい俺は今幸せだ。

あー・・・お布団最高。

体の怠さも、だいぶ良くなっている。
顔を横に向ければ、枕の横でエリーが一緒に寝ていた。
やっぱり可愛い。

俺は身体を起こして、部屋を見渡した。
広い部屋だけど、置いてある家具はシンプルで実用的な印象だ。
窓はカーテンが下がっていて、室内は薄暗い。

妙に大きいベッドの上にいるけど、気を失う前に見た兵士達やバルギーの体格を思い出して何となく納得する。
考えたく無いけど、この世界だとあれが平均的な体格なんだろうか。
俺、元の世界では平均よりはちょっと大きい方だし、体だってヒョロイほうじゃ無かったけど、こっちだとモヤシっ子かもしれない。
それはヤダなぁ・・・。

落ち込みそうになりながら、そっとベッドから降りる。
布団から出て気が付いたけど、いつの間にか着ている服が変わっている。
膝下くらいまでの長丈のワンピースみたいなシャツに、ゆったりしたズボン。
・・・やっぱり中東っぽい。
バルギーの見た目とか、この服の感じとか、ちょっと文化が似てるのかな。

汗だくで着続けた繋ぎは汚れていたから、綺麗な服はありがたい。
ゆったりした服だから楽だし。
革のサンダルもベッドの横に置いてあったので、ソレを履いて扉へ向かう。

ここ、砦の中かな。
バルギーは、何処にいるんだろうか。
そっと扉を開けると、中庭のような場所に面した吹き抜けの廊下だった。
中庭に兵士らしき人が数人いて、直ぐに俺に気が付いたようだ。

「あぁ、君!良かった、起きたんだね。直ぐに馬将軍をお呼びするから、部屋の中に戻っていなさい」
慌てたように近づいてきた兵士が、部屋から出ないようにと俺を室内へと促す。
出ちゃいけないのか?
『えっと、バルギー何処にいるか分かりますか?「バルギー、どこ?」』
「大丈夫、直ぐに来てくださる。おい、馬将軍にお知らせしろ」
若い兵士は安心させるように俺に頷いてから、中庭にいる他の兵士へ声をかける。
声を掛けられた兵は、すぐに何処かへ走っていった。
「さぁ、部屋に入っていなさい」
背中をそっと押され部屋に戻されると、あっさり扉を閉められてしまった。

結局、バルギーは何処にいるんだ・・・。

取り敢えず部屋から出てはいけないみたいだから、バルギーが来てくれるまで大人しくしておこう。
まさか放ったらかしって事は無いだろうから、待ってりゃそのうちバルギーも来てくれるだろ。
俺は再びベッドの中に潜り込んで、夢の惰眠三昧を再開することにした。

現実と夢の世界の狭間でウトウトと微睡んでいたら、ふと額に何かが触れてきた。
「ケイタ?また眠ってしまったか?」
囁くような声は聴き慣れた低音で、意識が一気に浮上した。
「・・・バルギー?おはよう」
「すまない、起こしたか。まだ少し熱があるな」
バルギーの大きな手が確認するように額や首筋に触れてくる。
「あまり聞きたくないが・・・・ケイタ、体は大丈夫か?」
バルギーがよく言ってくるそれは、俺を気遣う言葉だ。
「大丈夫」
「まぁ、お前ならそう答えるな」
バルギーが不正解と言った感じに、苦笑しながら首を横に振っている。
「まぁ、いい。その癖はおいおい直していこう」

バルギーが開けたのか、いつの間にかカーテンが引かれて室内は明るい。
改めて明るい部屋の中を見渡していたら、バルギーに手を取られた。
「良かった。跡にはならなかったな」
バルギーが俺の手の平を労るように摩る。

・・・・あれっ?!

そこまで来てようやく、自分の手の怪我が綺麗さっぱり治っていることに気が付いた。
思わずバルギーから奪い返すように手を引き抜き、怪我があったはずの肌を見る。
『え?あれ?なんで?!』
どう見ても、跡形もなく怪我が消えている。
不思議で手の平を何度も凝視したり、擦ってみたりするけど、やっぱり肌は綺麗な状態だし、痛みも全くない。
そう言えば、背中の痛みも感じない気がする。
恐る恐る背中を触り、強く押してみたりするけど痛みは全くない。

「バルギー?私、痛い、ない?」
「あぁ。お前が寝ている間に治療しておいた」
「?」
分からない。

っていうか、よく見ればバルギーの怪我も治っている。
普通に両腕使っているし、自分の両足で立って普通に歩いている。
「バルギー、痛い、ない?」
「あぁ、私も治療済みだ」
え、こわ・・・。
不自然な治癒は、理解できない不思議さがあってちょっと不気味だ。
あれかな、これも魔法か何かなのかな。

前にバルギーが魔法らしきもので火の玉を飛ばしたのを、一度見た事がある。
きっとこの世界は、俺の理解できない魔法みたいな不思議が一杯なんだ。
そう無理に自分を納得させ、何故か治っている怪我の不可解さを飲み込むことにした。

言葉をもっと覚えたら、その時に色々教えてもらおう・・・。

「ケイタ、熱が完全に下がったら王都に戻るぞ」
「?分からない」
「ケイタの痛いが無くなったら、私の家に行く」
バルギーが俺の分かる単語で話してくれる。
俺が回復したら、バルギーの家に行くってことだな。
「分かる」
「よし、それでは早く治るよう、しっかり休みなさい」

バルギーに促されて、俺は再びベッドの上に体を横たえる。
目を瞑って夢の世界に行くまで、あっという間だった。
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