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アメジストリングには不思議な力がある。タコ怪人はアメジストリングを奪うために由美ちゃんに化けて青色レンジャーの義信さんに近づく。

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あらすじ
 アメジストリングには不思議な力がある。タコ怪人はアメジストリングを奪うために由美ちゃんに化けて青色レンジャーの義信さんに近づく

 魔界戦隊のテレビドラマは一度見てしまうと続きが気になって仕方がない。翌週も有紀は彩香ちゃんの家に泊まりに行った。夜遅くの十一時過ぎにドラマが始まると有紀はどきどきしながらテレビ画面から目が離せなくなった。
 前回はドラマでは江実矢君が黒色レンジャーを誘惑する場面で終わってる。続きがどうなるのかと思って見ていると、最初は桃色レンジャーの由美ちゃんがお風呂上がりで登場した。胸にバスタオルを巻いて鏡に向かっていると、携帯に誰かから電話がかかってくる。
 黒色レンジャーが江実矢君に誘惑されて一夜を過ごしたというたれ込みの電話を受けて由美ちゃんはケータイを落としてしまう。
 ベッドにケータイが落ちて弾んで床に転がるとその上に由美ちゃんのバスタオルが落ちて重なった。由美ちゃんの足元を下からテレビのカメラがゆっくりと嘗め上げるように動くと次に由美ちゃんの顔が大写しになって目から涙がこぼれてる。
 するとテレビカメラは今度は下にゆっくりと動いて、由美ちゃんの胸を大写しにした。
 迫力満点の大きな胸の前で由美ちゃんの手が握りしめられるとすすり泣きの声と一緒に手が震えてる。すすり泣きがかすれた喘ぎ声に変わると胸が上下に揺れるのが見えて有紀も胸が苦しくなった。場面が変わると由美ちゃんが江実矢君を喫茶店に呼び出して、なんで黒色レンジャーを誘惑したのか問いつめるシーンが続いた。
 江実矢君は最初はしらをきっていたけど、公園で二人きりの所を盗み撮りした写真を突きつけられてとうとう白状した。
 だけど黒レンジャーを誘惑したのは特別に理由があるからだと打ち明けられて今度は由美ちゃんが驚いた顔をした。アメジストリングには不思議な魔力があって、それを黒色レンジャーが今まで他の魔界レンジャーには内緒にしておいたのだ。黒レンジャーはその秘密を使って、魔界を征服しようとしてるんだと江実矢君に聞かされて由美ちゃんは信じられない顔をしてる。
 もっと大変な魔界の秘密を教えるからと、今度は江実矢君が由美ちゃんを誘った。黒色レンジャーが偶然魔界の秘密の入り口を見つけて、調べ見たところ魔界の図書室に通じていたという話しらしい。その魔界の図書室には他にも魔界の秘密や、魔法の呪文が一杯かいてあるからそれを調べれば魔界は征服できる。
 黒色レンジャーは、魔界を自分だけで征服してしまおうと思ってそれも他の魔界戦隊のレンジャーには秘密にしておいたという話し。
 江実矢君が由美ちゃんを案内して連れてきた場所はこの前に撮影した郊外の遊園地だ。
江実矢君といっしょに由美ちゃんが公園の中を探し回ると魔界の入り口らしい場所を見つけた。大きな観覧車の裏手にある池の前にたしかに星のマークと呪文が地面に書いてある。
 魔界の入り口を開くには呪文が必要だが、それも黒色レンジャーに習ってるから大丈夫。
一人で魔界の入り口を開こうとして、江実矢君が呪文を唱えると、地面に小さな黒い陰ができた。
 呪文を何度か唱えると、魔界の入り口が開いて魔界の怪人達が飛び出してきた。江実矢君が魔界の怪人達につかまってしまいそうになって、由美ちゃんが助けようと観覧車の裏から駆けつけた。だけどあのときの収録では由美ちゃんはタコ怪人につかまっちゃうはずだ。撮影の時見たのと同じシーンが続いたけど、そのあとのシーンはテレビで見て初めて判った。
 桃色レンジャーはタコ怪人に捕まったあと、地底の城に降りる道を降っていって、魔界の城に連れてこられちゃうんだ。桃色レンジャーの首には首輪がはめられて、鎖が前後から股の間で繋がれてる。下手にさからったりすれば、魔界の魔力で鎖が締め付けられて首が絞まっちゃう仕掛けだ。だけど桃色レンジャーは手首にアメジストリングをはめている。
 魔界の魔力よりは、アメジストリングの金剛力の方が強力だ。アメジストリングを手首にはめている限りはアメジストリングの金剛力が桃色レンジャーを守っているのでいくらタコ怪人でもこれ以上の手出しはできない。アメジストリングを無理矢理外そうとしたりすると触れただけで電撃に襲われちゃうのだ。
 タコ怪人が何よりも欲しがってるのは、このアメジストリングだ。アメジストリングを持っていれば、金剛力がいくらでも使える。魔界の力と金剛力を一緒にもてば、もうこれ以上強い物はない。だけど、アメジストリングの金剛力が由美ちゃんを守っている限りは、タコ怪人には手も足もでない。
 アメジストリングをはずせば、金剛力はもう発揮できないけどそれでも金剛力は身体の中に充電されたまま残ってる。アメジストリングのおかげで、身体に金剛力がどんどん溜まっていくのだ。だけどその金剛力もより強い金剛力を持った相手と合体すると、全部相手に吸い取られて奪われてしまう。アメジストリングは不思議な魔力があるけど、使い方を間違えたら大変なことになっちゃうんだ。
「そのアメジストリングを渡すんだ、痛い思いをしたくないだろう」とタコ怪人が桃色レンジャーを怖い顔で怒鳴りつけた。
「手足がちぎれるまで引っ張ってやろうか、それとももっと痛い目に遭いたいか」と桃色レンジャーを睨みつけて何度もタコ怪人が由美ちゃんを脅したがそれ以上はなにもできない。なんとかいい手は無いかと思案顔でタコ怪人は由美ちゃんの前を行ったり来たりと何度も繰り返した。由美ちゃんもタコ怪人が手出しを出来ないのに気がついたのか「いい加減にしなさい、私をこんな目に遭わせたら大変なことになるわよ」と強気でタコ怪人に言い返してる。
 タコ怪人は諦めた様子で、由美ちゃんを縛り付けたまま部屋をでた。タコ怪人が薄暗い城の通路の隠し扉を開けると、上に登る螺旋階段がある。狭い階段を上まで登って城の一室に入ると、戸棚を開けて大きな魔法の本を取り出した。なんども本を確かめてから、タコ怪人は部屋の中央に立った。部屋の床には魔法の文字が一杯書いてある。
「くりっとん、せっぴんごーまかしゃれんど」と呪文を唱えると、部屋の中に紫色の雲が現れてタコ怪人の身体を包み込んだ。
「じょりたんきしょせつ、こんごみてんしゃ」と続いてタコ怪人が唱えると手にした鈴を三回ならして、胸の前で十字を切った。
 一瞬部屋に煙が立ちこめてタコ怪人の姿が桃色レンジャーの姿に入れ替わった。魔法を使って、タコ怪人が桃色レンジャーに変身したんだ。なんて凄い魔法、こんな魔法が使えたら毎日学校をさぼって遊んでいられるのにと有紀はうらやましくなった。
 だけどこれはテレビドラマの中での話しで、本当にこんな魔法なんてあるわけ無い。タコ怪人は服装を確かめて、桃色レンジャーとそっくり同じだと鏡の前でくるりと一回りした。
 ミニのスカートの裾がひらりと浮いて、真っ赤なパンティーが見えちゃってるけど女の子だから真っ赤なパンティーは当たり前。タコ怪人はミニスカート姿で恥ずかしそうに顔を赤らめてるけどそんなこと気になんかしてられない。手首にはアメジストリングをはめてるけど、もちろん偽物だ。本物そっくりで見分けがつかないけど、魔力なんてないバッタ物。夏祭りの夜店で売ってるような、安物だ。
 タコ怪人は由美ちゃんから取り上げた魔界ケータイを使って青色レンジャーの義信さんと何やら話しを始めた。もちろん声も由美ちゃんそっくりの甘えん坊でお色気たっぷりの声だ
「大事な話があるの、今すぐ会いたいの、すぐ来て」と女の子に甘い声でおねだりされたら男だったらだれだってすぐオッケーしちゃうもの。すぐに画面が切り替わって桃色レンジャーが青色レンジャーと駅前で待ち合わせをしてる場面が次に続いた。
 桃色レンジャーはいつもミニスカートだけど、タコ怪人の化けた偽桃色レンジャーはパンツが見えちゃうほど短いミニスカート姿だ。ぴっちぴちでスケスケのブラウスの下から赤いブラジャーが透けて見える。義信さんは由美ちゃんのお色気に圧倒されたのか、下を向いたまま顔を上げようとしない。
「二人っきりで大事な話があるの」と桃色レンジャーが青色レンジャーをホテルの喫茶店に誘うと青色レンジャーはなんだか気まずそうな顔。青色レンジャーの義信さんは、もともと希美ちゃんの婚約者だから、いくら相手が桃色レンジャーの由美ちゃんでもホテルで二人っきりになんかなるのは都合が悪いはず。
 このホテルはタカハシミチヨさんのファッションショーを開いた場所で、江実矢君と黒レンジャーが仲良くしてるのを見せつけられた嫌な場所だ。青色レンジャーはこんな所に呼び出されて居心地が悪そう。桃色レンジャーが「希美ちゃんが、タコ怪人に捕まっちゃってるの。私居場所しってるから二人でこれから助けに行きましょう、魔界の入り口がこのホテルにもあるのよ」とうまく話しを持ちかけた。
 希美ちゃんが一大事なら、婚約者の義信さんが助けに行くのは当たり前な話し。たとえホテルの部屋で由美ちゃんと二人切りになったとしても希美ちゃんを助けるほうが大事だ。
 桃色レンジャーに案内されてホテルの部屋に入ると確かに部屋の床に変な模様の文字が並んでいて魔界の入り口らしい。だけど桃色レンジャーが呪文を唱えても、入り口は開かない。
「このアメジストリングには秘密があるのよ。男と女が合体してアメジストリングを交換しあうとすると男の金剛力、女の金剛力が倍増するの。そうすればこの魔界の入り口が開くの」と偽桃色レンジャーがアメジストリングの秘密をネタに嘘を並べた。
 アメジストリングの秘密は元はと言えば、黒レンジャーだけしか知らない秘密だったが、黒レンジャーが江実矢君に誘惑されてからしゃべってしまったんだ。青色レンジャーは「他の仲間を呼んで、みんなで助けに行こう、そうすればアメジストリングの秘密は使わなくても希美ちゃんを助けられるんだ」ともっともな答えをしてすぐには騙されない。
「だめ、いますぐ合体しないと、この入り口はすぐに消えちゃうの、いますぐじゃないとだめなのよ、そうしないと希美ちゃんは魔界大王と結婚させられちゃうの」と偽桃色レンジャーがまた嘘を並べると青色レンジャーも困り果てた様子。
「お願い希美ちゃんを助けるにはそれしかないの」と言いながら偽桃色レンジャーがブラウスの胸のボタンを一つづつ外して下に着けたブラジャーのレース模様が青色レンジャーに見えるようにと胸を拡げた。「私と、希美ちゃんとどっちが大事なの、いますぐ答えて」と偽桃色レンジャーに口説かれて青色レンジャーはもう我慢しきれなくて偽桃色レンジャーに歩み寄った。
「先にアメジストリングを交換するのよ、合体はそれから」と偽桃色レンジャーに耳元で囁かれて、青色レンジャーは手首にはめたアメジストリングを外すと、偽桃色レンジャーの付けてる偽のアメジストリングと交換した。
 魔界レンジャーの持っている金剛力は、もともとアメジストリングの持っている不思議な力が魔界レンジャーに乗り移った物。こうなったらもう青色レンジャーは金剛力は使えない。偽桃色レンジャーはこれで上手くやったという顔で青色レンジャーにしがみついた、いよいよ合体というその瞬間にいきなり魔界の入り口が開いた。偽桃色レンジャーに化けたタコ怪人が魔界の入り口を開いたのだ。
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