転生した元魔王はTSの熾天使幼女で魔王学院生活を過ごす件。

白咲焰夜

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〜第1章 学院生活〜

第12話 〜豪華な食事の後は……?〜

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 母さんから、夕食の準備ができたと言っていたので私とルーガスとアルベルトは居間に移動をした。
 そして、食卓には私の大好物であるオムレツグラタンを始めとして、豪華な料理が並べられていた。

 こりゃ、奮発したなって私は……思った。

「さぁ~!!  召し上がれ♡」

 母さんはそう言って、大皿に入ったオムレツのグラタンを、小皿に取り分けてくれる。

 くぅ~……。この匂い、たまらない……たまらないぞ!!
 今にも……私の涎が溢れそうだ……。

「ルーガスちゃんも、アルベルトちゃんも沢山食べていいからね?!」

「「はーい!!」」

 私の性格的に……自慢するわけではないが、、
母さんの料理は正直美味い。
こればかりは神話の時代に食べたどんな料理も敵わないだろう。

 平和な世の中は、魔法を退化させはしたものの、代わりにありとあらゆる料理を進化させたのと、魔族も人間も精霊も神・天使も娯楽という名のとある物が普及して進化していた事をここ一ヶ月……身に染みていた。そのとある物は、これからやろうとしている。

「いただきます。」

 俺はスプーンでオムレツグラタンを掬って食べた。

「こ、これは……。」

 な、なんだと……!? このオムレツグラタンの中にキノコが入っていて、三種類も入っている。
 トリュフ、マッシュルーム、椎茸。
 いつもは一種類も入ってないのに!!

「お母さんね?  奮発しちゃったの♡」

 私の心中を見透かしたように、母さんが笑う。

「ほらほら、もっと召し上がれ♡」

 私はうなずき……オムレツグラタンを口に含んだ。

「くそ……。」

 美味い……。
 蕩けるような卵とチーズと牛乳とバターのクリーミーな味わいが舌に広がる。
 そしてぎゅっと凝縮された濃厚な旨味が、ガツンと胃に入ってくる。
 キノコの食感もシャッキシャキで、このままいくらでもかみ続けていたい。

 ああ、転生してよかった。ほんとによかった。

「ふふー、アリスちゃんはすぐに大きくなっちゃったけどね?  食べてるときの顔はまだまだ子供だね~♡」

 母さんがそんなことを言う。
私は夢中になって、グラタンに食らいついていた。

「ところで、お母さん、ちょっと聞きたいんだけどね……?」

 そんな前置きをして、母さんは真剣な表情を浮かべた。

「ルーガスちゃんと、アルベルトちゃんは、アリスちゃんのどこが好きなのかなぁ?」

「がはっ、がはっ……」

 私は思いっきりむせた。

「ア、アリスちゃん、大丈夫!?」

「お  おう……」

 く……私としたことが、グラタンを気管に入れてしまうとは迂闊だった。

 というか、グラタンの美味しさに夢中になるあまり、母さんたちに本当のことを話すのをすっかり忘れていたぞ。

 魔王と呼ばれた俺に冷静さを失わせるとは、母さんのグラタンは、なんという恐ろしい魔力なのだ。

 この時代で俺に対抗できるのは、ある意味では母さんなのかもしれぬな。

「それで、どこなのかなぁ……?」

 ルーガスとアルベルトは即答で答えた。

「「優しいところ……かなぁ~?」」

 淡々と言葉が発せられた瞬間……
母さんはぐっと拳を握った。

「そうっ!!  そうなのよっ! アリスちゃんって本っ当に優しいのっ! 
だってね、だってね!!  アリスちゃん……
本当は1人で、ラ=グーアに来ようとしてたんだけど……お母さん達が寂しいっていうのを知って、
一緒に連れてきてくれたのよ!!」

 ふむ?  なるほどな。これが親バカというものか。
体験するのは初めてのことだが、なかなかに気恥ずかしいことだな。

「「親孝行だね~?」」

「そうでしょ?? そうでしょ??  ルーガスちゃんもアルベルトちゃんもわかってるわ!!  さすが、アリスちゃんが選んだだけのことはあるわね」

 よし。今だ。軽く……訂正しておこう。

「あのな??  母さん」

「アリスちゃんは、キノコのグラタンおかわりいる?」

「なにっ? まだあるのか……?!  もらおうか。」

 母さんがよそってくれたグラタンに……。
俺は夢中になって食らいつく。

「それでそれで……。
アリスちゃんとルーガスちゃんとアルベルトちゃんの馴れ初めって、どうなの?」

「「馴れ初め……?」」

「どんな風に出会ったの? 
どっちから声をかけた?」

「……声をかけてきたのは、アリスや。」

「私も……声をかけてくれて
幼なじみとして絡んでくれた。」

「もぅ~!!  さすが、アリスちゃん!!
女の子に自分から声をかけるなんて、
この女たらしーっ!」

 母さんがひゅーひゅーと口笛を吹いてくる。
その後に、父さんもしてくる。
……いったい、なんだというのだ。恥ずかしい……。

「それで? アリスちゃんはなんて声をかけてきたの?」

 俺の言葉を思い出しているのか、
ルーガスとアルベルトは視線を上にやって考える。

「お互い苦労するな……だったかな?」

「お前は、常に一人ぼっちだな?
大丈夫だ。これからは私がお前の隣に居よう?
だった気がする」

「きゃあぁぁぁぁぁ、格っ好いい~!! 
アリスちゃん、もうなにそれ!!!!
そんなこと言われたら……そんなこと言われたらぁぁ~ん。女の子は一発で落ちちゃうんだよぉー!!」

 ……なにが格好いいのか全然わからない。
だって、昔の私はこんな感じだったからだ。
今、親バカと化している母さんになにを言っても無駄だろうから、もう少し様子を見よう。
 
 なにせ、まだグラタンも残っている。熱いうちに食べなければ。

「それで? ルーガスちゃんもアルベルトちゃんもなんて答えたの?」

「そうやな~って」

「……いいの? って、」


「もぉぉぉー!!  それは、恋の展開だわ!!」

 母さんはうっとりとした表情で……
自分の世界に入ったまま、まるで出てくる気配がない。

「じゃあ……じゃあ!!
あのね……あのね!!
その、3人は、もう……キスした?」

 よし。この質問をきっかけにして、
本当のことを説明できそうだな。
さすがにキスをしていなくては
恋人同士というのさえ疑わしい。

「「してないなぁ~?」」

「ええぇぇぇぇぇぇ!?  もしかして、結婚までとっておくなんて、ロマンチックだわぁぁぁー!!」

 ……ちぃ、そう来たか。
どうする。考えろ……??

「でも、どうしようかしら? 
アリスちゃんはまだ一ヶ月なのよ。
結婚できる年になるまで、
まだまだ時間がかかりそうだわ!!」

「「一ヶ月……!?」」

「そうなのよ、びっくりするでしょ? 
アリスちゃんってすっごく賢くて、すぐに喋れたし、熾天使の力も使えたし、時空間と言う根源でこんなに大きくなっちゃったのよ!?  凄くない!?」

 ルーガスとアルベルトがじっと私の方を見てきていた。

 ……いくら魔族と言えども、一ヶ月で魔法を使えるようになるというのは、そうそうあることではない。
 つまり、私が転生したという裏づけになる。

 まぁ……だからといって、すぐに魔王だと信じられるわけではないだろうがな。
 魔王以外が転生の魔法を使ったとしても、なんの不思議もない。

「って……え?  あれ?  
もしかして、ルーガスちゃんとアルベルトちゃんって、年の差を気にするタイプ……?」

 母さんは……
まったく見当違いのことを考えている。

「気にしないです。」
「気にしないで?」

「そう!! そうよねぇ!!  
年下の旦那 兼 嫁様も、いいものよねぇ~!!
アリスちゃんって、こんなに可愛いしっ」

 2人がまた私の方を向く。

「可愛い……??」

「そんな疑問を持ってきた様な目で見るな。」

 ……そのやりとりに、
母さんは両拳を上下に振った。

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。
ねえ、あなた!!  聞いた??  今の、聞いたっ!? 
『可愛い?』『そんな様な目で見るな』ですって!! 
やだもう……なに、熟年夫婦?
熟年夫婦なのぉぉぉ!?」

 更に……興奮する母さん。父さんは酒を飲みながら、感慨深そうに一人うんうんとうなずき、遠くを眺めて黄昏ている。

 とりあえず、そのうち……落ちつくだろうと思っていたが、母さんは終始テンション高めで、まくしたてるように喋ってくるので、2人のことを訂正する隙はまったくない。

 あれよあれよという間に夕食が終わり、
そのまま賑やかに喋り続けている間に夜もすっかり遅くなってしまった。

 途中まで2人を送るということで、私たちは外に出た。

 先に、ルーガスが近かったので家まで送って次に……アルベルトを送っている。

「ほら手、出しな」

 アルベルトは「ん!」と言いながら素直に私の手をつかんだ。

「私の根源で家まで送ってやる」

「私の家、知らないのにか?」

「家の場所を思い浮かべてくれ。
思念を読み取って送る」

「そんな事ができる……のか!?」

「朝飯前だ。」

 アルベルトはじっと私を見る。

「凄い……凄いぞ……これは!!」

 アルベルトが思い浮かべた家の場所が、
つないだ手を通して私の頭に伝わってくる。

「今日は……悪かったな」

 アルベルトは首を横に振る。

「中々に……楽しかったぞ?」

「なら、いいんだが……
父さんと母さんが落ちついてから、
親友だって訂正しとく」

「親友……?」

「ああ、この時代だと友達と言う言葉よりも上の事を指す。」

 すると、アルベルトは自分を指さした。

「親友か?」

「違ったか?? 
ではなんと言うんだ、こういう関係のことを?」

 アルベルトは首を横に振り、それから、さっきの最高に笑った時のと同じぐらいにっこりと笑った。

「嬉しいぞ!!」

「そうか。」

「そうや!!」

 根源を使う為……手に魔力を込める。

「じゃ、また学校でな」

「またな!!」

 アルベルトの体が消えていき、彼女は自分の家へと移動した。

 そして、自分も自分の部屋へと移動し……
何かを頭に着けて……ベッドに横になる。

 このオーマース・クレイドルで発展した。
魔族の息抜きとして出されていたVRゴーグルを付けて……"仮想異世界空間"に行く事となったのだった。
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