鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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 鈴は本棚からアルバムを見付ける。
「それは里桜に確認してからだな」
「やっぱり?」
 きっと里桜は嫌がるかも知れない。少し残念そうに肩を竦めて見せた。

 翌日は快晴で、日差しが眼に痛いぐらいだった。
 小早川家の墓は先祖代々が眠る埼玉の安行に在った。小高い丘に見晴らしの良い町並み。線香の匂いが辺りを包んで、薰が先頭になって花を活けたり墓石に手を添えている。四坪半の大きな場所を所有している場所へ、鈴は暑さにぐったりとしながらぼ~っとしていた。
「また先に誰か来たのかな」
 いつも先回りして訪れる誰かが、白い百合の花をそっと墓石の傍らに置いていた。どうやら鈴が生まれる前かららしく、薰に訊くと亡くなった陸の上の兄【鈴】が亡くなった後かららしい。実の父親ではないかという話しらしいが、真実は定かではない。
「ちょっと飲み物買ってくるよ」
 鈴が手を振ってその場を離れる。社務所まで行けば、近くに自販機が在ったと思い、脚を向けると機内で出逢った男を見掛けた。ちょうど駐車場から歩いて来るところだ。すれ違う参拝客が、そのモデル並みの長身に甘い顔立ちの男へ視線を奪われている。
 ーーーあれは。
 ジン・イムホテップという名の男だ。偶然にしては違和感があったが、その手には白い菊の花束が在った。ジンが鈴に気付いて微笑む。胸がドクンと鳴った。
「こんにちは。誰かのお参りに?」
「やあ。また会ったね」
 ジンが鈴の姿を捉え、眼を細めた。鈴は花束を見て訊く。
「…大切な人のね。君は帰り?」
「ううん。喉が渇いたから飲み物を買いに」
「……、ジン!?」
 背後で里桜が驚愕の声を上げる。鈴の後を追ってきたらしい。里桜が亡霊でも見るような眼で見詰めている。
「里桜か、久しいな。もう四十年は経ったのか」
「里桜伯父さん? え? ジンさんと知り合い? って四十年??」
 鈴の言葉に里桜が双眸を見開く。
「鈴、その男を知っているのか?」
「え? 飛行機で隣の席だったんだけど…今四十年って云わなかった?」
 鈴が首を傾げている。里桜はそれには返答せず、険しい顔で鈴を背に庇いジンを睨む。
「本当にあんたバケもんだな、まるでドラキュラみたいじゃないか。ちっとも変わらない」
 里桜は警戒して鈴の手を握る。
「ドラキュラじゃないけど、まあ良い。墓参りは終わったのか?」
「あんたに関係ないだろう! 何しに来たんだっ」
「お、伯父さん?」
 いつも礼儀正しい里桜にしては珍しい。親の敵のような殺気を、全身で表わして威嚇している。
「相変わらず猫みたいなやつだなお前は」
「煩い、なんであんたが此処に居るんだよ!?」
 ジンは里桜の背後に居る鈴へ視線を向けた。
「鈴、俺はお前を迎えに来た」
「「っ!?」」
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