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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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 明日の朝の文化祭は、いつもより早めに家を出ないといけないのだが、これを最後にと疾風の話しに乗った。鈴は、心配だからとついて来た里桜と二人で隼人の居る病院の裏口に、疾風と落ち合った。時間は日付が変わって土曜日。
 体調不良で救急患者が数名、緊急外来に居た。付き添いの親戚を装って、三人がうまく病院内に入った。
「ナースステーションに気を付けて、病室に行こう」
「先生、あのあずさって人に見つからない?」
 里桜が小声で訊く。
「此処は完全看護だから夜中は隼人だけだ」
 ーーー今は隼人さんだけ……。
 鈴は薄暗い廊下を見詰めた。里桜と疾風に時間になったら落ち合う場所を確認して、そっと病室の扉を開く。隼人はベッド脇のライトを点けて、腰の後ろに枕をあてて座っている。その姿勢でアルバムを見ていた。隼人が顔を上げ、双眸を見開く。
「鈴君」
 余所余所しい声に、鈴は目頭が熱くなった。
 ーーー生きていてくれるだけで、良いんだ。贅沢を云ってはダメだ。
 鈴は覚悟を決めて、笑顔を顔に張り付けた。罪悪感に、隼人が苦しまない様に。
 鈴はベッドに、隼人の傍に歩み寄った。
「なんだか久しぶりだね」
「うん。ごめんなさい…文化祭があってその準備で…」
 あずさに来るなと云われたし、これから始まる二人の生活に溝を作ってはいけない。
「文化祭か。そういえば明日退院するから、その序でに行かせて貰うよ」
 鈴は嬉しくて、つい本当? と聞いてしまった。隼人に会うのはこれで最後にしようと思ったのに……。心が喜んでいる。
「里桜君から文化祭の入場招待状を貰ったんだ」
「そうなんだ?」
 刹那、鈴と隼人は見詰め合った。口内が渇く。ゴキュッと唾を呑み込んだ。
「あの…」
 鈴が唇を開いた。そして。
「あの、ね? 僕隼人さんに謝らないといけないんだ」
 隼人が双眸を見開く。
「どうしたんだい? もしかして私の何か、そうだな大事な宝物を壊しちゃった?」
 おどけて云う隼人の頬に、鈴は背を伸ばしてキスをする。
「り、ん君?」
 隼人は驚いて鈴を見詰めた。
「僕ね? 前に隼人さんに大好きって告白したんだ。嫌われるの覚悟で…。そしたら隼人さん優しいから僕に合わせてくれて…ごめんなさい、きっと記憶を失ったのは僕のせいだよね。僕……ね」
 ーーー嘘を吐いてごめんんさい。
「ま、待ってくれ! 鈴君それは」
「僕は」
 隼人の制止を止める。
「僕は、隼人さんの前から居なくなる」
「…なんだって?」
「アメリカへ行こうと思う。鈴音さん…僕の本当のお母さんの所に」
 隼人はドクンドクンと不快に鳴る心臓に手を当てた。
 鈴は一歩下がる。
「待っ」
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