鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

文字の大きさ
65 / 144

鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

しおりを挟む
「隼人さんは帰ったよ。お父さんに呼ばれて」
 剛は服に付いた埃や小石をパタパタと払い落とす。
「あ、そう。そういや鈴、直ぐに宿泊施設に戻るぞ」
「ちょっと、鈴ちゃんはこれから私とデートなの。邪魔しないでよ」
「は?」
 剛は美代を一瞥し、鈴を上から下まで眺める。
「却下だ」
「どうしてよ?」
「あんたは部外者だから知らないけど、今鳳凰学園が来てんだよ。こんな格好の鈴を見付けたら、鈴が危ないんだからな? そうでなくても、去年鈴は俺達がガードを固めたから無事だったけど、鈴に似た生徒会のメンバーがひとり、生贄になって大変だったんだ」
 美代は膨れて見上げる。まるで漫画のような話の内容に訝しんだ。
「…そんなにやばい訳?」
「ヤバイってもんじゃない。去年は鳳凰からの被害が強くて、うちの学校の生徒のせいにして万引きやらかすわ、暴走族紛いが校庭に入って来るわ、強姦、カツアゲが日常茶飯事。鈴は俺や里桜が守って、俺の組のモンにも手伝わせたが、そりゃあ大変なもんだった。疾風っちゅう教師が生徒会の顧問に着いてから、何とか落ち着いたがな」
「…そんなに酷いの? やだ鈴ちゃんごめんね、私鈴ちゃんの服持って来るわ」
 顔を引き攣らせた美代が謝り、それでもしっかりデジカメで鈴を撮る。
「う、ん…」
 鈴は引き返した美代を見送って、剛の視線に気付いた。
「…なに?」
「いや~。お前やっぱ可愛いな、俺も写真撮っても」
「却下」
 けち~と剛は膨れた。
「楽しそうだな、君達」
 背後から声を掛けられて、鈴と剛が振り返る。学ランを来た男子が、数名こちらにやって来た。襟元には宝生学園のエンブレムが、日差しに反射して光っている。
「…誰だ?」
 剛が鈴を庇って、前に出る。
「とても綺麗なお嬢さんを見掛けてね」
 鈴と剛が眼を合わせる。
「お名前は?」
 鈴はジッと見詰められ、紳士的な物腰の生徒に微笑む。
「天音鈴です」
「鈴、馬鹿正直に名前云うなよ」
「だって」
「天音鈴ちゃんっていうのか。可愛いね? 処で…」
 云った刹那、男子生徒が剛を見る。
「君、あの高橋組の息子だろう。見た事あるな。それに父から話を聞いている」
「…父?」
 剛は首を傾げた。合った覚えが無い。
「会長、そろそろ」
 男子生徒の傍で、もうひとりの生徒が、携帯の時間を見る。
「そうだな。鈴ちゃんはこちらの土地の?」
「いいえ、僕合宿で来てるので。王欄の生徒です」
「それは奇遇です、兄弟校ですね。私はこれで失礼しますが、またいつかお会い出来るでしょう。お元気で」
「…はい」
「けっ。何が『お会い出来るでしょう』だ? うえ~キモいわ~」
 嫌そうに剛が云う。
「高橋! 宮根がさがし…て」
 疾風が宿泊施設が在る方から歩いて来て、鈴の姿に固まっていた。
「おまえらな~~~~っ! なんじゃその格好は!? 鈴! 高橋、またお前かっ」
「えっ俺、悪くないからな!」
「うわ~ん、ごめんなさい! 先生っ! 兄ちゃんには内緒にしててっ!」
 ーーーなんで僕だってバレてるの!?
「バレたら、里桜は怒るだろうよ。それより…隼人が帰った後で心底良かったな…」
 疾風の盛大な溜息が零れた。 

 夕闇に小早川医院の裏手に在る自宅玄関から、薫が顔を出して女性を招き入れた。
「昨日はごめんなさいね? せっかく来て下さったのに」
「いえ。突然来た私も不躾でした。あの、隼人さんは…」
「さっき帰ったばかりなの。あがって?」
 女性はショートの髪を手櫛で直して、スリッパに履き替えリビングへ案内された。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...