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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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勝手に椅子に座った鈴音に、鈴は呆れて隼人を見るが、諦めて奥側に座り隼人が隣に座った。鈴はジッと、鈴音の顔を見詰めた。
---不思議だ。なんだか兄ちゃんを見ている感じがする。
顔は鈴に似ているのに、内面的が掴みどころが無く不安になる。偶に里桜が見せる雰囲気に似ていた。
「逢いたいなら、合わせてあげるわよ?」
鈴音は紅い唇を釣り上げた。
「合わせて下さるんですか!?」
隼人が訊きながら、テーブルの下で鈴の左手を握る。
「私の条件と引き換えならね」
鈴音が鞄から名刺を取り出して、黙ったままの鈴の前に差し出した。
『赤羽出版社・ルナティ 滝沢鈴音』
鈴はじっと名刺を見詰めた。鈴音がチラッと鈴を一瞥する。
「鈴?」
隼人が鈴の肩を叩く。
ーーーこの人は何を考えている? 何故此処に来た? 偶然? 違う。この人は知っていたんだ。多分探偵か何かを雇って見張っていた? やりかねない。母ちゃんや兄ちゃんに云わずに此処まで来たけど…。
「…大丈夫」
鈴は微笑んで、鈴音を見た。この人は自分だけが好きなんだ。この人にとって僕は要らない子供…。
「……条件って何ですか?」
鈴音はクスリと笑う。
「私の手掛ける、雑誌の専属モデルをしてほしいの。少しの間で良いわ。学校にはばれないように、女の子の姿で。きっと可愛いわよ?」
隼人も鈴も驚愕した。
「も…モデル!?」
突拍子もない事を云われて、鈴が双眸を見開く。
「ちょっと待って下さい? 女の子の姿で?」
隼人が鈴の横顔を見やる。
「出来なければ、話しは無かった事にするわ」
「…っ」
「ちょっと、あなたは鈴の母親だろう!」
「今は薫が母親よ。これは私のビジネス。どう? 鈴はやるの?」
鈴は目許を染めて鈴音を睨んだ。
「……やります」
「鈴…」
「上条貴博が、あなたの思っていた人間で無く、落胆する可能性があっても?」
鈴は唇を噛んだ。どうしてそんな事云うのだろう。何を考えているのか解らない。
「やります」
『そうと決まれば話しは早いわ。日程は此方から連絡するから、メアド交換しましょう』
鈴は鈴音の云われた通り、携帯のアドレスを交換した。
『撮影の日に、上条貴博を呼ぶわ』
鈴は胸に手を当てて、ざわめく鼓動を鎮めようと深呼吸する。
「り……ん。り…鈴?」
隼人に呼ばれて、鈴は顔を上げた。鈴音と別れて隼人に連れて来られたのは、六本木に在るホテル。エントランスは広く、ドアマンが笑顔でお辞儀をし、家族連れが楽しそうに広間で寛いでいる。
「鈴、大丈夫?」
カードキーをカウンターで受け取った隼人に、鈴は微笑んだ。
「大丈夫。でも此処高そうなホテルだね」
重くなった空気を変えようと、鈴は連れて来られたホテルのロビーを見渡す。
「君は気にしなくて良い。上に行こうか」
四基在るエレベーターのうち、一基に乗り込んだ鈴達は最上階の部屋へ向かった。隼人は鈴の手を握り締めている。
---不思議だ。なんだか兄ちゃんを見ている感じがする。
顔は鈴に似ているのに、内面的が掴みどころが無く不安になる。偶に里桜が見せる雰囲気に似ていた。
「逢いたいなら、合わせてあげるわよ?」
鈴音は紅い唇を釣り上げた。
「合わせて下さるんですか!?」
隼人が訊きながら、テーブルの下で鈴の左手を握る。
「私の条件と引き換えならね」
鈴音が鞄から名刺を取り出して、黙ったままの鈴の前に差し出した。
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鈴はじっと名刺を見詰めた。鈴音がチラッと鈴を一瞥する。
「鈴?」
隼人が鈴の肩を叩く。
ーーーこの人は何を考えている? 何故此処に来た? 偶然? 違う。この人は知っていたんだ。多分探偵か何かを雇って見張っていた? やりかねない。母ちゃんや兄ちゃんに云わずに此処まで来たけど…。
「…大丈夫」
鈴は微笑んで、鈴音を見た。この人は自分だけが好きなんだ。この人にとって僕は要らない子供…。
「……条件って何ですか?」
鈴音はクスリと笑う。
「私の手掛ける、雑誌の専属モデルをしてほしいの。少しの間で良いわ。学校にはばれないように、女の子の姿で。きっと可愛いわよ?」
隼人も鈴も驚愕した。
「も…モデル!?」
突拍子もない事を云われて、鈴が双眸を見開く。
「ちょっと待って下さい? 女の子の姿で?」
隼人が鈴の横顔を見やる。
「出来なければ、話しは無かった事にするわ」
「…っ」
「ちょっと、あなたは鈴の母親だろう!」
「今は薫が母親よ。これは私のビジネス。どう? 鈴はやるの?」
鈴は目許を染めて鈴音を睨んだ。
「……やります」
「鈴…」
「上条貴博が、あなたの思っていた人間で無く、落胆する可能性があっても?」
鈴は唇を噛んだ。どうしてそんな事云うのだろう。何を考えているのか解らない。
「やります」
『そうと決まれば話しは早いわ。日程は此方から連絡するから、メアド交換しましょう』
鈴は鈴音の云われた通り、携帯のアドレスを交換した。
『撮影の日に、上条貴博を呼ぶわ』
鈴は胸に手を当てて、ざわめく鼓動を鎮めようと深呼吸する。
「り……ん。り…鈴?」
隼人に呼ばれて、鈴は顔を上げた。鈴音と別れて隼人に連れて来られたのは、六本木に在るホテル。エントランスは広く、ドアマンが笑顔でお辞儀をし、家族連れが楽しそうに広間で寛いでいる。
「鈴、大丈夫?」
カードキーをカウンターで受け取った隼人に、鈴は微笑んだ。
「大丈夫。でも此処高そうなホテルだね」
重くなった空気を変えようと、鈴は連れて来られたホテルのロビーを見渡す。
「君は気にしなくて良い。上に行こうか」
四基在るエレベーターのうち、一基に乗り込んだ鈴達は最上階の部屋へ向かった。隼人は鈴の手を握り締めている。
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